2012 Fiscal Year Research-status Report
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23520652
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
稲垣 亮子 愛知淑徳大学, 交流文化学部, 助教 (00549389)
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Keywords | 多文化対人コンピテンス / 多文化共生態度 / 社会的距離 / 異文化接触 / 多文化共生支援活動 |
Research Abstract |
該当年度の目的は、初年度に実施した予備調査の結果を基に「異・多文化共生(多文化対人コンピテンス:MCIC)尺度」作成のための本調査の実施であった。 本調査では、尺度の精緻化「特性的自己効力感(SE)」外国人に対する非寛容を表す「社会的距離」「多文化共生社会態度」「異文化接触経験」の各変数とMCICとの相互関連による尺度の信頼性、構成概念妥当性の検証、及び外国人カテゴリ間のMCICの差を検証した。 約460名の大学生を対象に、MCIC尺度に対して因子分析(主成分解・プロマックス回転)を行ったところ、予備調査と同質、同等と解釈可能な「I:融和的コミュニケーション(α=.90)」「II:日本文化・習慣の手引き(α=.90)」「III:異文化への共感的理解(α=.77)」と命名された3因子構造を得た。SEと異文化接触経験においては、全因子と有意な正の相関を得た。また、多文化共生態度のうち、統合/共生主義は、第I、III因子と正の、社会的距離は同因子と不の、同化主義は、第II因子と正の相関が認められ、ホスト市民のコンピテンスと共生社会に対する志向性の相互関連が示唆された。その結果、尺度項目に対して信頼性と一定の妥当性が示された。外国人カテゴリ間におけるMCICと社会的距離の差を検証した結果(一元配置分散分析)は、外国人の出身地が具体化された場合(多重比較:一般>欧米系、アジア>欧米>一般)、第II因子のMCICが低く、社会的距離が増加した。すなわち、カテゴリに対するステレオタイプの使用が示唆された。 次に愛知県で支援活動を行う30団体、約290名に対して調査を実施した結果(戻り率:約64%)、大学生に比べ全下位尺度得点は有意に高く、言語、交流イベント支援等の活動内容と支援外国人出身地間の有意差は、第II因子における中国籍以外に認められなかった。すなわち、共生社会に対する高い動機づけが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度と該当年度は予備調査の全尺度項目(2種類の調査、各66項目)に対して、性差、カテゴリ差の分析と検討を行った。その結果をもとに項目を取捨選択し、その後本調査を行ったため、本調査までの過程において予測されたエフォートを多く費やす結果となった。また、心理尺度作成において最も重要なプロセスの一つである妥当性の検証には、適切な外部基準を必要とするため、本調査に使用する外部基準の調整・統合にもエフォートを割くこととなった。 しかし、綿密な予備調査と適切な外部基準の設定によって、本調査では、一定の信頼性と妥当性を得た尺度開発の達成に至ることができたと考える。したがって、該当年度の対象者への調査・分析と同様に、今後の対象者への調査・分析は、比較的スムーズに実施できるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
MCIC尺度を用いて異なるフィールドへの調査を行う。その際、MCICの尺度・因子得点のフィールド間の検証とともに、各フィールドにおけるMCICに関連する要素を検証する。したがって、今後は、各フィールドに対応した適切なデモグラフィック項目と関連が予測される要素を検討し、項目化を行うこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
各フィールドへ調査用紙を配布する。まず、「一般市民」への配布と回収を郵送法にて行う。このフィールドへの調査は、H24年度に実施する計画であった。しかし、【現在までの達成度】の項に記載したとおり、本調査のためのMCIC尺度の精緻化と外部基準変数の検討作業に予測されるエフォートの多くを費やした結果、次年度使用額が発生した。したがって、該当するフィールドへの郵送には、主に「24年度の次年度使用額」を充てることとなる。次に、外国人従業員を雇用する企業へは郵送法と合わせて、留め置き法も検討する。したがって、翌年度と合せた研究費は、郵送/返送、及び配布/回収のために使用する計画である。 また、2013年8月17日~19日に行われる「日本教育心理学会 第55回大会(於:法政大学)」での発表申込が4月に受理されているため、大会の参加費として使用する。
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Research Products
(6 results)