2012 Fiscal Year Research-status Report
第二言語の発達過程および処理可能性による中国語の文法項目導入順序の基準構築
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23520683
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Research Institution | Kushiro Public University of Economics |
Principal Investigator |
鈴木 慶夏 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (80404797)
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Keywords | 第二言語 / 中国語 / 文法項目導入順序 / 処理可能性理論 / 中間言語 / 発達過程 / 中間言語と発達過程の類型論的特徴 |
Research Abstract |
第二言語としての中国語教育において、文法項目導入順序の基準を提示することを主目的に、本研究課題遂行者がこれまで行ってきた研究を拡大かつ深化させた。 前年度に論文発表した経時的観察に基づく研究内容「学習者が産出した中間言語における〈場所をあらわす前置詞句〉〈時間をあらわす語句〉の統語構造と統語配置」に関して、その理論的意義を整序するため、今年度はさらに項目別に分析を加えて、〈場所をあらわす前置詞句〉については6月に浙江大学(中国杭州)にて、〈時間をあらわす語句〉については8月に台湾師範大学(台湾台北)にて、教育上の問題点を文法項目の導入順序という側面から、海外の中国語研究者・中国語教育従事者に向けて公開した。これにより、本課題が分析対象とした現象が日本語を第一言語とする中国語学習者だけの問題ではない点を共有できた。 そして、学習者の第二言語の発達過程および中国語教育における課題について、言語類型論と処理可能性理論とを関連づけながら分析・考察を行った。その分析内容・考察結果の一部を、10月に江蘇師範大学(中国徐州)からの招聘に応じ発表した。この後、本研究課題が言語類型論と第二言語習得研究において将来的な発展性をもちうるように、従来の分析に見られる方法論および理論的意義に焦点をあて、CASLAR (Chinese as Second Language Research)に Syntactic Positioning on Time and Space Categories in L2 Chinese というタイトルで論文を投稿した(現在査読審査中)。 また、以上の観察内容と考察結果を、教育現場における実践的意義に照らしながら、教育工学的視点からバックワードデザインの応用方法として論文を発表した(現在印刷中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初分析対象にする予定であった“把”構文とは異なる項目(時間をあらわす語句が生起する構文・場所をあらわす前置詞句が生起する構文)に対する研究結果について、理論的・実践的意義を有する考察を展開できた。当初計画していた文法項目に関しては未だ具体的な分析を開始していないものの、予想していた方向性とは異なる視座から学習者の中間言語と発達過程の類型論的特徴を整理できた。本来の計画とは異なる方向から、本来の計画どおりの目的地に向かっているという状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、ベルギー Universiteit Gentにて開催された処理可能性理論の研究者が集まる国際シンポジウムに出席し討議に参加したことで、本研究課題に対する当該理論の適用可能範囲ならびに不足する部分を具体的に把握することができた。この点を踏まえ、今年度は、当該理論の不足点を類型論的見地・中国語学的見地および中国語教育の実践的側面から修正できる部分は修正し、強化できる部分は強化することをねらう。これまでの研究成果と突き合わせを行いながら、中国語学習者の中間言語についての認識を深化させ、本研究課題が今後進展する方向および方針を定める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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