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2011 Fiscal Year Research-status Report

否定のタクソノミーに関する認知語用論的研究 -記述否定・メタ言語否定再考ー

Research Project

Project/Area Number 23520586
Research InstitutionNara Women's University

Principal Investigator

吉村 あき子  奈良女子大学, 文学部, 教授 (40252556)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2014-03-31
Keywords言語学 / 認知語用論 / メタ言語否定 / 日本語の否定文 / 外部否定 / 異議 / 帰属性 / 否定のタクソノミー
Research Abstract

Horn (1985)によって提案された否定の2分法(真理関数的な「記述否定」と非真理関数的な「メタ言語否定」)は、自然言語が本来的にもつ2元性であるとして広く受け入れられているが、日本語の文否定形式がこの2分法を反映していないことをこれまでに明らかにしてきた。本研究は、日英比較の視点を取りながら、多様な日本語の否定表現が反応し分ける意味論的・認知語用論的特性を抽出検証することによって、否定を2大別する真の特性を明らかにすることを第1の目標とするものである。 平成23年度は、メタ言語否定に密接に関係する日本語の代表的外部否定表現形式のノデハナイとその基本形ノダを取り上げ、適宜他の表現との比較も交えて、それが敏感に反応する特性を網羅的に特定することを試みた。その特性の中から、日本語から見たときの妥当な否定のタクソノミーに貢献している可能性の高い3つの特性候補を抽出した。すなわち、1)異議性(話者の発話の意図が異議を唱えることであるかどうか)、2)帰属性(下位表示が帰属的かどうか、すなわち、下位表示が話者以外の誰かの発話か思考の表示かどうか)、3)概念性(否定のターゲットが概念かどうか)、である。この3特性の階層性についてはまだ仮説の段階で、今後の検証が必要である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

日本語の外部否定表現形式の代表であるノデハナイとその肯定形のノダに関する文献は膨大で、すべてに目を通せたわけではないが、主要なものについては、要点をおさえ、改めてその多様な使用を確認した。全てのノダの用法に共通するのは、ノで前接部を名詞化しダで断定する側面で、これは本研究でいうところの、埋め込む方の上位表示と埋め込まれる下位表示のレベルの違いを明示するもの、ということに通じる。ノデハナイの下位表示が発話時点の話者以外の誰かに帰属される帰属的表示であることは、このノダの特性から引き継いでいるものと考えられ、上記の3特性の妥当性を支持するものであることが明らかになった。現時点では、計画当初の予測が大きく外れておらず、おおむね順調に進んでいるといえる。

Strategy for Future Research Activity

平成24年度は、ワケダとワケデハナイを含む(ノデハナイ以外の)文否定表現形式の意味規定を行い、前年度のノダとノデハナイの分析結果と総合して、否定のタクソノミーに貢献する普遍的特性を特定する。また、前年度のノダとノデハナイに関する成果発表を行いたい。 ワケダとワケデハナイはノダとノデハナイと同様、外側否定をマークし、分布も広範囲にわたるが、その先行研究はノダに比べると小規模である。それ以外の表現形式については、ノデハナイとワケデハナイが共に極めて広範な分布を示すのに対して、その分布は限られている。これは意味規定をしている特性の中に、その表現固有の特性を含んでいることを予測させる。逆に、ノデハナイとワケデハナイの広範な分布は、その規定特性の普遍的地位を期待させるもので、初年度の研究方針の妥当性を支持するものとみることができる。 平成24年度に重要なのは、多様な日本語の文否定形式の厳密な意味規定によって抽出されたさまざまな特性の、どれが普遍的地位をもつものであると判断するか、という点である。それには、どれほど多くの表現形式に共通しているか、形態的側面との並行性はどうか、他の表現(副詞など)との共起条件はどうか、といったいくつかの視点からの総合的判断が必要である。表現形式一つ一つは小規模だが、数が多いので、思った以上に時間がかかるかもしれない。 平成23年度の予算未使用分(約15万円)は、平成23年度の研究成果の公開出版のためのものだったが、当該論文の発表場所を他に見つけたので繰越した。この繰り越し予算で、平成24年度にConitive Lingusitics Seriesを購入し、認知処理分野の研究を充実させる。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

本研究が具体的データとして対象にする日本語の多様な文否定表現形式に関する図書が不十分であり、認知とコミュニケーション理論関係でも不十分なところがあるので、昨年に引き続き、その図書を充実させ(物品費)、必要に応じて関係領域の専門家による専門知識の提供を得る予定である(謝金)。さらに、成果発表を全国レベルの学会または国際学会で行い(旅費)、ワケダ/ワケデハナイを含むそれ以外の否定表現形式の分析に発展させる。個々の表現に関する先行研究収集から行わなければならないので、文献複写(その他)も必要になるだろう。先行研究を押さえるのと並行して、アルバイトにデータ収集・入力整理をお願いしたい(謝金)。母語話者の判断が揺れるところや、仮説を確証する場合などに、必要に応じてアンケートを実施する(謝金)ことを計画している。

  • Research Products

    (4 results)

All 2012 2011

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 「日本語の外部否定表現再考」2012

    • Author(s)
      吉村あき子
    • Journal Title

      『ことばを見つめて』

      Volume: 1 Pages: pp. 511-525

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 「関連性理論 ―発話解釈モデルと認知科学的志向性―」2011

    • Author(s)
      吉村あき子
    • Journal Title

      『日本語学』(2011.11臨時増刊号)

      Volume: Vol. 30-14 Pages: pp. 106-114

  • [Presentation] Carston (forthcoming) 「メタファー:概念的か伝達的か?」について2011

    • Author(s)
      吉村あき子
    • Organizer
      第2回メタファー研究会
    • Place of Presentation
      奈良女子大学
    • Year and Date
      2011年10月8日
  • [Book] 『ことばを見つめて』2012

    • Author(s)
      吉村あき子、須賀あゆみ、山本尚子他
    • Total Pages
      pp. 541
    • Publisher
      英宝社

URL: 

Published: 2013-07-10  

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