2011 Fiscal Year Research-status Report
日本統治末期台湾の国語常用運動の研究:「朝鮮」との比較を念頭に
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23520650
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Research Institution | Den-en Chofu University |
Principal Investigator |
藤森 智子 田園調布学園大学, 人間福祉学部, 准教授 (20341951)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / 台湾:「朝鮮」 / 日本統治 / 国語普及 / 国語常用 |
Research Abstract |
本研究は、1937年から1945年までの日本統治末期の台湾社会における国語普及運動を、朝鮮半島との制度的比較をふまえて明らかにすることを目的としている。 平成23年度は先行研究の検討と皇民化時期の台湾における国語常用運動の制度的検討を進め、「国語講習所」を中心とする国語普及施設を中心に資料収集を行った。収集資料は、統計資料、総督府府報や各州庁報、新聞、雑誌記事を中心に日本国内及び台湾の関連図書館、機関にて行った。1930年代初期から設置された社会教育施設「国語講習所」は、1937年以降、設置数・生徒数が増加し、加えて社会において国語を常用する国語常用運動が展開された。この運動は、各州庁で「国語常用家庭」が認定されるなど、家庭内でも国語を常用する運動へと発展していった。 平成23年度は、具体的事例として「国語講習所」の講師に関して検討した。台湾にて収集した「国語講習所」の講師の履歴書に関する資料から、どのような人物が講習に当たったのかを検討した。台北市八芝蘭公学校『職員履歴書綴』、宜蘭郡『旧職員ニ関スル履歴書』、宜蘭郡員山区内皇民錬成所「国語講習所」『現専任講師履歴書綴』等の職員履歴書から、台北州の都市部と地方の例を検討した結果、都市部では師範学校、高等女学校卒業の高学歴有免許者が多い、公学校との兼任が多い、日本人講師が多い、女性講師が複数名存在する等の特徴があった。一方、地方では、公学校卒または高等科修了の学歴が多い、養成講座受講者が多い、教員養成講座を経て公学校(国民学校)教員となる者がある、台湾人が中心となっている等の特徴が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は日本統治末期台湾の国語常用運動の制度とその実際を明らかにすることにある。平成23年度は、先行研究の検討、文献資料の収集、面接調査等が計画されていた。先行研究は植民統治・植民地教育、言語政策、日本語教育史に関わる論著の他、国外の関連論著を収集・検討した。文献調査に関しては、学校教育、社会教育、国語普及に関わる統計、総督府府報、各州庁報、新聞雑誌、その他の関連資料を収集、検討した。国内では国会図書館、大学機関の図書館等、国外では台湾の国立中央図書館台湾分館、中央研究院等の機関に所蔵されている資料を収集し、検討した。これら資料に基づき、日本統治末期台湾の国語常用運動の制度的展開は大方把握されつつある。また、実際社会での展開は、教員に関する履歴書から台北州の国語講習所における教員の実態が明らかになった。 これらはほぼ予定どおり進行しているといえるが、面接調査及び資料整理にやや遅れが出ている。これは、校務等による時間上の制約、また面接対象者の都合等の理由による。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り推進する予定である。平成23年度に引き続き、文献調査と面接調査から研究を推進する。文献調査は、日本国内及び台湾関連機関・図書館所蔵の台湾総督府や各州庁による統計、法令、関連資料及び新聞・雑誌記事等を中心に収集、検討する。これらはデジタル化されていない資料が多数あるため、一定の時間を要すると考えられる。研究代表者が直接収集する他に、協力者にも収集依頼する予定である。 面接調査は、主に台湾に在住する「国語講習所」や「国語常用家庭」経験者を中心に、1937年から1945年までの間に国語常用運動を経験した者への面接調査を行う予定である。研究代表者が主に台湾で対象者に面接し、その内容整理を行う。面接のテープ起こし、資料整理は研究補助を依頼し、作業を推進する予定である。 本研究の成果の一部を学会等で報告する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「物品費」は関連図書をはじめ復刻版を含む文献資料等の購入に使用される予定である。国内外での文献資料収集・面接調査等のための「旅費」および資料整理、テープ起こし等による「人件費・謝金」などが比較的大きな経費となる予定である。特に、平成23年度は面接調査がやや遅延したため、そのテープ起こしや資料整理等により発生する人件費・謝金の支払いが少なく、次年度に使用する予定の研究費が生じた。そのため、平成24年度は、人件費・謝金が当初の計画より多く出費される予定である。「その他」の費目は資料のコピー代、旅費の雑費等に使用される予定である。
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