2012 Fiscal Year Research-status Report
関連性理論に基づいた日・英語のイディオム解釈に関する認知的研究
Project/Area Number |
23520577
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
井門 亮 群馬大学, 社会情報学部, 准教授 (90334086)
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Keywords | 関連性 / アドホック概念 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日・英語のイディオム解釈の仕組みについて、関連性理論の観点から認知的分析を試みることにある。そして、字義通りの意味から離れたイディオムの意味が、聞き手によっていかに解釈されるのか、関連性理論における「アドホック概念形成」の枠組みを援用して検討する予定である。この研究目的を達成するため、研究実施計画に沿って平成24年度は、イディオムの解釈過程と、アドホック概念との関係についての研究を行い、そこから得られた研究成果の公表を進めていく計画であった。 イディオム解釈の際には、関連性の原理に沿ったアドホック概念形成という推論作業が、「語レベル」だけで適用されるのではなく、「句レベル」でも適用されるということを平成23年度の研究で明らかにしてきたが、平成24年度もこの点について引き続き分析を行い、日本語のイディオムの用例を中心に、収集及び分類するとともに、イディオムの解釈について、関連性理論で提案されているアドホック概念形成の「概念の緩め」という推論作業がどのようにかかわっているのか、日・英語のイディオムについて具体的に考察を行った。そしてその考察結果に基づき、アドホック概念形成に基づくイディオム解釈に関する新たな認知的モデルの構築を試み、その成果を研究論文としてまとめ、公表するための下準備を行った。また本研究でのイディオム解釈に重きを置いた語用論的分析と、従来の意味論・統語論的なイディオム分析との融合の可能性を探った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には、(1)イディオムの解釈過程とアドホック概念との関係についての研究、及び(2)その分析から得られた研究成果の公表を計画していた。 (1)については、イディオムの解釈について、関連性理論で提案されているアドホック概念形成の「概念の緩め」という推論作業がどのようにかかわっているのか、日・英語のイディオムについて具体的に考察を行った。しかし、当初予定していた先行研究における「分解可能性」「凍結性」といった意味論・統語論的概念を融合させて、イディオム解釈に関する新たな認知的モデルを構築するというところにまでは至っていない。 (2)については、平成23年度にある程度研究成果がまとまったため、平成24年度に発表を予定していた研究論文を2本既に公表している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、研究計画に沿って、日・英語イディオム解釈過程の対照研究を中心に分析を進めていきたいと考えている。それらの共通点や差異について、日本語と英語イディオムの言語的な特性や、話者の思考や文脈などが、いかにイディオムの解釈過程に影響を与えているか、関連性理論に基づいて認知的な観点から考察する予定である。 さらに、平成24年度に十分に実施できなかった、アドホック概念形成に基づく語用論的解釈過程に、先行研究における「分解可能性」「凍結性」といった意味論・統語論的概念を融合させて、イディオム解釈に関する新たな認知的モデルを構築するという点についても考察を行いたいと考えている。そして、これらの分析から得られた研究成果を論文にまとめ、国内学会の年次大会において研究成果を報告する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の配分額を計画的に使用した結果、残額が生じたが、平成25年度分と合わせて執行する予定である。 平成25年度の研究費については、交付申請書に記載した通り、図書費と旅費を中心に使用する予定である。 図書については、関連性理論を中心とした語用論関係の書籍や、イディオム関係の資料を充実させて、各分野における最新の研究動向、及び先行研究を調査確認するとともに、分析対象となる用例を収集するために活用する。さらに語用論だけではなく、多角的な視点から分析を行うため、本研究の隣接分野である意味論・統語論関係の書籍も充実させていく予定である。 旅費については、本研究に関連する学会の年次大会に出席し研究発表を行ない、国内・国外の研究者と意見交換を行なうとともに、これらの学会において研究動向の調査をする予定である。
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