2011 Fiscal Year Research-status Report
ミニマリスト・プログラムの自然科学としての特質の解明:哲学的基礎と方法論の分析
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23520573
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上田 雅信 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (30133797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 耕司 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (00173427)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 科学認識論 / 言語科学 / アメリカ構造言語学 / 言語の起源・進化 / 生物言語学 |
Research Abstract |
研究代表者は、生成文法の概念的基盤およびその形成過程を明らかにするための方法と概念的枠組を明確にした。まず、17世紀科学革命における近代科学の形成過程を詳細に分析した科学史の研究に基づいて、近代科学の形成過程と20世紀半ばの認知革命における言語科学(生成文法)の形成過程とを比較し、その間に概念的相同性があることを確認した。次に、アメリカ構造言語学が、近代科学の形成過程において実践的で数学的な技術としての自然研究が持っていた位置づけと役割に対応する位置づけと役割を言語科学の形成において持つことを明らかにした。さらに、進化的社会的科学認識論の枠組を用いることで言語科学の形成におけるアメリカ構造言語学の位置と特質を体系的に説明できることを示した。現在は引き続き、この科学史と進化的社会的科学認識論を組み合わせた方法でアメリカ構造言語学から生成文法への発展の分析を進めつつある。 研究分担者は、生成文法に基づく近年の生物言語学・進化言語学の展開に鑑み、言語の起源・進化、特に回帰的統語演算操作Mergeの起源・進化に関するこれまでの自説を、認知考古学的な知見を活用してさらに強固なものとした。併せて、このような研究を、進化生物学自体の、現代総合説から拡大総合説へというパラダイムシフトの中に位置づけて、その学問史的意義を明確にした。また2012年3月には『第9回言語進化の国際会議』(EVOLANG IX)が京都で開催され、非常に盛会であったが、その運営にも本プロジェクトの分担金の一部が有効に活用されており、実質的に本プロジェクトもこの学会の成功に貢献したことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期の生成文法からミニマリスト・プログラムにいたる理論の発展の哲学的(概念的)基盤を解明するための概念的枠組及び方法論が明確になり、それを用いた、哲学的、生物学的基盤の分析が着実に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
科学哲学、科学史、認知行動学、行動生態学、進化生物学など複数の分野に関わるので、これらの分野の研究の現状を知り、その研究成果を取り入れる努力を続ける。代表者と分担者は随時意見交換を重ね、双方の研究成果を参照しながら、共同研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述のような多分野の最新研究動向を把握するため、物品費の多くを新規図書購入に充てる他、国内外での学会での成果発表や各分野の著名研究者を招いての講演会を計画している。特に、本年11月に開催される日本英語学会30周年記念大会における特別ワークショップ Current and Future Issues in Biolinguisticsでは、代表者・分担者がともに登壇することが決まっている。23年度未使用額もこれらの活動のために有効に使用する。
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Research Products
(7 results)