2012 Fiscal Year Research-status Report
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23520593
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
三浦 弘 専修大学, 文学部, 教授 (00239188)
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Keywords | 英語方言調査 / スコットランド |
Research Abstract |
平成24年度は,夏期にオークニー諸島,シェトランド諸島,アバディーン大学において,現地方言の収録を行いました。島嶼部の調査に当たっては,アバディーン大学のロバート・ミラー講師からハイランド・アンド・アイランド大学のノルディック研究所(スコットランド島嶼部の言語は古ノルウェー語から発達したものとして研究されています)をご紹介いただき,さらにその研究所の研究者たちのネットワークを通じて,現地の方言保存会の会員や放送局関係者とお会いすることができました。島嶼部の住民にとっては,各方言が独自の言語(オークニー語やシェトランド語)であり,絶滅の危機に瀕しているという意識があり,録音には積極的にご協力いただきました。 アバディーン大学では,当初アバディーン都市方言の録音も計画しておりましたが,大学の学生や職員等関係者の中には,工場労働者がおらず,適切な被験者が見つかりませんでした。しかし,代わりに学内で,スコットランド北部の諸方言の収録ができました。 また,アバディーン大学では,ミラー講師,及び,ドーリス方言(スコットランド北部方言の1つ)の研究で著名なデリック・マクルーア名誉教授と有益な議論を繰り返すこともできました。ロンドン大学においても,ジェフ・リンズィー講師をはじめ,研究者との情報交換ができ,貴重な資料も入手できました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の収録後の音声分析に関しては,昨年度に引き続き,句末の mid-level トーンに着目したイントネーション分析と,母音の音響ダイアグラム作成を行いました。特に島嶼部の母音を分析する中で,二重母音の分布が本土とは異なることに気づき,さらに,ほぼ定説となっている「スコットランド英語の母音長規則(エイケンの法則)」から外れる語が,地域ごと別々にあることがわかりました。 母音ダイアグラムに基づく研究成果は学内の研究紀要に発表するように準備しています。イントネーション分析の1つの成果である「スコットランド標準英語の句末音調 Mid ―Mid-Levelの多用と Mid-Fallの実在―」は,日本英語音声学会の『英語音声学』第17号(2012年12月発行)に発表しました。昨年度に気づいた二重母音の分布についても,同学会の全国大会(2013年6月)において,「スコットランド北部英語における二重母音の持続時間」というタイトルで口頭発表の予定です。さらに今年度は,イントネーション分析の体系的考察を学会発表する予定で準備しています。 今夏は,エディンバラ大学の言語学科とスコットランド英語の辞書編集機関を訪問し,スコットランド中部及び南部方言の収録と資料収集を行うために,現在先方の研究者たちと訪問日程の調整中です。
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Strategy for Future Research Activity |
実施計画の予定通り,スコットランド中部及び南部方言の収録を行います。昨年のロンドン大学での議論の中で,リンズィー講師からエディンバラ大学のロバート・ラッド教授をご紹介いただきました。エディンバラ大学には,スコットランド語の辞書編集機関もあるので,そこの研究者たちとも情報交換をする予定です。言語学科の研究者や辞書編集者のネットワークで,スコットランドの中部・南部の方言話者から音声を収録する予定です。 音読用の語彙リストも目的別に語数が年々増加していますが,現地滞在の期間が短いので,事前の資料分析を綿密に行い,適切なデータが得られるようにリストの改善をしております。イントネーション分析のための自由な自然会話にもさらに工夫を凝らします。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費(イギリスへの渡航費)が大きく,音声収録のための協力者(被験者)への謝金もかかります。協力者の人数次第で総額は変動します。イントネーション分析のためには,自然会話のスクリプトが必要なのですが,この文字起こしの作業はスコットランド方言を熟知した専門家にしかできませんから,専門的知識の提供に対する謝金にもデータ量に応じて,まとまった金額が必要となります。 母音ダイアグラムを作成するための基礎データの分析には,博士後期課程の大学院生に協力をしてもらうので謝金を支出します。物品費やその他の経費については,上記に残額があれば使用します。
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Research Products
(5 results)