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2011 Fiscal Year Research-status Report

コーパスを用いた名詞句の分布と認可方法に関する通時的・通言語的研究

Research Project

Project/Area Number 23520598
Research InstitutionChubu University

Principal Investigator

柳 朋宏  中部大学, 全学共通教育部, 准教授 (70340205)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2014-03-31
Keywords主題項受動文 / 格理論 / 英語史 / 生成文法 / 内在格 / 名詞句
Research Abstract

本研究の目的は英語史における名詞句の分布を生成文法の枠組みを用いて分析することである。今年度は二重目的語構文の受動化に焦点をあて、古英語で観察されていた「主題項受動文」の分析を中心に行った。古英語の二重目的語構文では「与格着点項-対格主題項」語順と「対格主題項-与格着点項」語順がほぼ同じ割合で用いられていたことが知られている。この2種類の語順に対して受動化が適用された場合、主題項はその生起する位置に関係なく主格が付与されており、2つの項が名詞句である場合には「主格主題項-与格着点項」語順の方が「与格着点項-主格主題項」語順よりも生起頻度が高かった。このことは名詞句の線形語順を決定する要因として格の階層性が関わっていることを示唆しているといえる。項の統語範疇に関していえば、当該の受動文全体では2つの項が名詞句である用例は少なく、どちらか一方の項が代名詞である用例が多く観察された。項の1つが代名詞である場合、項の主題役や格形態に関係なく代名詞の項が名詞句の項に先行する語順であった。この言語事実は「旧情報である定表現が新情報である不定表現に先行する」という一般的な傾向に一致するものである。さらに、2つの項が共に代名詞である用例が少数であったことからも、受動文における主題項と着点項の線形語順の決定に情報構造が関係していることが伺える。また、与格着点項が主格主題項に先行し、話題要素が文頭に生起している例も観察された。こうした言語事実から TP の指定部に与格名詞が生起していると考えることができる。生成文法では EPP を満たす条件は議論の対象となっているが、上記の言語事実は EPP を満たす条件は格ではないことを示唆しており、理論的にも興味深い現象である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究実施計画の通り、歴史コーパスから得られた言語資料に基づき、古英語における二重目的語構文の受動化を中心に分析を行い、その研究成果についてはフィンランドで開催された国際学会で研究発表を行った。学会終了後、学会参加者から得られた貴重な意見や提案を組み入れて執筆した論文を審査付きの論文集に投稿しており、その研究成果は掲載が決定している。成果の一部が公開されるという点では本研究は順調に進んでいるといえる。予備研究においては「与格着点項-主格主題項」語順の頻度が高いことが観察されていたが、詳細な調査・分析を行った結果、「主格主題項-与格着点項」語順の頻度が高いことが示された。そのため、当初の予測に基づいて構築していた理論を修正する必要があり、現在理論的説明の再考を行っているところである。既に掲載が決まっている論考は実証的な研究に焦点をあてており、理論的な研究は二次的なものであるため、記述的な分析としては妥当なものであるが、精緻な理論的分析という点では検討課題が残っている。

Strategy for Future Research Activity

二重目的語構文の受動化の分析に関しては、既に得られている言語資料を、項の特性(統語範疇・主題役・格形態・格の種類)や述語との位置関係等に基づいて分類し直し、「与格着点項-主格主題項」語順と「主格主題項-与格着点項」語順の違いがどのような要因に起因するのかを論じる。いくつかの要因が関わっていることが想定されるが、その優先順位についても検討する予定である。また、既に予備研究を開始しているが、中英語・初期近代英語における受動虚辞構文における主語の分布に関する分析を行う。この構文では、否定辞を伴う主語と法助動詞が用いられる用例が多く観察されている。今後は検索対象を広げ、初期英語の書簡集からも用例を収集し、節の種類や述語の特性に基づき、それぞれの事例を分類していく。受動虚辞構文に関する研究成果の一部は既に学会で発表済みであるが、それに修正を加えたものを査読付きの論文集に投稿予定である。また、通常の否定名詞句を含む構文との比較を通して、生成文法に基づいた理論的分析を行う予定である。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

本研究に関連する諸言語統語論や英語史に関する文献は、毎年新刊が出版されており、既に出版されているものも含め、ある程度購入する予定である。また、英語史関係の文献には既に絶版になっているものもあり、可能な限り古書を見つけ入手するつもりである。本研究によって得られた成果の一部は、8月にチューリッヒ大学(スイス)で開催される第17回国際英語歴史言語学会での研究発表が決まっており、そのための出張旅費にも使用する予定である。さらに、標識付けされた歴史コーパスの検索ツールに関する使用方法と研究事例をまとめた初級者用の手引書を執筆し、少部数での公開を計画している。

  • Research Products

    (5 results)

All 2012 2011

All Journal Article (2 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] An Overview of the Distribution of Quantifiers in Old English2012

    • Author(s)
      YANAGI, Tomohiro
    • Journal Title

      Chubu International Review

      Volume: 7 Pages: 157-166

  • [Journal Article] 英語史における動詞移動の変遷と屈折の豊かさについて2012

    • Author(s)
      柳 朋宏
    • Journal Title

      最新言語理論を英語教育に活用する(藤田耕司・松本マスミ・児玉一宏・谷口一美編)

      Volume: 0 Pages: 265-276

  • [Presentation] Argument Realization in Nominalization of Old English2012

    • Author(s)
      YANAGI Tomohiro
    • Organizer
      15th International Morphology Meeting
    • Place of Presentation
      ウィーン大学(オーストリア)
    • Year and Date
      2012年2月11日
  • [Presentation] (A)symmetries between Theme and Goal in Ditransitive Passive Constructions of OE2011

    • Author(s)
      YANAGI Tomohiro
    • Organizer
      Helsinki Corpus Festival
    • Place of Presentation
      ヘルシンキ大学(フィンランド)
    • Year and Date
      2011月9月30日
  • [Presentation] On the Subject Position of Passive Expletive Constructions in Middle English2011

    • Author(s)
      YANAGI Tomohiro
    • Organizer
      Middle and Modern English Corpus Linguistics 2011
    • Place of Presentation
      中之島センター(大阪府)
    • Year and Date
      2011月8月26日

URL: 

Published: 2013-07-10  

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