2011 Fiscal Year Research-status Report
短期型留学プログラムにおける修了研究の教育的意義と有効性
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23520631
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
R PALIHAWADANA 京都大学, 国際交流推進機構, 教授 (50303318)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 眞理子 京都大学, 国際交流推進機構, 教授 (30230080)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 日研生プログラム / 修了研究 / カリキュラム / 修了要件 / 学術日本語技能 / 研究スキル / 短期型留学プログラム / 国費留学制度 |
Research Abstract |
本年度は以下に記す五つの方法を用いつつ、全国における修了研究・課題の実施状況及びその意義や課題の把握を試みた。1.コースガイド分析:文部科学省により刊行されている『日本語・日本文化研修留学生コースガイド』を研究資料としながら、修了研究の実施有無を基準に、全受け入れ大学のカリキュラムを比較検討した。修了研究の実施率、カリキュラムにおけるその位置付け、修了認定の方法並びに能力育成の方法としてのその役割を分析し、論文発表を行った。2.修了時日研生に対するパイロット調査:平成24年度において実施予定の全国アンケート調査に先だって、2校の修了時日研生を対象にパイロット調査を実施した。パイロット調査から研究遂行の困難点やその過程などが明らかになった。同調査結果の一部をまとめて以下の項目4. の報告書に掲載した。3.修了時日研生及び担当教員に対する聞き取り調査:詳細な分析データを得るため、11大学を訪問し、日研生32名及び担当教員12名に対する聞き取り調査を実施した。日研生に対する調査を通して、研究テーマ選定に至る過程及びその動機、修了研究の遂行過程と日研生としてのその他の学習との関わり、研究遂行上の困難点などを把握することができた。また、担当教員に対する聞き取り調査では、各大学の教育方針・方法・目的・育成しようとしている学生像や修了研究の指導法などが把握できた。4.数名の担当教員を交えた研究会の実施:7大学の日研生担当教員を招聘し、修了研究指導の意義と課題の事例研究会を実施した。参加校の発表を通して、受け入れ日研生数の相違によるカリキュラム編成の違いやカリキュラムにおける修了研究の位置付け・役割の相違、指導法の相違などを把握することが出来た。その上、教育法としての修了研究の意義や指導上の課題に関する議論・検討の有意義な機会となった。事例報告の概要を掲載した報告書を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の実施計画で掲げた以下の5つの目標が概ね達成できた。多方面から実施した初年度のアプローチを通して、次年度以降の本格的な段階に進む上で必要不可欠な研究の土台作りができた。1. 文部科学省発行の2011年度版日研生コースガイドの分析:同分析を通して、全国の修了研究の実施実態を明らかにすることができた。また、日研生カリキュラムの主なタイプやタイプ別に見た場合の修了研究の教育方法としての位置付けや役割が明らかになった。しかし、各大学のカリキュラムの詳細はコースガイドを通して知ることが不可能であり、同分析は全体的な概要把握のための基礎研究である。2. 修了時日研生に対するパイロット調査の作成・実施及び全国アンケート調査の調査票作成:2校の修了時日研生を対象にパイロット調査を実施し、その分析を行った。上記の分析結果を踏まえながら、本調査用の調査票を作成した。同調査票に更なる検討を加えた上で、最終版に仕上げていきたいと考えている。3. 複数校の日研生担当教員に対する聞き取り調査の実施:日研生を受け入れている36校中の11校を訪問し、担当教員及び日研生に対する聞き取り調査を実施した。多くの担当教員及び日研生の協力の下、横断的な調査の実施が可能となり、貴重なデータの収集ができた。4. 上記調査分析を通した短期型留学プログラムにおけるカリキュラム構成や修了研究課題設定の目的や意義に対する検討:日研生プログラムに対するある程度の分析ができたが、他の短期型プログラムとの比較は部分的にしかできなかった。その本格的追求は次年度以降に残された課題となる。5. 研究協力者やその他の日研生担当教員数名を交えた研究会の実施:各大学の事例報告を行う研究会を実施した。達成目標設定、指導方法、指導上の課題、教育方法としての有効性などのいくつかの観点から、各大学の事例について議論・検討することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度のプログラム修了時に当たる6月~9月に全国の日研生に対してアンケート調査を実施する予定である。同調査を通して学習者の視点から見た修了研究の実施意義及び課題について多角的に検討する。更に、受け入れ校の担当教員及び日研生に対する聞き取り調査を継続実施すると共に、1年目から蓄積してきたデータのデータベース化を図る。聞き取り調査の分析を開始し、課題内容、達成目標、指導法、課題遂行の過程やその問題点を分析する。短期型プログラムの<修了>に焦点を当て、修了研究・課題を課すことの意義やその教育方法としての有効性を探究するところに本研究の特色がある。次年度は、4年生学部過程の卒業論文に関する先行研究をより詳細に検討することにより、卒業・修了課題設定の意義・役割について詳しく考察する。その上で、日研生カリキュラムの構造的分析を行いつつ、知識・技能の習得、能力育成がどのような課程としてカリキュラム上編成されているのか、修了課題研究がその中でどのように位置付けられ、いかなる役割を果たしているのか、総合的に考察する。修了研究を実施するカリキュラムにおいて研究スキルや学術日本語技能習得を可能にする補助科目が1校平均4.13科目開講されていることが初年度の研究を通して明らかになった。そのことから、学術的な技能習得が修了研究を実施する日研生カリキュラムの重要な目的となっていることが窺われる。日本語の学術文章力に焦点を絞り、日研生教育を通してその技能がどのように育成されるのか、複数校の数名の学習者を対象に検証したいと思う。技能習得の測定のためのテストを作成し、開講時及び修了時の結果を比較する形で、修了研究実施校の学習者とそうでない学習者の比較を試みる。他大学の日研生担当教員の協力を得て今年度同様の事例研究会を開催し、研究成果の共有を通した日研生教育の更なる質的向上を図っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度実施予定の全国修了時日研生に対するアンケート調査は本研究の重要な部分を成す。同調査の調査票は約450部必要であり、その印刷のため印刷費を利用する。また、同調査票の配布は郵送の形で行う予定であり、その送付及び回収に郵送費を使う。回収した調査票の確認、回答データの入力、集計表の作成作業は謝金を用い、数名の大学院生にアルバイトとして依頼する。アンケート調査の正確さ・客観性の確保のため慎重なチェックが必要である。調査票の構成、分析手法及びその統計的処理の客観性確保のため専門家にチェックを依頼する予定であり、専門的知見を得るため謝金を使う。次年度も12校程度を対象に担当教員及び日研生に対する聞き取り調査を実施する。調査は相手校に出向いて行うので、出張費用としての旅費が必要となる。同聞き取り調査により得られるデータの入力を大学院生に依頼する。今年度実施分も含めて蓄積されたデータのデータベースを作成し、研究の最終まとめに利用できる形にしたいと考えている。同作業も謝金を使って大学院生に依頼する計画である。学術日本語文章力の習得を図るテストは複数タイプのカリキュラムを実施している大学の日研生を対象に行う予定である。同能力測定は同一学生を開講時から修了時まで見ていくことでしか図ることはできない。対象校の担当教員に協力を得る予定であるが、テスト作成やその測定方法の検討のため旅費を使い、1、2回打ち合わせ会を開く。全国アンケート調査で光が当たりにくい個別事例の詳細な把握を目的に今年度同様に事例研究会を実施する。主として聞き取り調査に協力してくれた大学の担当教員を同参加者として招聘する予定であり、そのために出張旅費が必要となる。参加校以外の日研生担当教員との研究成果の共有を図る目的で、事例研究会の実施報告書を作成し、受け入れ大学に送付する。その印刷費及び郵送費も次年度の使用計画に含まれている。
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Research Products
(4 results)