2012 Fiscal Year Research-status Report
「帰国しない留学」の長期的成果~日本に留学したラテンアメリカ出身者の場合~
Project/Area Number |
23520626
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 京子 名古屋大学, 留学生センター, 准教授 (60236578)
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Keywords | 留学の成果 |
Research Abstract |
今年度は「帰国しない留学」の中で、留学後ヨーロッパ地域で仕事や生活をしている元留学生を中心に調査を行なった。また、日本に残って、または戻って現在日本に滞在する元留学生についても数名対象とした。 言語的文化的類似性から、スペインには多くのラテンアメリカ出身元留学生が滞在していたが、ここ数年のスペインの景気悪化の影響でその多くがヨーロッパ域内の別の地域に移ったり、ラテンアメリカの出身国に帰国したりしていることがわかった。そのため今回の調査対象地域を、複数の元留学生たちと連絡がとれたノルウェーとスペインとした。また、スペイン国内ではスペインに帰国した元留学生たちにも会い、景気悪化の状況の中で自国で仕事をすること、また外国へ行って仕事をすることについて聞き取り調査をした。 ヨーロッパでは12名の元留学生に会い、その面接の内容を文字化した。ここまででわかったことは、元留学生たちが出身国やその他の国々の経済社会状況によって度々居住地を変え、自分の知識や能力が最も生かせ、また次世代に安心して教育が提供できる場所を、国境に関わらず探しているということである。日本に留学したことは特に、専門知識によって学位を得たこと、またどこででも仕事や生活ができるという自信を与え、大いに生かされている。ただし、日本語や日本文化を専門とし、日本と直接の関係の中で仕事をすることを強く希望している元留学生にとっては、日本や自国の経済状況の影響も受けて厳しい状況が見られた。出身国との関係では、子どもの教育は極力スペイン語で行なっている元留学生や、長期休暇には必ず家族で出身国の家族に会いに行く元留学生など、言語文化の保持や継承について意識しているのが大半であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
元留学生は、留学後も知的移民として滞在地を変えやすいという状況、また年代的にも多忙期にあるという状況から、彼らと連絡をとり面会時間を調整するのが非常に難しい。スカイプでの面会を提案した元留学生もあるが、背後にある環境やコンテクストを知るには現地調査が必要である。今回の調査でも日程調整の過程で面会を断念せざるを得なかった人々もあり、面会人数が限定されることは免れない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は日本国内に加えて当初の予定通り、アメリカ・カナダでの聞き取り調査を予定している。現在のところ多くの元留学生が滞在している西海岸地域の数都市を対象地域にする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アメリカ・カナダ方面、および日本国内での聞き取り調査のための旅費、および海外の場合現地でのアシスタント謝金、調査録音文字化作業謝金、調査協力者への謝礼、文房具等消耗品費
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