2011 Fiscal Year Research-status Report
電子書籍を利用した新しい語彙学習の検証:付随的学習と意図的学習の融合
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23520691
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
吉井 誠 熊本県立大学, 文学部, 教授 (70240231)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
本研究では主に二つの目的を持って研究に取り組んでいる。1)電子媒体による読解に着目し、読みながら語彙を学ぶこと(付随的語彙学習)を促し補助する、意図的な学習方法について検証する、2)読解語彙学習補助プログラムを開発し、読解前・読解中・読解後にどのようなタスクを課すことが効果的なのか検証する。平成23年度は以下のような4つの研究計画を立て、H24年度からの本実験に向けて準備を行なった。1)意図的・付随的学習、タスクの役割と効果に関する文献研究を行い、研究を支える理論構築に着手する、2)読解前・読解中・読解後に実施できる具体的なタスクを考案する、3)上記のタスクを導入した読解プログラムを開発する、4)予備実験を実施する。 上記の計画における実施状況と研究の成果は以下の通りである。1)文献研究を行い、研究テーマに関連する研究論文・研究書等を収集し、論点の整理を行った。第二言語習得研究はもとより幅広い視点から考察し、学習における認知負荷のバランスという視点をKeywordの一つとして取り上げた。2)読解における語彙学習を促す具体的なタスクを考案した。読解前タスクとしてテキストに出現する難解な単語をチェックするタスク、読解中のタスクとして難解な語彙に付けられた注を検索するタスク、読解後のタスクとして単語復習テストを考案した。3)プログラムの完成には至らなかったが、代わりにMoodleの既存の機能を利用して読解活動を実施した。4)平成23年度後半で予備実験を実施した。 予備実験で読解中のタスクの検証を行なったが、通常の注(意味が一つだけ提示される)に加えて複数の意味が選択肢として提示される注の効果について比較検証を行なった。これまでの先行研究とは異なる結果となり、今後の研究の必要性・重要性を示唆するものとなった。結果をまとめ、平成24年3月に英国で開催された語彙研究学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの活動で次のようなことが達成し成果を収めた。文献研究を行い資料収集と論点の整理を行い、認知的負荷という観点から研究の全体像を概観した。本研究の理論的な基礎作りとなった。読解における語彙学習を促す具体的なタスクを考案したことで、本実験に向けての具体的な準備に入ることができた。Moodleの既存の機能を利用して平成23年度後半に予備実験を実施した結果、注の効果について比較検証においては、これまでの先行研究とは異なる結果となり、今後の研究の必要性・重要性が示唆されたことも成果となった。結果をまとめて3月にイギリスで開催された語彙研究の学会で発表を行うこともできた。ただし、読解語彙学習補助プログラム開発では、やや遅れが生じている。二つの理由が挙げられる。一つは当研究者の計画実施時期の計算ミスである。研究開始当初にプログラミングに従事してもらえる研究者、協力者を勤務校内外であたってみたが、なかなか見つからず、最終的に二人の研究協力者を確保するまでに予想以上に時間がかかってしまった。これは当研究者のミスであり責任を感じている。もう一つは、協力者との連携における時間調整の難しさである。それぞれ異なる大学に所属する研究者と連携し、共同研究という形で次の2方向から開発を進めている。一つはMoodle上に新しい機能を追加する形で進める方向と、Moodleを介せず、Google App Engineを利用する方向である。後者においてはオンライン辞書と連携させ、クリックすると辞書項目が表示されるものを考案し、プログラミングを依頼している。専門家のスケジュールとの調整が難しく、プログラミングの進捗状況を把握しながら研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、プログラムのプロトタイプの完成を目指して取り組んでいきたい。それぞれの協力研究者との連携を深め、必要に応じてMeetingを行い意見交換しながらプログラム作成に取り組んで行く予定である。これまで主にメール等のやり取りで意見交換してきたが、今後は研究協力者と実際に会って話し合う打ち合わせを定期的に行なっていきたい。研究協力者と話し合いながら、研究開発・研究実施に必要な機器の購入を予定していたが、プロトタイプの完成には至らなかったため、平成23年度はこれらの予算が執行されず、平成24年度での執行に持ち越しとなった。今後は、Moodleを基盤としたプログラムでは、プロトタイプを平成24年度前半に完成させる予定である。現在、検索した単語のリストが読解後に表示される機能を開発中であり、学習者は検索した単語の意味を再度確認できるようになる。Pretestの機能を含めたプログラムの開発も依頼している。読解前に難解な単語のリストが学習者に提示され、学習者はそれぞれの単語を知っているかどうか答える。知らない単語のみが注つきの単語として表示される。完成後は予備実験を行う予定であり、10月からの本実験に向けて随時プログラムの修正、研究デザインの改良にあたる。Google App Engineの機能を用いた読解教材開発も引く続き行い、プロトタイプの早い時期の完成を目指す。こちらも完成後に予備実験を実施する予定である。平成24年度後期に実施予定の本実験に向けて教材選択・研究デザインの改良等、準備を進めていく。また、理論構築も同時に行い、文献研究と予備実験の結果等をもとに検証を重ねていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の推進方策をもとに次年度の研究費を以下のような項目のために使用する計画である。研究協力者との打ち合わせのための旅行費、特に、東京在住の協力者との打ち合わせに必要な旅費、2)研究開発・研究実施に必要な機器の購入費、特に、サーバの購入がメインであり、クラウドサービスやレンタルサービスも視野に入れながら購入を考える、3)その他実験に必要な物品費、4)これまでの研究の成果を学会で発表するため、学会参加に必要な経費、国内・海外で一回ずつ発表を行う予定にしている、5)文献研究を進めていくための資料、研究書などの購入費、6)人件費・謝礼・その他、文献資料の整理・実験データ整理を補助する者を確保する、また、研究協力者に対して、その専門的な知見・技術の提供に対して適切な謝礼を行う。
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