2011 Fiscal Year Research-status Report
英語多読長期継続の質的・量的研究ー読了語数の観点から
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23520695
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Research Institution | Heisei International University |
Principal Investigator |
神田 みなみ 平成国際大学, 法学部, 教授 (20327125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高瀬 敦子 近畿大学, 法学部, 講師 (60454633)
西澤 一 豊田工業高等専門学校, 電気・電子システム工学科, 教授 (40249800)
黛 道子 順天堂大学, 医療看護学部, 准教授 (30331391)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 多読 / 英語教育 / リーディング / TOEIC |
Research Abstract |
本研究は、読了語数の観点から、英語多読を1年以上にわたり長期継続する学習者の縦断的調査を行う。環境的要因ならびに学習者の個人差要因が、読了語数の伸びとどのように影響しあうかを、質的・量的研究手法を用いて明らかにすることが目的である。 2011年度は、予備的研究として、1.学生の英語力と1年間の多読との関係(高瀬、神田、黛)、2.多読長期継続した場合の読了語数と英語力向上の関係(西澤、黛、神田)、3.読了語数と冊数のデータの検討(神田)の3点について分析を試みた。 1.高瀬は、学生間の英語力の差が大きいクラスと、習熟度別編成で多読指導を行った結果を分析した。殆どの学生が読書量と英語力テスト(TOEIC, EPER)の伸びを示したが、その伸び率には個人差があった。最も伸びが大きかったのは中位のクラスの学生であった。神田も同様に、1年間の多読量は必ずしも当初の英語力テストとは関係が無いという結果を得た。黛は、数種類のドラマCDを利用して、アウトプットの機会も持たせた結果、情緒面の効果は大であった。さらにデータの蓄積と分析を行なう予定である。 2.西澤は、高専生が3年間多読を継続した結果を定量的に評価した。TOEICで測定した学生の英語運用能力は総読書量に依存し、本科3年で平均380点には、60万語程度の読書量が必要であることが分かった。数十万語の多読では、なかなか実感しにくいが、100万語に近い読了語数になると効果を実感できる。一方、黛は、多読2年目の学生の場合、限られた多読時間で読了語数の伸びは少なくとも、読んだ本のレベルは1年次よりも上がる傾向があるという結果を得た。 3.神田は読了語数と冊数の読書記録と読書レベルの記録の分析方法について検討を行った。冊数は読書レベルを反映しないが、読了語数の伸びは読書レベルの伸びと一致する場合が多いことが分った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者と研究分担者、合わせて4名の多読授業において、学習者が読んだ本の「タイトル」「シリーズ名(とレベル)」「総語数」「本の簡単な感想」を毎回書かせており、読了語数のデータの蓄積は順調に進んだ。本研究では、語数が基本データとなり、読了語数との関連を質的データと量的データの両方について考察の上、分析を行うため、データ収集が重要であった。そのため、学習者の読了語数等の追跡調査については、1年間と複数年のデータを収集しただけでなく、英語力テストとの関係についての予備的分析までを初年度に行なえたことが大きな成果であったと言える。具体的には、1.学生の英語力と1年間の多読との関係(高瀬、神田、黛)、2.多読長期継続した場合の読了語数と英語力向上の関係(西澤、黛、神田)、3.読了語数と冊数のデータの検討(神田)の3点について分析を試みた。1年間の多読については、傾向的なことよりも学生の個人差が多いという結果を得て、その具体的な要因については今後の研究の課題である。複数年については、数十万語の読了語数では大きな成果はあまり見られないとする結果と、継続することで読書レベルが上がるとする、異なった結果が得られたので、さらに調査と分析を行なうという今後の方針を定めることが出来た。本研究の方向性を絞ることは、当初、2年目の途中を考えていたが、初年度で始めることができた。他方、当初の研究計画に記していた学習者の多読に対する意識、英語学習意欲などの個人差要因を中心としたアンケートは実施出来なかった。これは2年目の課題となる。本研究の成果発表としては、論文6本、発表21件と、当初の予定以上の充分な数であった。以上、計画通りに実施できなかったこともあったが、全体としては当初計画以上に研究分析を進めることができたので、順調であったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の2012年度は、1.学習者の読了語数等の追跡調査(神田、西澤、黛、高瀬)、2.多読データの量的分析(神田、西澤、高瀬)、3.質的データの記述と分析(神田、黛)、4.多読環境の充実、5.学会発表、論文発表(神田、西澤、黛、高瀬)を行なう。高瀬は研究分担者から研究協力者に変更となる。1.学習者の読了語数等の追跡調査をさらに続ける。初年度同様、授業内で「タイトル」「シリーズ名(とレベル)」「総語数」「本の簡単な感想」を毎回書かせて、データを収集する。1年経過したところで、過去のデータと積み重ねて、予備調査の分析を開始する。これは質的研究分析ともつながり、質的研究の分析対象者をしぼることと、質的研究分析対象とする多読推進・停滞要因を選ぶという二つの目的を兼ねている。2.統計的手法を用いて、複数年の多読のデータ分析を行なう。昨年度のデータと積み重ねて、予備調査の分析をさらに信頼性の高いものにする必要がある。やや異なる結果を初年度は得たが、その要因が多読環境にあるのか、読了語数の違いにあるのかの検討分析を行ないたい。これは質的研究分析ともつながり、質的研究の分析対象者をしぼることと、質的研究分析対象とする多読推進・停滞要因を選ぶという二つの目的を兼ねている。3.質的データの記述と分析については、量的データを補うためにも、また見過ごされがちな知見を得るためにも、個別の学生の多読の記録、観察記録を続ける予定である。その際に、アンケート調査が必要となれば、実施することとする。4.効果的な多読授業のために、多読環境の充実をめざし、多読教材、音声教材の整備、情報交換を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2年目の2012年度は、英語教育、応用言語学および教育心理学関係の研究図書に加えて、多読環境の充実のために、多読用図書教材(本、CD、DVD等)を購入する。また、データの量的分析とアンケート調査に必要な、統計ソフトウエア、アンケート読み取りソフトも新規に必要となる。そのためにスキャナやパソコンの更新も検討している。また、学会発表や研究打合せのための旅費も、昨年度同様支出予定である。
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