2013 Fiscal Year Research-status Report
ピアフィードバックを用いた英語ライティング指導のための基礎研究
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23520685
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
広瀬 恵子 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (40145719)
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Keywords | ピアフィードバック / ライティング / 英作文指導 / 英語 |
Research Abstract |
本研究は、日本人大学生が英作文を互いに読んでピア同士でフィードバックをしあう経験をすることにより、英語ライティング力、英語ライティングに対する態度、動機づけが変わるのかどうか、多角的な観点から調べるものである。英語で書いた経験が比較的乏しい大学生を対象に、ピアフィードバックを用いた英語ライティング指導を短期間行ってその効果を調べた結果、学生は総じて、英語による書面及び口頭でのピアフィードバック活動に肯定的であり、ピアフィードバックによって英語で書くことに対して動機づけられて英文を書く経験を積んだ一方で、自らの英語ライティング力に自信を持つまでには至らないことがわかった。 平成25年度は、ピアフィードバックを経験することにより学生の英語ライティング力が変わるのか、伸びがみられる場合はどのような点でみられるのかについて調べた。具体的には、1セメスターの間ペアによるピアフィードバックを行った4クラス4群の大学生が、指導前後に書いた英作文を、複数の外部評価者が採点した評価点に加えて、(1) 延べ語数、異語数、語彙の多様性、(2)文、節、T-units等の数、(3)文、節、T-unit の長さ等の点から分析・比較した。その結果、指導前に英文を書いた経験が一番少なかった群は、量的な尺度の延べ語数、異語数、文・節・T-unit 当たりの語数等が、指導後有意に増加し、質的評価点も有意に上昇した。他方で、過去英文を書いた経験が一番豊富だった群では、指導前後の作文に量的な尺度では有意差は全くみられなかったが、指導後作文の評点は有意に上昇した。書いた経験が中間の残りの2群は、量的には指導後増加したが、有意差はなかった。作文の評点は、両群が指導後高くなったが、有意差があったのは1群だけだった。量的及び質的分析の結果、このように群により異なるが、指導後作文にそれぞれ伸びがみられることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
主として英作文データの量的分析作業の遅れにより、全体の研究計画に遅れが生じてしまった。補助研究者の作業の遅れのため、比較分析のための基礎データが揃ったのが平成25年度になってからであった(当初の計画では24年度内終了の予定であった)。しかし1年間の補助事業期間延長が認められたため、26年度中に本研究を終結させる予定である。 現在までの研究の結果、ピアフィードバックを用いた短期間の英語ライティング指導の効果は、学生の英語ライティングに対する態度や動機づけにおいてだけではなく、英語ライティング力においてもみられることが明らかになった。 平成25年度には、平成24年度に口頭発表した研究の論文を完成させた(1編)。これは、指導後書いた英作文に質的に顕著な伸びがみられたクラス(4群中の1群)の学生が、12回のピアフィードバック活動中書いた英文フィードバックと口頭でのフィードバックのやりとりを分析したものである。さらに、平成25年度に行った本研究の成果(ピアフィードバックを取り入れた英語ライティング指導が学習者の英語ライティング力に与えた効果に関する分析結果)を学会で口頭発表した(2編)。口頭発表に基づき、現在論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究では、ピアフィードバックを取り入れた英語ライティング指導効果をクラス単位の群で調べてきたが、今後は個人差に注目し、特に指導後作文評価点(質)が顕著に向上した学生と指導後作文の量が著しく増加した学生を選び、彼らが毎週宿題で書いたピアフィードバックで用いた英作文及び授業中にピアの英作文を読んで書いた英文フィードバック(1名当たり、英作文とフィードバックそれぞれ約12編)を分析し、何か共通点があるかどうかを調べる予定である。 この分析結果を基に、ピアフィードバックを指導に取り入れる際の教師の役割を考えた上で、英語ライティングの指導方法や手順を決める予定である。その後、申請当初は、実際この指導方法を継続的に試行してその効果を検証する予定であったが、研究期間内に実施できる研究協力者及びライティングのクラスがみつからなかったため、この計画は断念せざるを得なくなった。 最後に、本研究の総括を行い、英語ライティング力発達指標の信頼性・妥当性を検討するとともに、本研究結果を基に、ピアフィードバックを利用した英語ライティング指導のあり方をさらに検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請書作成時点では、平成25年度に研究結果を総括し、国内外の関係する学会で口頭発表し、それに基づき論文にまとめる計画であった。しかし、平成23、24年度の研究が計画通り進まなかったため、遅れが生じた。研究の遅延により、平成25年に開催される国外の学会で発表するための事前発表申し込みをすることができなかった。平成25年度に国外の学会で研究発表ができなかったために、特に国外旅費の未使用額が生じるにいたった。 平成25年度に、次年度26年度にオーストラリアで開催される国際応用言語学会において、本研究結果の1部を発表するために論文概要を提出し、受理された。未使用額は、この成果発表のための経費に充てる。さらに、この発表内容をもとに英文の論文を執筆する予定である(英文校閲のための謝金必要)。さらに、26年度計画している研究を引き続き行い、最後に本研究を総括し、研究成果を発表するために未使用額を使う予定である。
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