2012 Fiscal Year Research-status Report
多言語・多文化に開かれたリテラシー教育についての研究:日本の言語教育への提言
Project/Area Number |
23520661
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
福田 浩子 茨城大学, 人文学部, 准教授 (60422177)
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Keywords | リテラシー / 言語教育 / スイス |
Research Abstract |
本研究の目的は、今後必要とされる「日本人」の日本語能力(国語能力)や英語をはじめとした外国語能力の養成のあり方、外国人居住者の増加による日本語教育や継承語教育のあり方等を視野に入れ、それらを言語教育という枠組みで捕えなおして、目指すべき「リテラシー」とは何か、日本の公教育でその「リテラシー」を身につけていくにはどの段階でどのようなことが必要なのか、ヨーロッパでの先進的な取り組みや理論を参考にしながら、日本の言語教育への提言をまとめることである。 2012年度は、文献研究ならびに、バーゼル、ジュネーヴ、ローザンヌ、チューリッヒにおいて授業視察、行政関係機関等の視察、専門家インタビューを行い、先進的な取り組みを調査した。具体的には、ジュネーヴ大学名誉教授、ジュネーヴ州憲法制定会議共同議長、EOLEの指導者であるChristiane Perregaux氏、ローザンヌ教育大学Carole-Ann Deschoux教員養成担当教授、バーゼル・シュタット準州政府開発局シュタット統合部・多様性と統合専門部局長Nicole von Jacobs氏、バーゼル・シュタット準州教育部教育センター学校部授業班ドイツ語専門員Esthter Ladner氏、同継承語専門員Silvia Bollhalder氏、バーゼル・シュタット準州教育部教育センター授業/教育部外国語専門員Ursina Fehr氏、北西スイス専門大学教育大学第一・第二教育課程研究所Giuseppe Manno教授、異文化コミュニケーション研究所(チューリッヒ)Claudio Nodari教授ほかと面談、現地の教員や関係者たちとも意見交換を行った。現地調査では、新たに教員養成の先進的取組も知ることができた。 このような現地調査と日本国内での状況の両面から言語教育の目的を再考し、今後「リテラシー」として何が求められるのか、議論を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度には、3.11の被災により研究への着手が遅れ、予定していた海外調査も調査先(スイス、バーゼル)の状況により行えなかったが、その後、現地の関係者たちと連絡を密に取り合い、2012年9月に海外調査を実施した。今回の調査では、バーゼルだけでなく、ジュネーヴ、ローザンヌ、チューリッヒでの調査を行い、成果を上げることができた。また、国内でも多言語・多文化にかかわるシンポジウムなどに参加し、先進的な実践活動についても情報を収集した。したがって、申請時の計画よりは遅れているものの、前回の実施状況報告書において「今後の推進方策」として考えていたことはほぼ実行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は、2012年度の調査を踏まえて、学会参加および補足的な調査や新たに調査してはどうかと思われる調査(台湾の言語教育の実施状況など)を必要に応じて実施しつつ、異文化間学会等で、これまでの成果を発表していく予定である。概念構築と小・中・高・大の段階別の教育概要についても、連携研究者、研究協力者等と議論を深めていき、できる限りまとめて、発表していきたい。 また、本研究自体は2013年度が最終年度となってしまうが、今回の研究の延長線上で今後さらなる研究を続けていけるよう、1.スイス調査を通じて新たに先進的な教員養成のプロジェクトが立ち上がっていることを知ったため、それを今後科研のテーマとして取り上げられるようにさらに調査する、2.これまでの科研の底流を流れていたLanguage Awareness(言語への気づき)/ELBE/EOLEについて、次年度以降、本の形でまとめて出版できるよう内容を考え、執筆候補者とのやり取りを行う、の2点についても、準備したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度は、研究の推進方策に書かれているように、補足的な調査や連携研究者、研究協力者との議論、学会参加、学会発表を念頭において、旅費を主に計上している。そのほかには、図書・資料を含む消耗品の購入にも研究費を充て、Web上で成果を発表するために必要に応じて人件費・謝金を使用することもありうる。
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Research Products
(11 results)