2013 Fiscal Year Research-status Report
第二言語によるオーラルコミュニケーション遂行時の心理的ストレスとその対処方略
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23520658
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
野呂 徳治 弘前大学, 教育学部, 教授 (90344580)
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Keywords | コミュニケーション不安 / ストレス / オーラルコミュニケーション / 英語 / 第二言語習得 |
Research Abstract |
本研究は,第二言語としての英語によるオーラルコミュニケーション遂行時の心理的ストレスの影響及びそのメカニズムの解明並びにその対処方略の開発を目的とするものである。 研究3年目である平成25年度は,より実際的なコミュニケーション場面における心理的ストレスのメカニズムの解明を目指して,ある程度長期にわたって英語圏(英国)の大学に留学している日本人英語学習者を対象に,彼らが日常生活において感じているコミュニケーション不安に伴う心理的ストレスと彼らのコミュニケーションに対する意欲(willingness to communicate; WTC)が,それぞれどのような場面でどのように高まるのか,また,この両者は互いにどのような相互影響関係にあるのかについてインタビュー調査を行った。その結果,理解が不十分なままで発話を求められたり,コミュニケーション場面で自分の役割・位置づけが十分確立されないことで疎外感を感じるような場面では不安が高まると共にストレスが増し,WTCが低下するのに対し,学習者がそのコミュニケーション場面に対して強いコミットメントを有し,かつ,その場面で自分自身の存在意義を感じることができるような場合は,多少のコミュニケーション上の困難及びそれに伴う不安があっても,高いWTCが維持され,心理的ストレスも強くないことが明らかにされた。 また,不安による心理的ストレスとWTCが,より実践的なコミュニケーション場面での学習者の発話に具体的にどのような影響を与えているのかを明らかにするために英語圏(米国)における3週間のホームステイプログラムに参加した日本人大学生を調査協力者として行った調査で得られた言語データ並びにインタビューデータの一次分析の結果,不安とWTCが相互に影響し合いながら変動し,それが彼らの英語での言語使用に促進的または阻害的効果を与えている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では,研究2年目となる平成24年度に,より実際的なコミュニケーション場面における不安による心理的ストレスの影響を分析する予定であったが,初年度に予定していたオーラルコミュニケーション遂行時の心理的ストレスの概念構成が,調査協力者の不足のため予定通り進まず,研究2年目までずれこむこととなった。その結果,上述の分析のための調査を研究3年目である平成25年度に実施することとなった。また,当初はインターネット回線を利用したビデオ通話(Skype)によるテレビ会議によるデータ収集とその分析を行うことにしていたが,「より実際的なコミュニケーション場面」という条件を満たすために,テレビ会議という,言わば「ヴァーチャルな」コミュニケーションよりも,実際に英語圏で生活する中でコミュニケーションに従事する調査協力者を対象に調査を行うこととしたことも,研究の進捗状況が計画よりもやや遅れることとなった理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度にあたる平成26年度においては,平成25年度に実施した調査で得られたデータのより詳細な分析を基に,より実際的なコミュニケーション場面における心理的ストレスのメカニズムの解明に取り組むと共に,特に,ある程度長期にわたって英語圏に滞在している日本人英語学習者が,自らが経験している心理的ストレスに対してどのような対処方略を援用しているのかについてのインタビューデータの分析を通して,ストレス対処方略の発達プロセス並びにその規定要因を特定し,対処方略の基礎理論の構築に取り組む。その上で,第二言語(外国語)の教授・学習における具体的かつ指導可能なストレスマネジメントとしてのストレス対処方略の体系化に取り組むと共に,中学校,高等学校,大学等における指導実践事例を収集し,より実用的な観点からその具体的な応用の手順や留意点を検討し,適宜,必要な修正を加えながら,ストレス対処方略の実用化を図る。 さらに,研究成果を総合的にまとめ,国内・国際学会で発表すると共に,学会誌・学術雑誌等に論文を投稿し,研究成果を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究3年目である平成25年度は,ビデオ通話によるテレビ会議によるデータ収集とその分析のためテレビ会議システムを設置する予定であったが,研究目的により合致したデータ収集として,実際に英語圏(英国,米国)で生活する中でコミュニケーションに従事する調査協力者を対象に調査を行うこととしたため,その予算をデータ収集のためのICレコーダーの購入に充てたことにより差額が生じたことと,研究の遅れから詳細な分析については次年度に実施することにしたため,データ分析に必要な統計ソフトの購入予算を研究最終年度である平成26年度の予算として使用計画に組み込むことにしたことによるものである。 研究最終年度である平成26年度は,上述のデータ分析のための統計ソフト(IBM SPSSシリーズ)の購入経費を予算に組み入れると共に,ICレコーダー購入に伴いテレビ会議システムの設置費用の差額として生じた分については,データ分析にあたって,録音データの文字データへの書き起こしのための人件費に充てることとする。また,本来,予算計上していた研究成果のまとめとして学会誌・学術雑誌等に投稿する論文のネイティブスピーカーによる文章校正の謝金にも一部充てることとする。
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