2013 Fiscal Year Annual Research Report
日本統治末期台湾の国語常用運動の研究:「朝鮮」との比較を念頭に
Project/Area Number |
23520650
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Research Institution | Den-en Chofu University |
Principal Investigator |
藤森 智子 田園調布学園大学, 人間福祉学部, 准教授 (20341951)
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Keywords | 台湾 / 朝鮮 / 国語普及 / 国語常用 / 国語講習所 / 日本統治 |
Research Abstract |
平成25年度は、台湾の国語常用運動の全容を明らかにすることを目的にし検討を行うと同時に、新たに収集された資料に基づき国語普及施設の教員養成に関して検討を行った。 日本統治50年にわたる国語普及運動の成立と展開を検討し、皇民化時期台湾における国語常用運動の制度を概観しながら、殊に1930年代から展開された「国語講習所」を中心とする国語普及施設の事例を中心に検討した。検討の結果、台湾における「国語講習所」の成立がその後の国語普及を飛躍的に伸長させたといえる。各地に設置された「国語講習所」は、夜間、または地域によっては昼間にも開講され、公学校に通わない多くの未就学の台湾民衆を教化した。科目は国語(日本語)を主としながら、算術や体操、唱歌など、地域や個々の「国語講習所」によって差違があった。一方、国語常用家庭など、家庭の国語も図られたのが皇民化時期であるが、この制度は朝鮮においても見られた。 また、「国語講習所」の教員養成に関しては、各州庁において要項が定められ行われていた。殊に台中州は州報に詳細に養成課程が掲載されており、他州に先駆けて教員養成が行われた様子が窺えた。個別の教員履歴書からは、教員の資質が窺え、公学校と「国語講習所」が密接な関係にあったことが明らかになった。また、都市部と地方とで教員資格の有無に差違が見られた。都市部の「国語講習所」講師は公学校教員が多数みられ、地方は養成講座出身者が多かった。このことは、皇民化時期台湾において教員が不足していたことを示しているといえよう。 このような事例が朝鮮においてもみられたのかは、今後の興味深い検討課題として残される。
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