2012 Fiscal Year Research-status Report
ルーン碑文を利用した、中世ノルウェー語の英語への影響研究
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23520580
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
伊藤 盡 信州大学, 人文学部, 准教授 (80338011)
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Keywords | ノルウェー / デンマーク / カンブリア(英国) |
Research Abstract |
当該年度の最も重要な成果は3つあった。第1に、デンマークのオーフス大学で行われた第15回国際サガ学会(3年に一度開催)にて、学会発表を行い、最新の研究事情について多くの情報交換ができたことである。現在、その研究発表の内容をさらに改訂した論文を出版できるように準備している。 第2に、その学会発表の後、ベルゲン大学のバルザル博士の協力で、デンマークの中世ヴァイキング時代の遺物、ヴァイキング船の博物館による研究資料展示、および異教時代の遺跡を巡る小旅行による取材ができたことである。これにより、ノルウェー方面とは別にイングランドに渡ってきた北欧人たちの地域環境が、極めて明確に把握できた。 第3に、国際学会および国内学会の情報交換を通じて、国内外における古英語・中世北欧語言語接触の研究について多くの文献を集めることができたことである。専門書の価格が高騰している現在、この1年間の円高と学会関係者からの情報によって、これまで以上に古書情報を入手できたと同時に、高価過ぎて買えなかった文献がいくつも入手できた。 その一方で、当初の計画で会談を予定していたイギリスのヨーク大学の研究者が学会を欠席するなどして、計画していた密接な交流ができなかった研究者との交流が次年度の課題となる。それらを通じて、熊本大学の松瀬准教授および立教大学の小澤准教授らと、年末にシンポジウムを行うことも再計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国際サガ学会での研究発表が成功したことと、デンマークに於ける最新の研究動向を把握できたことは計画通りの進行である。また、次年度に計画していたオスロ大学での国際歴史言語学会の研究発表のプロポーザルが受理されたことも、計画通りに進める経緯となっている。 しかし、最も重要な学者二人が学会を欠席し、計画していた情報交換ができなかったことは、研究の進行に重要な遅れをもたらした。特に、タウンエンド博士との交流を通じて、カンブリアにおける現地取材の綿密な計画を立てる当初の目論見どおりにいかなかった。現在、ダラム大学のアシュハースト博士との連絡を通じて、再計画を立てるつもりである。 また、古英語の異綴りについての研究は、当初の計画の小竹研究員(ロンドン大学)が専門とする『Rushworth福音書』ばかりでなく、中英語の異綴りについても研究範囲を広げる必要があることが、これまでの研究から判明した。この分野については、既に中央大学の堀田准教授の先行研究があり、堀田氏との情報交換の必要性の高まりとともに、堀田氏の研究を精査する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
夏に行われる国際歴史言語学会(於オスロ大学)での研究発表では、ノルウェーのルーン碑文の音価の幅と音価の再解釈に焦点を当てた、本研究の中心課題をテーマとする。学会開催地でもあるオスロ大学のSpurkland博士は、ノルウェーのルーン碑文の現在の第一人者であり、研究発表前後に博士とのインタビューを行うことを既に計画している。博士とのインタビューを通じて、当該研究をまとめるために必要な部分を埋める。 また、年度末に計画している国内学会のシンポジウムにおいて、当該研究をまとめる形で発表する。 一つの問題点は、遅れているカンブリアの現地取材をどのように敢行するかである。秋から冬にかけて日程の調整を行うことで、取材を実現させる計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度は、当初計画していたカンブリアでの取材が行えなかった。またシンポジウムが、学会の都合で、開催できなかった。それらはすべて次年度に実施することとなったため、次年度使用額が発生した。 H25年度は、海外出張として、上記の海外現地取材と国際学会における研究発表、またその際の現地研究者への謝金の支出を計画している。また、国内学会におけるシンポジウム開催のための国内出張を計画している。これらの旅費と謝金に、繰越金と合わせた助成金が使われる予定である。
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