2011 Fiscal Year Research-status Report
英語コミュニケーションにおける言語・身体・情動・方略の総合的研究
Project/Area Number |
23520669
|
Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
泉 恵美子 京都教育大学, 教育学部, 教授 (10388382)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | コミュニケーション方略 / 身体性・ジェスチャー / 情動 / スピーキングタスク / 会話分析 |
Research Abstract |
本研究は、日本人英語学習者の英語を用いた異文化コミュニケーションにおける挫折や故障の現象や修復のメカニズムに注目し、個人の言語能力・情動・身体・方略の関係を考察し、日本人英語学習者がコミュニケーション能力を育成し、自信を持って外国人とコミュニケーションできるように指導し、評価するシステムを開発することを目的としたものである。 今年度は、先ず小学校外国語活動、中学校英語、高等学校外国語(英語)について学習指導要領を調査し、コミュニケ-ション能力や方略、ジェスチャーなどの記述を取り挙げ、特に定型表現(formulaic sequences)に注目しまとめた。並行して、コミュニケーション能力と方略、異文化間コミュニケーション、言語と身体性、非言語コミュニケーション、ジェスチャーの役割、情動と第二言語習得について、先行研究のまとめを行った。 次に、日本人大学生(英語力な中級から上級)に協力を依頼し、ペアでの会話(コミュニケーションタスクと故郷紹介)をビデオカメラとICレコーダーで録音し、会話を書き起こし、ジェスチャーなど非言語の特徴についても記載し、見られたジェスチャーを絵に描いた。また、タスク後インタビューを行い、うまく言えなかった点、ジェスチャーなどで気づいたことを聞き取った。それらのデータから日本人のコミュニケーションの特徴をまとめた。 さらに、日本人大学生(英語力な中級から上級)を対象に、コミュニケーション方略、挫折、情意、ジェスチャーなどについて質問紙調査を行い、結果をまとめた。多くの学生は、自分がコミュニケーションがうまく行かないと自信のなさを示しており、方略としてジェスチャーの有効性を強く述べている。 それらの成果を、3月にグラスゴーで開催されたIATEFLの年次大会で発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、英語を用いたコミュニケーションにおける挫折や故障の現象やメカニズムに注目し、会話を録画・分析したもの、並びに質問紙調査を通して、個人の言語能力・情動・身体・方略の関係から考察し、日本人英語学習者がコミュニケーション能力を育成し、自信を持って外国人とコミュニケーションできるように指導し、評価するシステムを開発することである。今年度は、ほぼ当初の計画通りに進んでおり、概ね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き研究を継続し、データ収集と分析を行うとともに、以下の方向に発展させる予定である。まず、習熟度の差・タスクの差による、方略の違いを調査する。異文化間コミュニケーションにおける挫折と修復手段に差は見られるのか、また、タスクによる差は見られるのかを、Oxford Proficiency Test, Versant English Testを用いて習熟度を調べ、ペア活動をさせ、その会話をビデオカメラ、音声媒体で録音する。次に会話を文字化し、つまずきの箇所を精査し、その後、インタビューを行うことで、原因と意図していた内容と、実際に行動の差について解明する。習熟度やタスクと言語・非言語・情意面からの方略使用の相関を見る。 また、日本人のコミュニケーションの特徴とCS使用をスピーキングコーパスThe COBUILD Projectや、アルクの日本人学習者の英語スピーキングコーパスやCHILDSを参考に、会話の問題箇所を拾い上げ、特徴を調べる。 それらを元に、スピーキングタスクや外国のスピーキングテストの評価例を参考にタスクのグレーディングの構成要素をまとめ、先の習熟度別の特徴を加味したCSのグレード別タスクを開発する。そして、スピーキングタスクの差によるCSの指導を行い、効果的なコミュニケーション方略を用いることでコミュニケーションが進むことを目指す。 最後に、コミュニケーション方略を言語・身体性・情意面から成果を集約・総括し、コミュニケーションの挫折、修復のための方略、タスク開発、指導と評価の点から研究成果をまとめ、学会発表を行うとともに、投稿論文としてまとめる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、韓国・台湾における英語学習者を対象に、質問紙法によるコミュニケーションへの意識、挫折の原因、CS使用について調査を実施し、日本人との比較する予定であったが、依頼・実施が諸事情により今年度中にできなかった。 また、心理言語学・脳科学的観点から実験室で、アイカメラや多角カメラを用いて実験を行う予定であったが、別の形で実験を行ったため予定を変更した。 そこで、可能であればこれらを24年度に実施したい考えており、研究費を次年度に使用する予定である。
|
Research Products
(4 results)