2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520608
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菅谷 奈津恵 東北大学, 高等教育開発推進センター, 准教授 (90434456)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 日本語教育 / 第二言語習得 / 文法 / 動詞活用 / テ形 / 反応時間実験 |
Research Abstract |
日本語教育において、テ形やナイ形などの動詞活用は重要な学習事項とみなさている。日本語の動詞活用の習得とそのメカニズムを明らかにするという本研究の目的に従い、平成23年度は、以下のように理論的研究とデータ収集・分析を行った。(1)国内外の先行研究から、これまでに行われた動詞活用実験について理論的枠組と調査方法を検討し、第二言語学習者の動詞活用の習得について考察を行った。その成果の一部は中国文化大学にて講演を行い、台湾の日本語教育関係者からフィードバックを受けた。(2)文法性判断テストのデータ(n=61)を用い、日本語の動詞アスペクト形式の習得について、これまで研究の少ない習慣相(例:毎日公園を走っている)を中心に分析を行った。その結果、ルとテイル(または、タとテイタ)の二つの形式が可能な場合でも、日本語レベルの下位群は前者のみを選択しやすいことがわかった。これは、学習者は一つの意味に一つの形式を結びつけやすいという傾向(the One to One Principle)に一致していた。一方、上位群は両形式を正しいと判断できる割合が上昇していた。以上の結果は、アメリカ応用言語学会においてポスター発表を行った。(3)1の先行研究のレビューをもとに実験デザインを検討し、動詞テ形に関する反応時間実験を行った。まず、日本語学習者、日本語母語話者を対象に予備調査を行い、その結果を踏まえて調査方法を修正した。そして、3月には台湾の日本語学習者(n=63)を対象に本実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い、平成23年度は反応時間実験のデザインを確定して予備実験を行い、台湾での本調査までを行うことができた。理論的研究の成果は台湾の中国文化大学において講演を行い、日本語教育関係者からのフィードバックを得た。また、オフラインデータの分析結果は、アメリカ応用言語学会においてポスター発表を行い、研究成果を発信することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
以下のように、平成24年度以降もデータ収集と分析を継続する予定である。(1)台湾で収集した動詞テ形の反応時間実験データの分析を進め、日本語学習者の動詞活用処理と習得過程について考察を行う。(2)日本語学習者の反応との比較を行うために、日本語母語話者からも同一プログラムで反応時間データを収集する。その結果をもとに、母語話者、第二言語話者の動詞活用メカニズムについて検討する。(3) 上記(1)(2)で得られた成果について、日本語教育、第二言語習得研究などの関連分野の専門家からのフィードバックを得るため、日本語教育学会、第二言語習得研究会、台湾日本語教育学会等において口頭発表を行う。また、その際に得たコメントをもとに論文発表を行う。(4) 研究成果は報告書にまとめるとともに、その概要をホームページを通して一般に公開する。ホームページへは、日本語だけでなく中国語・英語でも記載をし、日本語学習者・日本語教育関係者への成果の還元を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成23年度請求額とあわせ、以下のように次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。(1)データ収集(継続):平成23年度に引き続き、調査協力者の支援を得て(謝金を使用)、日本語母語話者を対象とした反応時間データを収集する。(2) データ分析(継続):収集したデータの入力・分析を進め(謝金を使用)、動詞活用において学習者がどのような方略を取っているか、またそれは日本語学習の進行によって変化していくのか、日本語母語話者との比較も含めて検討する。(3) データの分析結果に対する考察:(2)で明らかになった結果と、平成23年度に行った理論的研究とを合わせ、実証及び理論の両面から検討を加え(物品費で購入した書籍を使用)、日本語学習者の動詞活用メカニズムを明らかにする。(4)研究成果の発表:これらの成果について、第二言語習得研究会(旅費、学会参加費を使用)、台湾日本語教育学会(旅費、学会参加費を使用)において口頭発表を行う。そこで得たコメントをもとに、ジャーナル(英文校閲費を使用)に論文を投稿し、研究成果の公表を行う。
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