2012 Fiscal Year Research-status Report
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23520590
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
高見 健一 学習院大学, 文学部, 教授 (70154903)
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Keywords | 機能的構文論 / 英語学 / 形式と意味 / 構文交替 / 数量詞遊離 / 使役文 / 場所句倒置 / 場所格交替 |
Research Abstract |
本研究は、平成23年度から平成27年度にわたる5年間で、「構文交替」を伴う6つの現象を考察することを目的としているが、平成24年度の2年目は、まず数量詞遊離に関する研究を進展させ、論文を執筆して、オランダから発行されている国際言語学ジャーナル Studies in Language に投稿した(平成24年10月)。この現象は、従来、統語的に説明づけられると考えられてきたが、多くの例を考察すると、そのような説明には反例が数多くあることを示すことができた。そして、数量詞が文末の動詞の直前に遊離する理由は、日本語の文では、その位置が文の焦点(最も新しい情報)であり、遊離した数量詞が文の焦点情報を担うからであることが明らかとなった。このような方向で、論文では、この現象を機能的、語用論的に分析する方が妥当であることを示すことができた。 さらに、構文交替に関してよく知られている英語の「場所句倒置」に関して考察を深め、韓国ソウルのHanyang大学で開催された第1回世界英語学者会議(The 1st World Congress of Scholars of English Linguistics)で招待講演を行なった(平成24年6月)。海外の多くの研究者から好意的な意見が寄せられ、また、彼らと意見交換がたくさんできたことは有意義であった。また、英語の時制とアスペクト、法助動詞と仮定法に関して、英語学習者が理解しずらい点を取り上げ、日本語と比較しながら、これらの文法事象に関して一般書を執筆した。本書は、『謎解きの英文法ー時制と相』として、もう1冊の『謎解きの英文法ー省略と倒置』とともに、平成25年にくろしお出版から発行される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
5年間の本研究で考察を予定している6つの構文交替事象に関して、すでに平成23年度と今年度の平成24年度で、二重目的語/与格構文と「所有」の意味、Cause使役文とその受身文、数量詞遊離構文の3つの現象に関して考察を深め、論文を書くことができた。さらに4つ目の構文交替事象である英語の「場所格交替」に関しても考察を深めており、今後、日本語の場所格交替も射程に入れて論文を執筆する予定でいる。このように目的が達成できつつある大きな理由は、今年度、アメリカのボストンに2度出張し、ハーバード大学名誉教授の久野氏と度重なる議論を行なうことができたこと、そして、英語母語話者の Karen Courtenay 氏、Nan Decker 氏(ともに言語学 Ph. D.)から英語の例文に関する適格性判断、意見、興味深い指摘をたくさん得ることができたことが大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
日本語の場所格交替に関して、意味的、機能的観点から考察が進んでいるので、今年度はまず、この現象に関して論文を仕上げ、さらに、日英語の自動詞と他動詞の交替、および Let 使役文とその受身文の考察へと研究を進める予定である。そして考察の途上で、ハーバード大学名誉教授の久野氏と議論を重ね、また英語の例文の適格性判断に関して、英語母語話者の Karen Courtenay 氏、Nan Decker 氏(ともに言語学 Ph. D.)に多くの意見を求める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
英語の構文交替に関して様々な現象を考察する上で、英語母語話者の適格性判断は極めて重要なため、適格性判断や調査を依頼する英語母語話者の Karen Courtenay 氏、Nan Decker 氏(ともに言語学 Ph. D.)に対して次年度の研究費の多くを使う予定である。また、文房具やパソコン周辺機器等も購入の予定である。
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