2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520589
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
藤原 保明 聖徳大学, 文学部, 教授 (30040067)
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Keywords | 英語の母音の長化 / 子音連結の前での母音の長化 / 開音節での母音の長化 / 大母音推移 / モーラ言語 / あいまい母音 / 代償長化 |
Research Abstract |
最終年度の目的は、古英語から現代英語までの母音の音量変化の分析結果のまとめと、英語の史的音量変化に介在している音声的・音韻的要因の解明(これには、時代ごとの個別の要因と通時的・普遍的要因が含まれる)、および、中英語末期における語全体の音量の調整、さらに古英語から中英語にかけての強勢母音の音量変化が「大母音推移」を引き起こす要因となったかについて考察をすることであった。 研究成果は三つに分けられる。最初に、同器官の子音連結に先行する強勢短母音の長化の条件は、そもそも「同器官の子音連結」の前ではなく「有声阻害音」の前であること、さらに長化は音韻的なものではなく異音的「伸長」であるという説を提示し、この観点から通説の矛盾を突き、時期や地域における長化の多様性を明確に説明し得たことである。 次に、二音節語の開音節における強勢短母音の長化については、従来の後続のあいまい母音の脱落に伴う代償長化説を退け、完全母音の弱化に伴う音量の減少の代償としての「伸長」と、この弱化母音の脱落の代償としての「伸長」という二つの史的音過程の結果であるという説を展開できたことである。この説によって、長化の時期のずれや地域による相違が明確に説明できるようになった。 最後に、大母音推移については、その究極の要因が無強勢母音の弱化(=あいまい母音の出現)に伴うモーラ言語から強勢言語への転換にあることを突き止め、あいまい母音の出現により、強勢長母音の調音時に口を大きく長く開けて発音するモーラ言語時の必要性がなくなったという結論に達した。この観点から大母音推移を説明すると、従来よりもはるかに説得力のある記述が可能となることを示した。 研究成果のうち、最初の2点は学会で口頭発表を行った上で論文を公刊した。最後の大母音推移の詳細については、今後さらに考察を重ねて学会発表を行い、論文にまとめる予定である。
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