2011 Fiscal Year Research-status Report
日本人英語音声に関するリンガフランカ中心特性の特定
Project/Area Number |
23520597
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
都築 雅子 中京大学, 国際教養学部, 教授 (00227448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西尾 由里 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (20455059)
奉 鉉京 信州大学, 全学教育機構, 准教授 (50434593)
山添 直樹 名城大学, 大学教育開発センター, 講師 (00555641)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 日本人英語 / リンガフランカ / インテリジャビリティ / 発音 / 超分節特性 / 分節特性 |
Research Abstract |
本研究は「アジアのリンガフランカとして、日本語母語話者の英語音声面における中心特性(コミュニケーションの阻害要因に関わる特性)の確立」を目的としている。目的に鑑み、今年度は、日本人英語に慣れていない英語母語話者(ミシガン大学学生23名)による日本人理系研究者英語音声の聴き取り実験の結果を詳細に分析し、日本人英語に慣れている英語母語話者(日本の大学で英語教歴7年以上の英語教員10名)による実験結果と比較した。その結果、日本人英語に慣れていない母語話者の場合、慣れている母語話者と比較して、(1)聴き取りの理解度がかなり落ち、「部分的には理解できるが、文の意味内容ははっきりしない」レベルであること、(2)慣れている母語話者に対する中心特性に加え、さらにいくつかの音声特性が中心特性に加わること、が明らかとなった。言い換えれば、日本人英語に慣れている・慣れていないに関わらず、コミュニケーションの阻害要因となる音声特性としては、具体的に1)複合語の強勢アクセントの欠如・間違い2) トーン・ユニットの間違い 3)破裂音における気息の欠如4)母音の長さの間違い、などが挙げられる。一方、慣れていない母語話者にのみ関わる音声特性は1) 複合語以外の強勢アクセントの欠如・間違い2)流音・破裂音・摩擦音・破擦音の誤発音、である。このように阻害特性を二段階に分類したことにより、音声面の英語学習において、どのような項目を先に、且つ重点的に学習するべきかの優先順位の指針が示されたことになる。以上の結果を2011年11月にオーストラリア・モナッシュ大学で開催された「第17回国際英語学会」において."Perceptive and Acoustic Analyses of Japanese Accents from the Perspective of Intelligibility."の題目で、発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本人英語に慣れている英語母語話者と慣れていない英語母語話者をそれぞれ対象とした聴き取り実験の結果を比較し、分析・考察したことにより、日本人理系院生の英語音声の中で特に日本人英語に慣れていてもコニュニケーション阻害要因となる特性と慣れてくると阻害要因でなくなる特性とを峻別することができた。すなわち英語母語話者とのコミュニケーションにおいて阻害要因となる中心特性の精緻化をはかることができた。しかしながら、「リンガフランカとして、日本人英語の音声面における中心特性(コミュニケーションの阻害要因に関わる特性)の確立」という研究目的達成のためには、以上のような英語母語話者を対象とした聴き取り実験に加え、英語を母語としない話者(例えば韓国語母語話者、中国語母語話者)を対象とした聴き取り実験を行い、非母語話者とのコミュニケーションにおいても阻害要因に関わる特性は同じであるかを探る必要がある。今後、既に行われた英語母語話者を対象とした聴き取り実験方法を精査した上で、あらたに非英語母語話者を対象とする聴き取り実験のデザインを立案し、実験を行う予定である。都築、西尾に加え、韓国語母語話者で第二言語習得研究者である奉鉉京の3名で、実験を立案し、その後、都築・奉が韓国の大学で、聴き取り実験を行うつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、主に3つのことを行う予定である。第一に、第17回国際英語学会で発表した分析・考察結果(日本人英語に慣れている英語母語話者と日本人英語に慣れていない英語母語話者との違いを含め、英語母語話者を対象とした日本人英語の阻害要因となる音声特性について)を論文にまとめ、学会誌に投稿する。都築、西尾、奉の3名で行う。 第二に、英語母語話者を対象とした実験結果により峻別できたインテリジャビリティに関わる中心特性について、別の観点から、検証し、研究の精緻化・一般化をはかる。日本人英語音声の一部を人工的に変換し、ミニマルペアの音声をつくり、両者の聴き取り実験を行う。山添が担当する。 第三に、聴き取りの対象を非英語母語話者に広げることにより、非母語話者とのコミュニケーションにおいて阻害要因となる中心特性を抽出する。まずは都築、西尾、奉で非英語母語話者を対象とする聴き取り実験のデザインを立案する。その後、都築と奉が韓国の大学へ出向き、韓国人学生を対象に聴き取り実験を行う。聴き取り実験は下記の手順で行う予定である。1)聴き取り実験被検者を選抜(TOEIC600点以上など)した上で、各実験で聴き取り被検者20名に対し10の音声サンプル(1文はダミーとして英語母語話者音声をまぜる)を聴かせて転記(計3回、1回目黒字で、2回目赤字で、3回目青字で)、その後に理解度の五段階評定および項目別要因評定をしてもらう。実験結果を分析・考察し、中心特性を抽出する。最終的には英語母語話者を対象とした中心特性と比較しながら、日本人英語の中心特性を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
韓国などで聴き取り実験を行うため、また研究成果を国際学会で発表するため、旅費を使用する。実験の分析・考察するために消耗品を購入する。データの整理に対して謝金を支払う。
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Research Products
(11 results)