2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520583
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡辺 秀樹 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (30191787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 文子 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (70213866)
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Keywords | メタファー / 動物名 / 直喩 / 句動詞 / ネットワーク / 構造性 / 意味変化 / 辞書 |
Research Abstract |
2012年度には(1) 英語動物名を第2要素とする複合語が幾つかの比喩義のグループを構成している状況を観察し、その動物名が意味する人間の状態や行為の範囲推定の資料とした。(2) 種族代表名と雌雄幼獣名のグループの比喩義の構造性の存在を例証した。(3) 動物名を中心語とし前置詞副詞を伴う句動詞wolf down「がつがつ喰う」、horse around「ぶらぶら過ごす」のような表現を現代英国英語及び米国英語コーパスから抽出し、『グランドコンサイス英和辞典』と『プログレッシブ英語逆引き辞典』の記載と比較、前置詞副詞による分類と類義による分類を試みて、どの動物名がどのような人の行為・状態のメタファーになる傾向があるか、単独名詞の比喩義と比較した。研究結果は論文「英語動物名メタファーの構造性:複合語グループ・関連動詞と転用動詞・総称名と下位語のメタファー用法」にまとめた。 (3) の発見を要約する。前置詞outを持つ句動詞To cow out「制御が効かなくなる」、To ferret out「捜索する」、To weasel out「義務を回避する」、To duck out「責任を回避する」、To bug out「遁走する」では、「逃げる」という共通義が顕著である。日本語で区別しないイタチと白イタチが英語ではweaselとferretになり、それぞれ「ずるい人・密告者」と「探索者」の比喩義であることから句動詞でもそれを基本にして動作を示している。beetle、hare、pigのように類似点もない動物名がoffと句動詞形になるとTo beetle off/ along「急いで行く」、To hare off「急いで行く」、To pig off「立ち去る」と類義「逃げる・立ち去る」となる。句動詞の比喩義は元の動物名の比喩義よりも前置詞・副詞の特徴的意味が強く作用していることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英語動物名の比喩義のネットワークの存在は、既発表論文で証明した。英語身体部位名のメタファーについては、古英詩における「手」を意味する類語hand, mund, folmの使い分けについて国際学会で口頭発表し、その内容を英語論文にした(2013年9月出版予定)。英語動物名の人間比喩義については、鳥名、イヌ科、ネコ科、魚介名、爬虫類両生類名、昆虫名まで調査と論考を終えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度前半にサバティカルを取って研究に専念し、著書『英語動物名メタファーのネットワーク』(仮題)の出版に向けて、既発表論文14点で示した犬科、ネコ科、昆虫類、鳥類、魚介類、爬虫両生類の動物名の人間比喩義を再検討し、それぞれの類内での対義と類義、上位者と下位者の組み合わせが別の類内にも存在すること、つまり比喩義の類内と類間の構造性の存在を証明したい。加えて、これまでまとまった研究がなされていない、動物名を第1要素、前置詞を第2要素とする句動詞の類義関係について、集中的に用例の再収集と分類を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
英国図書館に赴き、19世紀児童向け動物寓意詩の初版本を閲覧し、本文の転写と既に校訂発表した寓意詩の英文本文の構成を行うための外国出張費を50万円程度、東京外国語大学の辞書学専門家を訪問して、英語辞書における単語と句動詞の比喩義の記載状況についての教示を受けるための国内出張に30万円程度を見込んでいる。
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Research Products
(5 results)