2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520583
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡辺 秀樹 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (30191787)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 文子 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (70213866)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | メタファー / イディオム / 動物名 / 感情表現 / 四大 / 認知言語学 / 直喩 / 構造性 |
Research Abstract |
本研究課題「英語メタファーのネットワークの研究」は共時的には英語のメタファー表現の根底にある3つの主要根源領域(A)「動物名」、(B)「四大」、(C)「身体部位名」に由来するメタファー表現の構造性を提示すること、通時的な観点からはそれらの根源領域が古英語から現代まで継続して主要なメタファー表現を生み出してきたこと、メタファー表現の系譜を明示することを目的とする。これら3種の領域において構造性と歴史性の双方に着目した研究は皆無である。この大きな複合的課題を歴史的研究者と認知言語学者の共同研究によって遂行する。 平成23年度には渡辺は英語水生動物名と爬虫類・両生類名の人間比喩義の調査を進め、水生動物名において哺乳類・鳥名と平行する類義・対義のペアの存在を確認した。爬虫類・両生類名においては構造性は見られなかった。それらの中でclam, oysterという貝名とchameleonを選び、この200年間の米語における比喩義使用の実態を明らかにした。研究成果は『言語文化共同研究プロジェクト2012』と『これからのコロケーション研究』(ひつじ書房)に掲載された。 分担者大森は英語感情名詞の研究を続行し、それぞれの感情を表す名詞がメタファー用法で四大の中の要素を根源領域として現れる表現を収集し、従来反義語とはみなされていなかったhopeとfearが、hopeとdespairという反義ペアと並存している事実を突き止めた。研究成果は『言語文化共同研究プロジェクト2012』と Dynamicity in Emotion Concepts (Peter Lang, 2012; Paul Wilson ed.)に掲載された。 これらの論文のうちひつじ書房とPeter Langから出版されたものは代表者及び分担者の研究の重要性が認められて、コーパス言語学と認知言語学の重要研究者から執筆依頼を受けた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度研究実施計画は下のようであった。代表者渡辺と分担者大森は過去の研究成果から本研究に直接つながる論文を選び、それらを出発点として(A)「動物名」(B)「四大」の領域での未調査のテーマに取り組む。渡辺は中世英語動物譚における動物名比喩義の構造性を研究しながら、古英詩における動物名の表徴性と中世英国の大詩人Chaucerの作品の動物メタファーについて作品を読みつつ先行論文での分析を調査する。大森は四大のメタファーのテーマで過去にMiltonを論じた経験を生かし、ロマン派抒情詩における四大のメタファーの用例収集を行う。渡辺は連合王国に赴き、中世・近代英詩に関する研究論文や資料を閲覧する。 上の計画に沿って渡辺は当初、古英詩Beowulfに見える動物名の比喩義とChaucerのThe Parliament of Fowlsにおける鳥の位階について研究を進めていたが、10月に連合王国に赴いた際に、湖水地方のWordsworthに関係する博物館や展示会を周り、この詩人の鳥類に関する資料を閲覧し、英国図書館において19世紀の動物寓意詩集を閲覧したところ、未読の数編を発見して転写して持ち帰った。この中には以前に翻訳紹介した哺乳類・鳥類・昆虫類を補完して動物名の比喩義構造性を論じるのに必要な水生動物名が多出する詩があり、これを翻刻翻訳して魚介類名のメタファーについて論じることにした。中世英詩における動物名の比喩義の資料を充実させながら水生動物名に関する論文を執筆できたことにより、1年間の達成度は高い。 大森は上の研究計画にほぼ沿って研究を進め、既発表論文を評価した外国人研究者に依頼された英文論文を執筆した。また渡辺の水生動物名研究を受け、水生動物を加えた各グループ間での比喩義の対応性を論じ、メタファーの構造性の提示という研究の大テーマの完遂に貢献した。本年度の研究の達成度は高い。
|
Strategy for Future Research Activity |
水生動物名の分析が終了した結果、4年間の研究期間全体から見渡すならば、順調に進展していると言えるが、逆に(C)身体部位名に由来するメタファーの研究については手をつけていない。平成24年度は(C)の分野はひとまず置いて、研究が進展した動物名メタファーの研究を続ける。代表者渡辺はBeowulfから古英詩全体に資料を拡大し、Beasts of Battle「戦闘の獣」であるwolf, eagle, ravenの三者について中世英語から近代英語までを見渡し、比喩義の連続性が存在するかどうかの調査を行う。 分担者大森は、動物名が感情表出の比喩媒体となるような英語の定型表現やイディオムの収集を続け、自身の認知言語学的な感情表現の研究との相乗効果を目指して、動物名比喩の構造性の追及をする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
動物名直喩研究の資料となる、18世紀以降の英国で出版された百科事典BritannicaとChambers、及び代表的な英語辞書のうち、研究代表者と分担者が所有しておらず、大学附属図書館にも架蔵されていない数種類の版を購入して、動物名の項目の記述を確認する。 現在使用しているパーソナルコンピュータが不調で、起動や検索に多大の時間がかかるため、研究に支障をきたしている。この研究環境を改善するためハードディスクとメモリが大容量の最新版の机上型コンピュータを購入する。
|
Research Products
(3 results)