2013 Fiscal Year Research-status Report
短期型留学プログラムにおける修了研究の教育的意義と有効性
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23520631
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 眞理子 京都大学, 国際交流推進機構, 教授 (30230080)
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Keywords | 日研生 / 修了研究 / 日本語技能習得 / アカデミック・スキル / 研究能力 / カリキュラム / 短期型プログラム / 国費留学制度 |
Research Abstract |
本研究の重要な目的の一つが、日本語能力育成における修了研究の有効性を検証することである。とりわけ、日本語のアカデミック・スキル養成のツールとして修了研究がどのように活用可能か、その際の課題は何か、昨年度に引き続き検証を続けた。 その方法として、東京外国語大学、千葉大学及び金沢大学の教員・日研生の協力の下、本学を含めた4大学の合計73名の日研生に対する日本語学習効果を測定するテストの第二弾及び第三弾を実施した。渡日直後の日研生に対する開始時テストは昨年度実施したが、本年度は一学期終了時テスト並びに修了時テストを実施の上、その比較検討を行った。 実施したテストを研究資料として、学術語彙の獲得、接続詞・コロケーション等の表現の獲得、研究論文特有な文法の獲得、アカデミック・リーディング、アカデミック・ライティング能力の習得、誤用の傾向、費用の傾向等について分析している。 テストは質問形式及び難易度を統一した形で作成した。各学生の3回分のテスト成績を比較することで、習得度合や習得の課題を検討するためである。しかし、大きな問題が浮上した。第二弾のテストである一学期終了時テストの平均的成績が他の二回と比すると、有意に低い。その理由は、難易度の統一が充分図れなかったためか、学生自身の一年間の学習への取り組み方によるものか、それらの相互作用に由来するのか、客観的解明は困難である。 上記の課題に対する十分な検討が必要になったことと第一に本テストは元々の計画に含まれたものではなく、研究の遂行上の必要性に応じて実施したものであるため、研究期間を一年間延長した。現在、協力いただいた3大学の教員及びテストの採点を担当した京都大学の非常勤講師の協力も得ながら、多角的な分析を進めている。 更に、昨年度実施の全国アンケート調査、現在まで実施してきた全国日研生並びに担当教員への聞き取り調査の分析も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画の通りに進めてきたが、アンケート調査及び聞き取り調査データだけでは、修了研究を遂行する上で、日研生にとって日本語のどの面が壁になるのか、研究の遂行を含めた日研生の学習過程において、どのような能力・技能が習得されるのかが正確に把握することが困難である。故に、修了研究の有効性のより正確な検証を行うためには、習得度を把握するためのテストを実施する必要があると考えるようになった。 そこで、他大学3校の協力を得て、合同テストとして三回に亘り、修了研究論文作成において用いられる学術日本語の習得度を図るテストを実施した。その結果、当初計画にはなかったテスト作成、集計、分析、そのデータに基づいた共同研究という作業が大幅に増え、科学研究の期間を延長せざるを得なくなった。しかし、より客観的な研修のため、そして研究結果の応用範囲の拡大のために、上記のステップが必要であったと思われる。 テスト結果を基に学術語彙の習得度合について検討を始めた。論文用語の習得度合を明調査しつつ、習得が困難な語彙やそれらの品詞別の特徴などを分析中である。 本年度は上記のテスト以外にも、日研生を対象とした全国アンケート調査データ及び日研生・担当教員に対する聞き取り調査データを基に、修了論文作成過程における日本というフィールドの生かし方及び修了研究の修了後の生かし方についていも検討した。その一環として原籍大学に復帰後の、修了研究の卒業論文への発展の有無についても調査した。 研究の方向性を若干変更したため、当初の予定の通りに研究を終了することができなかったが、研究期間を延長した分、更に発展させたいと考えている次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
科学研究費の期間延長により頂いた貴重な時間を生かし、以下の通りに研究を推進したいと考えている。 1)上述の日本語習得に対するテストデータの分析を進めて、その結果を協力してもらった3大学の担当教員並びに採点を担当者2名の非常勤講師と共に学会で発表する。 2)全国アンケート調査データ及び日研生・担当教員に対する聞き取り調査データでまだ生かし切れていない部分を整理し、最終報告書に反映させる。 3)現在まで行ってきた多角的な分析結果を最終報告書としてまとめ上げ、日研生を受け入れている期間に送付し、共有する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
元々の計画に含まれていなかったが、日研生の学術日本語習得における修了研究の効果についてより詳細に検討することを目的に4大学の合同テストを三段階に亘って実施した。より客観的且つ具体的なな検証の必要性が生じたからである。 テストの実施のみならず、分析に充分に時間をかけるために、研究期間を延長した。得られたデータで、多くの分析が可能になり、その可能性を追究したいと思ったからである。 当初の計画では、本年度中に最終報告書をまとめ上げ、全国アンケート調査などで協力いただいた全国の日研生受け入れ校に送付予定であった。しかし、上述の理由により、報告書の発行も延期せざるを得なくなったが、そのための資金が次年度に必要になるので、繰り越した。更に、テスト実施において協力を得た教員や非常勤講師と共に分析結果を学会で発表する予定であるので、そのための旅費分を次年度に繰り越した。 繰越額の使用計画は以下の通りである。1) テストの分析結果を学会で発表するための旅費として使用予定である。発表は合同発表として行う予定であり、その打ち合わせ分も含めて、5名分の旅費が必要となる。 2)上述のテストデータに基づいた分析を含めた、現在までの多角的な分析をより包括視点からまとめ上げ、最終報告として発行する。その印刷費並びに日研生受け入れ校への送付代として繰越金を使用する予定である。そのまとめの際に多少学生にも手伝ってもらう予定であり、謝金としても数万使う計画である。
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Research Products
(2 results)