2011 Fiscal Year Research-status Report
ジェンダーの視点から日本語教科書を再考する:社会変化を反映した教科書開発
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23520642
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
水本 光美 北九州市立大学, 基盤教育センターひびきの分室, 教授 (80326462)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ジェンダー / 性別役割 / 女ことば / 日本女性像 / 教材検証 / 教材開発 |
Research Abstract |
研究初年度は一部計画より遅れている項目があるが、一方、次年度の計画で実施できるものに着手し成果を出すことができた。1.実社会における「女性文末詞」使用に関する自然会話データ補強:50代データは予定の約3分の2の収集完成。残りの3分の1は来年度も引き続き収集を継続する。2. 国内外の日本語教材で使用されている「女性文末詞」の調査:(1)国内の教材調査はほぼ完成。欧州の教材は該当するものが予想以上に少なく、データ収集は打ち切り。(2)韓国の教材は来年度も調査を継続 3. 自然会話における「女性文末詞」使用実態の比較分析:来年度50代のデータ収集完成後、分析を完成予定。4. アンケート調査:日本国内および欧州在住教師を対象にアンケートを実施し180名回答。分析中。5. 日本語教材に描写される日本女性「社会的役割」の調査 (H24計画):(1)教科書における「家庭内の役割」「職場での役割」を分析 (2)現在の日本社会に関する関連データ収集 (3)以上の調査結果の比較分析 6. 国際シンポジウム発表1件、論文1稿。 以上の研究結果により今年度は、教科書と実社会における日本女性像に関し、次のことが明らかになった。1.教科書は、ジェンダーという観点からは日本社会の変化と現状を反映しているとは言い難い。家庭では専業主婦が大半を占め、職場では事務系一般職の若い女性が働く女性の典型として描かれている。 2.政府レベルの統計によれば、現在の日本社会では専業主婦が激減しており、家庭を持ちながら外で働く女性が大多数を占めている。若い世代は、総合職に就き専門職に従事する女性が急速に増加し主流となっている。また、教科書に描写される日本女性像が約30年前の姿であることが種々のデータ比較分析により立証出来たことは、学術的にも意義があり、今後、教科書制作者にとっては貴重なデータ提供となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.データ収集:以下の理由により予定より一部遅れている(1)対象となる50代女性標準語話者が目的数確保出来なかったため、自然会話のデータ収集に関しては、一部、予定より遅れている。 (2)調査対象とした日本国内出版の教科書は予定通りすすみ、分析もほぼ完成。しかし、欧州内出版の日本語教科書に関しては、実際には条件に該当するものが予想以上に少数しかなかったため、欧州内出版の教科書の調査は打ち切らざるを得なかった。(3)そのため、韓国内出版の教科書を調査する方向転換が生じ、次年度へ持ち越しとなった。(4)そのため、当初予定していた「自然会話」と「日本語教科書の会話」の比較分析の一部は次年度に持ち越しとせざるを得なかった。2. アンケート調査:予定通り実施し、分析状況も順調。3. 社会学的(女性の役割および女性像)データ収集と比較分析:1の会話データ収集が遅れている分、次年度に予定していた研究進行過程に前倒しで着手した。4. 国内外の学会での研究発表と論文執筆:予定通り実施できた。上述の理由により、遅れている部分も一部認められるが、次の段階の研究に着手した部分もあるため、全体として、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
<H24年度>前年度に完成出来なかったデータ収集および分析を完成させた上で、現在の日本社会との比較分析を実施する。1. H23年度に一部遅れたデータ収集およびデンター分析を完成。2. 日本語教材に描写される日本女性の「社会的役割」「場面設定」「言動」の調査 3. 現在の日本社会に関する関連データの収集と分析 4. 上記1+2を3と比較分析<H25年度>前年度までの研究結果を確認する目的でインタビュー調査を実施し、教材モデルを作成、その実証実験を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
<次年度に使用する予定の研究費>1. 今年度はデータ収集が一部、予定通り出来なかったため、集計、テープ起こし等の研究補助が今年度は必要なかった。次年度にデータ収集完成後は研究補助(人件費)および彼らが使用するコンピュータなど必要機器類を購入する予定。2. 欧州のデータ収集が期待通り進まなかったため、研究協力者(海外の専門知識および情報提供者)の協力が今年度は必要なかった。そのため今年度は謝金が生じなかったが、来年度は、データ収集および分析が進むと共に協力も必要であるため、謝金も使用する予定<翌年度に請求する研究費>1. データ収集のための旅費(国内外)2.資料収集費用 3. 研究補助が使用する機器類購入費 4. その他、消耗品など
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Research Products
(2 results)