2013 Fiscal Year Annual Research Report
コーパスを用いた名詞句の分布と認可方法に関する通時的・通言語的研究
Project/Area Number |
23520598
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
柳 朋宏 中部大学, 人文学部, 准教授 (70340205)
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Keywords | 格理論 / 内在格 / 語彙格 / 名詞句 / 英語史 / 生成文法 |
Research Abstract |
本研究の目的は英語史における名詞句の分布について生成文法の枠組みを用いて分析することである。今年度は非人称構文の1つである与格経験者構文と二重目的語構文に焦点をあて、2種類の異なる格による認可方法を提案し、その妥当性を示した。古英語から中英語にかけての経験者構文では経験者項は与格で生じていたが、次第に前置詞を伴うようになる。一方同じ与格であっても二重目的語構文における間接目的語は古英語から現代英語にかけて動詞に隣接する場合には前置詞を伴うことはほとんどなかった。このような通時的変化の違いを説明するため、古英語から中英語にかけての経験者構文における与格名詞には語彙要素である V から語彙格与格が付与されていたのに対し、二重目的語構文における与格の間接目的語には語彙的機能範疇である little v から内在格与格が付与されていたと提案した。時代が進み、非構造格である語彙格・内在格が消失すると、経験者項や間接目的語はそれぞれ構造的に認可されるようになる。ただし個々の構文における統語構造の違いから、経験者項構文では前置詞が用いられるようになったのに対し、二重目的語構文では前置詞は用いられず語彙的機能範疇の little v の機能変化により構造格が付与されるようになったと論じた。また経験者構文では経験者項が動詞に先行する場合は代名詞がほとんどであった。これは代名詞が前置詞による格標示だけでなく動詞への編入によっても認可されていたからだと分析した。このような編入の証拠として methinks や meseems のような複合語を挙げることができる。理論的には、英語の名詞句に関する通時的研究を通して、生成文法理論において様々な形で定式化されている格フィルター「(音形を持つ)名詞句は格を付与されなければならない」が名詞句の分布と認可にとって重要な役割を担っていることを示した。
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