2012 Fiscal Year Research-status Report
意味的特徴の分析技術に焦点化した日本語教師の日本語分析力養成とその教材開発
Project/Area Number |
23520624
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
坂口 和寛 信州大学, 人文学部, 准教授 (70303485)
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Keywords | 日本語教師 / 教師養成 / 類義語分析 / 意味分析 / ストラテジー / ストラテジートレーニング |
Research Abstract |
本年度は、日本語教師養成課程で学ぶ被養成者(日本語母語話者)に焦点を当て、彼らが行う類義語分析における、例文分析行動と言語特徴分析について特徴と問題点を探った。2012年度に長野県内の民間日本語学校が実施した日本語教師養成講座において研究代表者が一部講座を担当し、前年度より作成を進めている類義語分析ストラテジートレーニングとその教材を使用した。そして、ワークシートに記述された被養成者のアウトプットをデータに用い、類義語分析行動を観察し、トレーニングと教材の有用性と修正点を把握した。 例文分析行動については「映像化ストラテジー」による正用例文分析に着目し、例文から得られる情報の質的な特徴や問題点を探った。これは、被養成者が言及する類義語の言語的特徴と、例文から得ている情報の関係性を探り、意味特徴の分析内容の精査を目的としたものである。また、言語特徴分析については、被養成者が類義語の特徴や相違点として指摘する事象の整理を試みた。類義語分析ストラテジーの意識化と熟達度の不十分な被養成者は、用法や使用場面、評価性など意味特徴以外の特徴への言及が多く、意味特徴がまったく言及されないケースも見られた。また、用法と意味特徴とが未分化の状態で言語特徴が説明される傾向も把握できた。 以上の成果と、養成講座の被養成者からのフィードバックを手がかりに、類義語分析技術の習熟と向上を目的とした、類義語分析ストラテジーのトレーニング教材(紙媒体)の修正と改善を進めた。特に、例文分析ストラテジーと、意味特徴に焦点化した言語特徴分析ストラテジーに関する解説と練習部分の充実化を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度も、日本語教師養成講座において類義語分析ストラテジートレーニングを実施する機会を利用し、類義語分析技術の意識化と熟達度が不十分な被養成者(初心者教師)への試作版教材の使用を試みた。そして、類義語分析における被養成者の意味特徴分析行動を観察できるデータを得て、意味分析ストラテジーを中心に、紙媒体でのトレーニング教材の改善点や有用性が把握できた。また、トレーニングで用いたワークシートから、被養成者が言及する類義語の意味特徴や、意味分析手続きを、作成された例文と関連づけつつ検討できた。
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Strategy for Future Research Activity |
類義語分析技術の意識化と熟達度の不十分な日本語母語話者(非教師)を中心に継続的に調査を行い、類義語分析において彼らが意味特徴分析の観点や手続きについて特徴と問題点を探る。特に、意味説明の際に用いられる言語表現に着目し、より正確で的確な意味特徴説明に求められるストラテジーを明らかにする。また、日本語教師養成での類義語分析ストラテジートレーニングの実施と教材試用から、意味分析ストラテジーの習熟を促す、トレーニングおよび教材の内容と手順を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
教師養成課程で学ぶ初心者教師や、日本語教育経験のない日本語母語話者への調査を行い、調査実施とその後のデータ整理に必要な情報機器や消耗品に物品費を用いる。また、二次的データ作成にあたってアルバイトを雇用するほか、データ分析にあたって専門知識の提供を受けるために謝金を用いる。このほか、類義語分析ストラテジーのトレーニング用教材を作成するためのソフトウェアや情報機器、さらには図書・文献資料の収集に物品費を用いる計画である。なお、次年度使用額については、調査の実施回数が当初計画より少なく次年度に実施することとし、そのため研究費執行が少なかったことにより生じたものである。
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