2012 Fiscal Year Research-status Report
日本語音声教育における文末イントネーションの指導に関する研究
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23520632
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
轟木 靖子 香川大学, 教育学部, 准教授 (30271084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 直子 香川大学, 教育学部, 教授 (30314892)
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Keywords | 終助詞 / イントネーション / 音声教育 |
Research Abstract |
本研究は,終助詞を中心に,日本語の文末イントネーションの全体像をつかむことにより,日本語教育の分野において,教師も学習者も利用できるような指導書を作成し,教材開発の基礎を築くことを目的とするものである。 まず,日本語母語話者が地域を問わず理解している音調の実態を明らかにする必要があるため,聞き取り調査及び録音調査をおこなった。平成23年度に計画していたように,聞き取り調査で使用する音声資料をみなおし,12分程度でできる調査に改め,中国・四国地域の学生を中心に調査をおこなった。また,同じ調査を中国語母語話者および韓国語母語話者にも実施した。 この調査結果については、終助詞「よ」「ね」の音調について -日本語音声教育の視点から-, 香川大学教育学部研究報告第I部 第139号,香川大学教育学部 において報告された。今回は調査対象が上級日本語学習者であったためか,日本語母語話者と同じような回答傾向もみられたが,「やるよ」の順接・平坦,「やるね」の順接・アクセント上昇など、いくつか学習者と母語話者で異なる結果となるものもあったほか,香川と岡山で差があったもの(「本当だね」平坦)もあった。また,同じ終助詞で終わる文であっても,述語が名詞(+だ)か動詞かによっても違いがみられるようであり,今後の検討課題として取り組むことにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の成果をふまえ,終助詞とイントネーションと意味の対応を整理した。今年度は聞き取り調査を一部修正し、聞き取り調査にかかる時間を短縮した。 また,大学で学ぶ留学生を対象に,終助詞の音調の聞き取り調査をおこない,日本で生活する外国語母語話者にとって,比較的わかりやすいものとそうでないものを明らかにすることができた。また,同じ終助詞の形態と音調の組み合わせでも,日本語学習者の母語の違いにより,理解されやすいものと理解されにくいものがあるということが改めて確認できた。 あらたに見出された課題として,終助詞がつく述語が動詞か名詞(+だ)かという違いにより同じ終助詞でもあらわす意味・機能に違いが生まれ,そのことによって結果が左右されている可能性が出てきた。これは調査結果の詳細な分析によるものである。 音調の提示方法については,試行錯誤することが予想されるため,すでに案を考案中である。東日本地域で調査可能なところがあればおこなう,としていたが,この点については難しく,実施することはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,聞き取り調査を継続する。また,これまでの成果をもとにして,日本語教育で指導すべき終助詞とイントネーショと意味の対応について整理する。 同時に,日本語教師を対象に以下のような調査を実施する予定である。①音声教育において終助詞の指導はどの程度重要と考えているか等についての意識調査②研究代表者と分担者が作成した,文末音調の提示方法の試案を見て,正確に文末音調を再生できるか,理解できるかどうか等の調査。 本研究の目的として,音声学の知識がない教師や学習者にとっても無理なく受け入れられるものを考案することがあり,その点からも音調の提示方法は熟慮すべき項目であると考えられる。たとえば,音声的記述と音韻的表示を区別して提示することよりは,できるだけわかりやすく,音調がイメージされやすいものを考える必要がある。 また,指導内容に関しても「この音調でなければならない」というタイトなものではなく,許容できるものを2~3種類提示しつつ,「この音調ではそのように聞こえない」というものを明示することが必要であると考えている。この観点から指導すべき終助詞の音調の整理をしていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
聞き取り調査や面接調査実施のために使用する機器(ポータブルMD,ボイスレコーダ等)を購入する。また,音声研究や音声教育に関する書籍を購入し,音調の効果的な提示方法について検討するための材料とする。 そのほか,録音調査で得られた音声資料をより詳細に分析するため,音声分析ソフトを購入する予定である。
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