2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520569
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
彦坂 佳宣 立命館大学, 文学部, 教授 (00111237)
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Keywords | 『方言文法全国地図』 / 方言文献研究 / 言語地理学的研究 / 格助詞ノとガ / 尊敬語 / 対称代名詞 |
Research Abstract |
本年は、次のような実績があった。関連して次の予定についても記す。 1.新たに見出した近世中頃の石見地方の説教集「石見方言茶話」について、(1)尊敬語補助動詞類の考察、(2)格助詞ノ・ガの敬語的また文法的な考察をした。ともに今までの地域的な空白を補う地点についての資料による考察である。この地域の方言をさぐるものは「田植草紙」があるが、伝承歌謡であり、書写された時期も江戸時代後半で、実際に行われた時期とずれがあった。これに対して「石見方言茶話」は成立年代も明確であり、説教としての口語的な様相もあって、有用な資料といえる。時期的に先の「田植草紙」との比較も慎重に行えば、史的変化を推定できるものでもある。そして、上記(1)については論文とした。今後は、(2)について、『方言文法全国地図』を、今回まとめた「石見方言茶話」の資料も加え、全国視野で考察する予定である。 2.合わせて、『方言文法全国地図』の(3)対称代名詞の考察、(4)尊敬語助動詞類の考察をし、論文として前者は公表済み、後者は原稿が成り、近々投稿予定である。この中には、上記「石見方言茶話」や肥後の説教集のなど、新資料による考察を含む。 また、関連資料に、昭和27年の対称代名詞・尊敬語の調査が国立国語研究所にあり、昭和50年代の『方言文法全国地図』の同類調査との比較も有用である。上記(3)対称代名詞については昭和27年のものと『方言文法全国地図』のものの両者の考察は済み、その比較が残っている。(4)尊敬語助動詞類については、『方言文法全国地図』側の考察が上記のように終わり、投稿を考えている。その後、昭和27年の調査の考察に掛かり、両者を比較する心づもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度予定では、格助詞ノとガ、アスペクトなども考察の予定であったが、 ・ノとガについては、新資料の整理はしたが、全国的な考察は半ばであること。 ・アスペクトは手つかずの状態であること。 がある。 ただ、遅れた要因は、今までの論文をまとめ著書にする作業を進めていることもある。 この点は7割方は進んでいて、内容は、この課題で進めてきた、条件表現、意志・推量の助動詞、格助詞ノとガの準体助詞的用法、敬語事象などを入れ込む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.今まで進めてきた、敬語の諸問題を、昭和27年度の調査のまとめと『方言文法地図」のそれとの比較対照をして、戦後の変化を鳥瞰すること、格助詞ノとガの全国的な視野での考察をすること、新たに活用体系の問題を各活用型について全国的な模様とその変化について考察する。 2.余力があればアスペクトの問題にも取り組む。 3.また、以上の内容をふくむ著書を完成させたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.書籍などの購入-国語史研究・方言研究、また言語研究手法などについての書籍を購入し、研究上の視野をひろげたい。統計的な手法も必要になってきたと感じている。 2.資料調査、資料の収集-従来やってきた方言文献調査とその考察を進めること。方言文字化資料も活用できる体制となってきたのでこの方面にも目配りをしたい。 3.研究会での知見の収集-国立国語研究所などを中心に、研究会の開催が多くなってき た。特に『方言文法全国地図』の解釈に手薄であった、沖縄地方の問題、東北や土佐地 方の特性などについての知見を深めるような方向を探る。 3.その他のツールなどの購入-今までの資金によりより、地図作成のためのIT機器、グラフィック・ソフトなどはよく揃ってきたが、バージョンアップその他の理由で幾らか購入を考えている。
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