2013 Fiscal Year Annual Research Report
日本生育外国人児童のリテラシー発達に関する基礎研究―日本語作文の縦断調査―
Project/Area Number |
23520615
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
齋藤 ひろみ 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50334462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 篤嗣 帝塚山大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30407209)
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Keywords | 日本生育外国人児童 / リテラシー発達 / 日本語作文力 / 縦断研究 / 出来事作文 / 量的分析 / 質的分析 |
Research Abstract |
外国人住民が多数居住する地域にある小学校(調査開始時には外国人児童が全校生徒の60%弱)において,6カ年にわたって出来事作文のデータを収集し,外国人児童(日本生育・幼少期来日児童と学齢期来日児童の2グループ)と日本人児童の作文について比較分析を行った。収集した作文は、外国人児童作文が約500件、日本人児童作文が約250件である。作文量や文構造の複雑さ,語彙の使用,文法・表記の誤りなどを定量的に,作文の内容を定性的に分析し,日本生育・幼少期来日外国人児童生徒の作文の力の発達を多面的,かつ縦断的に分析を行った。その結果,次の点が明らかになった。 ・日本生育外国人児童は,小学校入学時点で日本人児童との比較では差が見られる産出量は中学年で日本人と同等となる。文構造の複雑さについては,3学年で文の構成要素の数に有意な差が見られ,日本人児童が高学年で見せる文構造の複雑化や多様化についても遅れが見られた。文法・表記の正確さに関しても中学年までに大きく発達するが,高学年になってもその差は依然残ってた。日本生育であっても外国人児童のリテラシー発達には日本人児童とは異なる発達上の問題が生じる可能性がある。 ・学齢期来日外国人児童との比較では,いずれの観点からの分析においても日本生育児童のほうが総じて低く,母語・母文化環境で一定の学習経験を有する方が日本語の発達においても優位だと考えられる。 ・一方,日本人児童にも作文の力が発達しない児童が少なくなく,調査対象校の地域的特性が大きく関与していると推察される。また,日本生育外国人児童にも日本人児童同等かそれ以上に優れていると評価される作文力を獲得している児童もおり,家庭内の言語及び教育環境が大きく影響していると考えられる。 以上の成果を、2014年3月30日にフォーラムを開催して公開したが、200名に上る来場者があり、今後に期待が寄せられた。
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