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2012 Fiscal Year Research-status Report

否定のタクソノミーに関する認知語用論的研究 -記述否定・メタ言語否定再考ー

Research Project

Project/Area Number 23520586
Research InstitutionNara Women's University

Principal Investigator

吉村 あき子  奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (40252556)

Keywords言語学 / 認知語用論 / メタ言語否定 / 日本語の否定文 / 外部否定 / 異議性 / 帰属性 / 否定のタクソノミー
Research Abstract

Horn (1985)によって提案された否定の2分法(真理関数的な「記述否定」と非真理関数的な「メタ言語否定」)は、自然言語が本来的にもつ2元性であるとして広く受け入れられているが、日本語の文否定形式がこの2分法を反映していないことをこれまで明らかにしてきた。本研究は、日英比較の視点を取りながら、多様な日本語の否定表現が反応し分ける意味論的・認知語用論的特性を抽出検証することによって、否定を2大別する真の特性を明らかにすることを第1の目的とするものである。
平成24年度は、①上記Hornの2分法が日本語に適用できないのは、彼の定義において真理条件性と異議性を並行する特性とした点に誤りがあることを明らかにし、②日本語の外部否定表現形式ワケデハナイとその肯定形ワケダを含む、ノデハナイ以外の文否定表現形式に関して行った意味規定の結果と、前年度のノダとノデハナイの分析結果とを総合して、否定のタクソノミーに貢献する普遍的特性の候補を2つ(スピーチアクト概念としての異議性と関連性理論に基づく下位表示の帰属性)に絞った。そして両者の妥当性を検証した結果、下位表示の帰属性が否定のタクソノミーに貢献する普遍的特性であるというのが現段階の結論である。研究成果の一部は、国際ジャーナルに投稿し、現在匿名審査員のコメントに従ってrevise中である。また、別の研究成果は、第13回国際語用論学会(the 13th International Pragmatics Conference, 2013年9月8-13日ニューデリー開催)にlectureで発表予定である。
本務とのタイミングのため年度末に予定の時間を確保できず、若干の表現形式の分析について、確認点を残しているものがある。上記研究結果の方向性の正しさは確信するところであるが、その点は平成25年度に継続し完成度を高める予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

日本語の代表的な外部否定表現形式の一つであるワケデハナイとその肯定形のワケダに関する文献は、主要なものについて要点を抑え、改めてその特徴的な使用を確認した。
全てのワケデハナイの用法に共通するのは、ワケデハナイに埋め込まれる下位表示ではなく、その下位表示を帰結とする推論が発話時点の話者以外の誰かに帰属する点である。このような高度な精神作用をコード化する表現は、少なくとも英語には見当たらず、それが日本語に存在することは極めて特徴的なことだと考えられる。ノデハナイについては下位表示が、ワケデハナイについては下位表示に関連する推論が、いずれも帰属性を持つものであり、当初見当をつけた3特性の妥当性を支持するものである。
若干の表現形式の分析と新しい理論的概念についての確認を次年度に繰り越したものがあるが、現時点では、計画当初の予測が大きく外れておらず、おおむね順調に進んでいるといえる。

Strategy for Future Research Activity

平成25年度は、否定のタクソノミーに貢献する普遍的特性候補(帰属性)の妥当性を検証し、この研究成果を国際ジャーナルや国際学会で公表すると同時に、それが人間言語の機能について意味することを考える。既に研究成果の一部は国際ジャーナルに投稿し、現在revise中である。また一部は第13回国際語用論学会(the 13th International Pragmatics Conference (2013年9月8-13日於ニューデリー))でlecture発表予定である。
当研究は、Hornの真理関数性をその分類基準とする否定の2分法(記述否定とメタ言語否定)を否定するところから始まった。Hornはネオ・グライス派語用論の中心人物で、Griceの考え方を基本的には踏襲する。現代語用論は、Griceの「自然言語におけるnotやifなどの論理演算子の基本的意味は論理学における対応物¬や→と同じであり、自然言語において伝達されるそれ以外の意味は推論によって回復される」という指摘から始まった。もし当研究の「否定を2大別する基準が、真理関数性ではなく、下位表示に関わる帰属性である」という結論が正しければ、否定辞のコード化された意味に、上記Griceの精神が当てはまらないことを示したことになり、意味論と語用論を含む言語領域一般の根本的な視点転換の必要性を示唆する。
平成24年度の予算未使用分(約17万)は、国際ジャーナル投稿論文revise時の英語母語話者チェックと理論的概念確認のための理論提唱者(ロンドン大学Deirdre Wilson博士)からの専門知識の提供のためのものだったが、本務とのタイミングがうまくいかず、reviseが年度を超えたため繰り越した。この繰り越し予算を、予定通り平成25年度に英語母語話者チェックと専門知識の提供に使用し、完成度の高い研究成果発表を行う。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

平成25年度は、研究成果の完成度を高め、学会発表と論文発表による成果発表を通して当研究のまとめを行う。
まず、現在進行中の国際ジャーナル投稿論文revise版の英語母語話者による原稿チェックと専門知識の提供(謝金)が必要になる。また第13回国際語用論学会lecture発表(9月ニューデリー)に伴い、発表原稿作成過程におけるデータ補充および原稿完成補助(アルバイト謝金)と英語母語話者による発表原稿のチェック(謝金)、さらに国外旅費が必要になる。その過程で論旨に確認の必要な点や疑問が生じた場合には、アルバイトにさらなるデータ収集・整理をお願いしたい(謝金)。また、当該テーマおよび理論的枠組みに関する最新文献図書の充実を並行させ(物品費)、最終的には3年間にわたる当研究のまとめを作成する(公開出版)。

  • Research Products

    (4 results)

All 2013 2012

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 「意味を科学する」2013

    • Author(s)
      吉村 あき子
    • Journal Title

      『英語教育』

      Volume: Vol. 61, No. 13 Pages: 95-96

  • [Journal Article] 「日本語の外部否定表現再考」2012

    • Author(s)
      吉村 あき子
    • Journal Title

      『ことばを見つめて』

      Volume: 無し Pages: 511-525

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] "Attribution and Japanese Negation"2013

    • Author(s)
      Akiko YOSHIMURA
    • Organizer
      the 13th Interantional Pragmatics Conference
    • Place of Presentation
      New Delhi, India
    • Year and Date
      20130908-20130913
  • [Book] 『日英比較 英語学の基礎』第7章「語用論」2013

    • Author(s)
      吉村 あき子
    • Total Pages
      200
    • Publisher
      くろしお出版

URL: 

Published: 2014-07-24  

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