2012 Fiscal Year Research-status Report
日本統治末期台湾の国語常用運動の研究:「朝鮮」との比較を念頭に
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23520650
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Research Institution | Den-en Chofu University |
Principal Investigator |
藤森 智子 田園調布学園大学, 人間福祉学部, 准教授 (20341951)
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Keywords | 国際研究者交流 / 台湾、韓国 / 日本統治 / 国語普及 / 国語常用 |
Research Abstract |
本研究は、1937年から1945年までの日本統治末期の台湾社会における国語普及運動を、朝鮮半島との制度的比較をふまえて明らかにすることを目的としている。 平成24年度は、先行研究の検討と皇民化時期台湾における国語常用運動の制度的検討、及び「国語講習所」を中心とする国語普及施設の事例を中心に資料収集及び検討を行った。収集資料は、統計資料、総督府府報、各州庁報、新聞・雑誌記事を中心に日本国内及び台湾の関連図書館、機関にて行った。1930年代初期から設置された社会教育施設「国語講習所」は、1937年以降、皇民化運動の展開を受けて設置数・生徒数が増加し、加えて社会における国語を常用する国語常用運動が展開された。各州庁で「国語常用家庭」が認定されるなど、家庭内でも国語を常用する運動へと展開されていった。 平成24年度は、前年度に続いて文献調査による国語普及運動の制度的展開及び面接調査による国語普及の事例を検討した。当該年度は、「国語講習所」制度の展開を文献により検討した他に、「国語講習所」講師の履歴及び「特設国語講習所」の生徒名簿を中心に具体的な事例検討を行った。前者は都市部では高学歴の公学校教員が兼任講師となっている例が見られるのに対し、地方においては養成を経て公学校卒業者が講師となっている例が複数見られた。後者の例では学齢期の児童が通っていたことが明らかになった。これらの検討から「国語講習所」が一部地域では公学校を補完する役割を担っていたことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、日本統治末期台湾の国語常用運動の制度とその実際を明らかにすることにある。平成24年度は、先行研究の検討、文献資料の収集、面接調査等が計画されていた。先行研究は、植民地教育、言語政策、日本語教育史、台湾史、朝鮮史に関する論著の他、国外の関連論著を収集・検討した。文献調査は、学校教育、社会教育、国語普及に関わる統計、総督府府報、各州庁報、新聞・雑誌、その他の関連資料を収集、検討した。これら資料に基づき、日本統治末期台湾の国語常用運動の制度的展開は大方把握されつつある。しかしながら、面接調査の資料整理や朝鮮半島での国語常用運動の展開の検討に、校務等による時間的制約上のためやや遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り推進する予定である。平成24年度に引き続き、文献調査と面接調査から研究を推進する。文献調査は、日本国内、台湾及び韓国の関連機関・図書館所蔵の官報や統計、法令、関連資料及び新聞・雑誌記事等を中心に収集、検討する。これらはデジタル化されている資料もあるが、それ以外のものは、収集に一定の時間を要すると考えられる。研究代表者が直接収集する他に、研究助手にも依頼する予定である。 面接資料は、主に台湾に在住する「国語講習所」や「国語常用家庭」経験者を中心に、1937年から1945年までの間に国語常用運動を経験した人々への面接調査を行う予定である。また、今年度は学齢期を植民地朝鮮で過ごした経験のある日本人への面接も予定されている。面接内容のテープ起こし、資料整理は研究補助を依頼し、作業を推進する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「物品費」は関連図書をはじめ復刻版を含む文献資料等の購入に使用される予定である。国内外での文献資料収集・面接調査等のための「旅費」及び資料整理、テープ起こし等により発生する「人件費・謝金」などが比較的大きな比率を占める予定である。「その他」の費目は資料のコピー代、旅費の雑費、資料の運搬費などに使用される予定である。
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Research Products
(1 results)