2012 Fiscal Year Research-status Report
人物を通して見る近代日本における朝鮮語教育史の多元的・実証的研究
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23520671
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
植田 晃次 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (90291450)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 謙一 熊本学園大学, 外国語学部, 教授 (00271453)
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Keywords | 朝鮮語教育史 / 朝鮮語学習書 / 旧朝鮮語学 / 人物史主義 / 原物主義 / 朝鮮語学 / 朝鮮語 / 韓国語学 |
Research Abstract |
第2年度である2012年度の課題について以下の成果を得た。 1.研究代表者が都道府県立・政令指定都市立図書館蔵の当該学習書の現地調査をさらに行い、書誌学的基礎データを拡充・正確化して充実させた。加えて、国内外のその他機関蔵の学習書の一部についても現地調査に依って正確な書誌が明らかになった。デジタル化資料や復刻版に依らず、可能な限り原物を手にして確認するという「原物主義」に基づく研究である点が重要である。 2.人物分析の基準作成の基礎として、研究代表者は社会言語学・朝鮮語教育史に基づき、その生涯を通じて人物を見る「人物史主義」の観点から、研究協力者は言語学・朝鮮語学に基づき、その人物が朝鮮語を言語学的に如何に捉えたかという朝鮮語観の観点から初年度に成した研究結果の一部を公開するとともに、研究をさらに進め、多元的・実証的に調査・分析を深めた。具体的な主要成果は以下の通りである。(1)「人物史主義」に依り、対象となる学習書著者のうち、伊藤伊吉の経歴・著書について、先行研究を凌駕する詳細な解明・考察を行った。(2)朝鮮総督府『朝鮮語辞典』の書誌学的様相を解明した。(3)小野綱方・高橋亨等について、朝鮮語観の観点から考察した。(4)本研究が提示した「旧朝鮮語学」・「朝鮮文」という新たな概念を精密化・体系化した。(5)同時代の西洋人による朝鮮語学習書および著者について研究を行った。 3.本研究を総合する理論的枠組について、検討を本格化させた。 なお、それぞれの研究成果は5回開催した研究会で相互に発表・検討し、その一部については国内の国際的な学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.研究の基礎作業として、都道府県立・政令指定都市立図書館蔵の当該学習書の「原物主義」に基づく現地調査をさらに行い、書誌学的基礎データを拡充・正確化・充実化した。その結果、数館の未調査と要追調査部分があるものの、ほぼ完成に至った。加えて、国内外の他機関蔵の学習書の一部についても現地調査に依り補充し得た点は計画以上の進展である。 2.学習書著者の人物史と朝鮮語観解明の基礎として、典型的人物の人物史および朝鮮語観研究について、1910年までに主として活動した人物についてはおおむね計画を達成した。1910年以降に主として活動した人物については未検討・研究途上の部分があるが、これは下掲3・4の検討を優先すべきであると判断したためである。 3.同時代の西洋人による朝鮮語学習書および著者についての調査・分析を行った点で計画以上の進展を見た。 4.本研究を総合する理論的枠組の検討を開始した点で計画以上の進展を見た。 以上を総合すれば、おおむね順調に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、1910年以前に主として活動した人物のうち、未検討・検討途上の人物に対する分析を進める。 次に、本研究を総合する理論的枠組について検討を深め、体系化を試みる。 さらに、1910年以降に主として活動した人物について、研究代表者は社会言語学・朝鮮語教育史に基づき人物史の観点から、研究協力者は言語学・朝鮮語学に基づき朝鮮語観の観点から研究を行い、多元的・実証的に調査・分析を進める。 これらと並行して、書誌学的基礎データの一層の拡充・正確化・充実を図る。 以上を総合し、実証的方法により、人物を通して近代日本の朝鮮語教育史の様相を人物史と朝鮮語観の両面から多元的に明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度同様に研究代表者・研究協力者がそれぞれの観点で行った研究成果を検討するため研究会を開催する。 また、関連学会で研究成果の一部を発表する予定である。 さらに、書誌学的基礎データの一層の拡充・正確化・充実のための資料収集・現地調査を行う。 加えて本研究の成果を取りまとめる。
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