2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520569
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
彦坂 佳宣 立命館大学, 文学部, 教授 (00111237)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | 『方言文法全国地図』 / 条件法 / 順接・逆接表現 / 言語地理学的研究 / 方言文献学的研究 / 対称代名詞 / 格助詞ノ・ガ |
Research Abstract |
平成23年度、以下の研究と2つの論文を作成、また考察の継続をした。1.課題は『方言文法全国地図』の主要項目について、その言語地理学的な歴史解釈をすること、あわせてそれを国語史の知見、また直接の地方方言文献の幾つかと対照させ、総合的に考察することである。2.この方法で、従来からの研究である条件法の各種につき、全体を総合し、かつ近世期にはその今日的な模様がほぼ成っていたと推測されること、その上で各地の模様からして東西差のあること、西日本の新形式の伝播は速やかであるのに対し、東日本では緩慢であり江戸の都市化のあとでの放射が強くなってきていることを考察した。この成果は「条件表現からみた近世期日本語の景観-『方言文法全国地図』と国語史・近世方言文献の対照から-」として共著の形で出版された―金澤・矢島編『近世語研究のパースヘクティブ』笠間書院、2011年5月。この共著は2010年春期の日本語学会のシンポジウムのうち「外から/外への近世語研究」の口頭発表の文章化であるが、彦坂のものは、個別に誘われ新たな論として刊行に際して加わったものである。3.同じく、敬語事象研究の一環として対称代名詞について考察した。『方言文法全国地図』の地図「あなたの傘」項の解釈は昨年度末に成果を論文として出したが、つづいて昭和27年に国立国語研究所がおこなった同類の全国調査の考察を行ってきた。その成果は平成24年度の初夏までに論文化する予定である。4.他に、格助詞ノ・ガの分布と歴史についても考察し、24年度の初夏には論文が出る。尊敬語述部についても考察したが、この論文化は24年度末となろう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
繰り返しになるが、研究課題は「『方言文法全国地図』と文献との対照による言語地理学的、文献学的な考察」である。このうち『方言文法全国地図』の主要な事項を取り上げて研究を続けている。 達成度は5割程度と考えている-『方言文法全国地図』は多くの文法事象地図があるが、研究対象はその中で分布が広く、主要な言語項目をとりあげている。それは、条件表現、助詞のうちの主格・連体格・準体助詞、待遇表現、断定表現、否定表現、意志・推量表現、アスペクトなどである。このうち今回4年間の予定の考察では、上のうち末尾二分野を除く範囲が直接の対象と考えている。この中で既に条件表現の総合化、待遇表現のうち、対称代名詞、待遇と主格と連体格の用法にまたがる格助詞ノ・ガの用法などを進めてきた。この範囲が5割という数値である。 なお、その背景として、都合数回の科研費の継続的な成果の上に上記事項の考察を進めていること、また昨年来からこれらを束ねた著書を用意しはじめていることなども、進度を加速化するのに力となっている。ただし、上に1項目として記した各種表現にも複数の地図があり、それら延べの地図数での割合は4割程度となろう。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方法は今までどおりであり、上の述べたので繰り返さない。課題としては、次の2つを予定している。 1.まず直近の成果とそれに続く課題で今年度に具体的な論文となったものは条件法を鳥瞰したもの1つであったが、考察をほぼ終えて近々出るものに格助詞ノ・ガについて近世期中国地方の方言文献での分析がある。関連して、続いて『方言文法全国地図』との対比的な研究を進める。同じく昨年度に出した対称代名詞の論につづく、昭和27年度のそれも論文を執筆中であり、その次には両者の経年変化の論を構想している。続いて、新たに断定表現・否定表現・その他の研究を予定している。 2.他には、方言文献の発掘を今までどおりに続けること、当該事項の国語史での知見を深めること、また統計的手法の必要も感じられるので、この方面の勉強を始めることがある。 以上のように1.の具体的課題を進めると同時に、その背景的な資料の発掘や国語史・方言史の知見とその分析法の開発を進めていく。これらを総合して方言をふくめた日本語の史的な面を考察するのが目標である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.書籍などの購入-国語史研究・方言研究、また言語学的な方法論、関連分野として日本全体の地勢的な研究のもの、統計的な手法についてのものなどを購入し、活用したい。特に、日本語の成立は、地域的特性と関わる面が多く、統計的な面からの分析とあわせ、こうした関連分野と研究手法への目配りを進めていきたい。2.資料調査・研究会での知見の収集-地方の図書館などに眠っている方言文献を発掘すること、また本課題には国語史と方言、現代語研究など多様な面に関わる事柄がおおいので、積極的に研究会などにも参加し、研究の視点や方法論の知見を得て研究に生かしたい。例えば、国立国語研究所で行われている庄内・岡崎の言語調査などをよく観察して、その方法と知見を研究にも生かしていきたい。3.その他のツールなどの購入-今までの研究による地図作成のためのIT機器、グラフィック・ソフトなどは一応そろっているが、バージョンアップその他の理由で幾らか購入を考えている。
|
Research Products
(1 results)