2011 Fiscal Year Research-status Report
人物を通して見る近代日本における朝鮮語教育史の多元的・実証的研究
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23520671
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
植田 晃次 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (90291450)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 謙一 熊本学園大学, 外国語学部, 教授 (00271453)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 朝鮮語教育史 / 朝鮮語学習書 / 旧朝鮮語学 / 人物史主義 / 原物主義 / 朝鮮語学 / 朝鮮語 / 韓国語学 |
Research Abstract |
初年度である2011年度の課題について以下の成果を得た。 1.研究代表者が都道府県立図書館蔵の当該学習書の現地調査をさらに行い、書誌学的基礎データを拡充・正確化して充実させた。加えて、韓国・台湾の機関所蔵の学習書の一部についても現地調査により正確な書誌が明らかになった。デジタル化資料や復刻版に依らず、可能な限り原物を手にして確認するという「原物主義」に基づく研究である点が重要である。 2.人物分析の基準作成の基礎研究として、研究代表者が社会言語学・朝鮮語教育史に基づきその生涯を通じて人物を見る人物史の観点から、研究協力者が言語学・朝鮮語学に基づきその人物が朝鮮語を言語学的に如何に捉えたかという朝鮮語観の観点から研究を進め、多元的・実証的に調査・分析を進めた。具体的な主要成果は以下の通りである。(1)対象となる学習書著者のうち、前間恭作・赤峰瀬一郎・伊藤伊吉・島井浩等の典型的人物につき、両研究者それぞれの観点から考究した。(2)19世紀末の「旧朝鮮語学」と呼び得る概念につき提唱し、その内容を明らかにした。(3)日本人の学習書著者に影響を与えたと考えられる周時経等の朝鮮人の著作について分析を行った。(4)朝鮮総督府編纂『朝鮮語辞典』の異本について新たな発見があった。(5)植民地朝鮮で朝鮮語を学んだ元警察官にインタビューを行い、その実態の一端が明らかになった。「人物史主義」により描き出された人物史とその人物の生み出した著作を多元的・実証的に考究するという、先行研究にはない観点と方法論に立脚している点が意義深い。 なお、それぞれの研究成果は主として4回開催した研究会で相互に発表・検討し、その一部については国際的な学会で発表した(国内1件・国外2件)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.研究の基礎作業として、都道府県立図書館蔵の当該学習書の「原物主義」に基づく現地調査をさらに行い、書誌学的基礎データを拡充・正確化・充実化した。その結果、若干の未調査と要追調査部分があるものの、おおむね完成に至った。加えて、韓国・台湾の機関所蔵の学習書の一部についても現地調査により補充した点は計画以上の進展である。 2.学習書著者の人物史と朝鮮語観の解明の基礎として、1910年までに主として活動した人物のうち、典型的人物について基準作成の基礎研究を行い、未検討・研究途上の対象があるものの、おおむね計画を達成した。 3.この他、19世紀末の「旧朝鮮語学」という概念、日本人学習書著者に影響を与えた朝鮮人の著作、朝鮮総督府編纂の『朝鮮語辞典』の異本、植民地朝鮮の警察官の朝鮮語学習について研究を行い、計画以上の進展を見た。 学習書著者の経歴やその人物が如何に朝鮮語を捉えて記述したのかという朝鮮語観を明確にするためには、断片的なものも含めて史資料を収集・照合し、それを丹念に読み解き、複雑な要素を一つ一つ解きほぐして検討する作業が必要である。そのために、さらに詳細な研究が必要である。 以上を総合すれば、おおむね順調に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、1910年以前に主として活動した人物のうち、未検討、もしくは研究途上の人物に対する分析を進める。これらの人物については、すでに研究を行った典型的人物のように史資料が比較的多く残されていない場合がある。そのため、個々の人物の人物史という軸に加え、それらを類型化する方途を検討する。 次に、この成果を踏まえ、1910年~1924年に主として活動した人物について、研究代表者が社会言語学・朝鮮語教育史に基づき人物史の観点から、研究協力者が言語学・朝鮮語学に基づき朝鮮語観の観点から研究を行い、多元的・実証的に調査・分析を進める。 さらには、1924年~1945年に主として活動した人物について、同様に調査・分析を進める。 これらと並行して、書誌学的基礎データの一層の拡充・正確化・充実を図る。 以上を総合し、実証的方法に依り、人物を通して近代日本の朝鮮語教育史を人物史と朝鮮語観の両面から多元的に明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2011年度同様に研究代表者・研究協力者がそれぞれの観点で行った研究成果の検討のため研究会を開催する。 また、関連学会で研究成果の一部を発表する予定である。 さらに、書誌学的基礎データの一層の拡充・正確化・充実のための資料収集・現地調査を行う。 加えて、2013年度に本研究の成果を取りまとめるための基礎作業を行う。
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Research Products
(3 results)