2012 Fiscal Year Research-status Report
口頭発表における質疑応答コミュニケーション能力の養成に関する基礎的研究
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23520609
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
仁科 浩美 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (10431644)
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Keywords | アカデミック・ジャパニーズ / 質疑応答 / 口頭発表 / コミュニケーション・ストラテジー / コミュニケーション・ブレイクダウン / ミスコミュニケーション |
Research Abstract |
本研究は、口頭発表時における質疑応答のコミュニケーションについて、日本語教育の観点から実態を分析し、問題点等を明らかにすることを目的としている。 平成24年度は、口頭発表データの収集・整理を継続するととともに、前年に収集したデータについて分析し、その成果を3本の論文にまとめた。 論文1[「日本語による口頭発表時の質疑応答に対する留学生の意識と態度―修士課程を1年経過した留学生の事例から」『小出記念日本語教育研究会論文集』]修士課程を1年経過した留学生に対し、個人別態度構造分析(以下、PAC分析)を行い、質疑応答に対する意識と態度を分析した。その結果、日常的な会話には問題のない留学生でもアカデミックな場面での対応には大きな壁があり、強い葛藤を繰り返していることや、上級者であっても、誤解を回避するために誰かが用いた表現をなぞって説明していることがわかり、一見問題がないように見える場合でも改善すべき問題が潜んでいることを明らかにした。 論文2[「口頭発表時の質疑応答に対する理工系留学生の意識と態度―日本人学生との比較を通した質的分析― 山形大学紀要(教育科学)]修士課程修了直前の日本人学生と留学生にPAC分析を行った。留学生には日本語に関わる要因と専門の内容に関わる要因とを日本滞在の時間経過とともに段階的に切り離して捉えている事例や、回答の誤りや適切な回答が不可能と判断すると、対話を切り上げる態度を示す事例などの特徴が見られた。また、企業との関わりまでには意識が及んでいないことも窺えた。 論文3[投稿修正中]より長い研究生活を送る博士課程の日本人学生及び留学生に対し、発表に対する捉え方やその変容を明らかにすべく、グループインタビューを行った。その結果、発表することの意義や困惑点については共通点が見られたが、留学生は初対面の質問者による多様性に苦慮する様子が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、意識・態度面からの分析と、録画収集したデータを用いた分析からに大きく分かれ、その両輪から問題点を総合的に捉えるものである。前者については「研究実績の概要」で述べたとおり、成果を論文の形でまとめることができた。これにより、研究対象である発表者にとっての問題は、日本人学生とも共通する部分があると同時に、それぞれの日本語力や、質問者との対応への意識によりさまざまな様相を見せることがわかった。また、困惑する問題としては、的外れな質問や、対人関係にかかわるもの、及び、理解はできたが説明や回答が困難と判断した場合にどう対応するかといった点に集約できることがわかり、どの点に焦点を当てて研究を進めればよいかが明確となった。今後は、実際に質疑応答時にどのような言語行動が行われているのかについて、分析を進めていくが、口頭発表のデータ収集についてはすでに終えており、録音・録画したデータの文字化及び整理が終わり次第、ミスコミュニケーションやコミュニケーションブレイクダウン、アサーティブなコミュニケーションに関わる問題点について、分析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は本研究の最終年度であるため、質疑応答時の実態について会話の分析を行う。分析の結果から明らかになったことを昨年度の意識・態度面での研究成果と照らし合わせ、質疑応答時の問題について、総合的に解釈を行う。 具体的には、(1)平成23年度から収集してきた留学生及び日本人学生の質疑応答時の会話データの形を整え、電子データ化する。(2)刺激回想法により得られた発表時についての本人による発話データも整理し、電子データ化する。(3)電子化したデータから平成24年時の研究から明らかになった、ミスコミュニケーションやコミュニケーションブレイク部分を取り出し、詳細に分析する。(4)どのような点で問題を抱えているのかを検討・考察する。最後に、本研究の成果をまとめ、口頭発表または論文の形で発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の使用計画は以下のとおりである。 直接経費 600,000円(25年度予定額)+137,286円(24年度未使用額)=737,286円 (内訳) 物品費 97,286円(図書・文房具等) 旅費 400,000円(学会研究会等 参加・発表旅費) 人件費・謝金 240,000円(資料整理・文字化作業等) 間接経費 180,000円
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Research Products
(3 results)