2012 Fiscal Year Research-status Report
バイリンガリズムを基盤とする言語教育の研究―CALPの育成をめざして
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23520699
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
平井 清子 北里大学, 一般教育部, 准教授 (60306652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 秀夫 目白大学, 外国語学部, 教授 (90091389)
鈴木 広子 東海大学, 教育研究所, 教授 (50191789)
河野 円 星薬科大学, 薬学部, 教授 (20328925)
臼井 芳子 獨協大学, 国際教養学部, 准教授 (40296794)
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Keywords | バイリンガリズム / CBI / CLIL / CALP / コミュニケーション / 教員からの発問 / 英語教育 / 第二言語習得 |
Research Abstract |
海外実態調査 1)アジア諸国の英語教育 台湾の高等学校英語教科書の特徴を知るため、国立台湾師範大学図書館と台北市国立編鐸館で資料収集、職員との面談を行った(2013年2月)。教科書には論理的思考を問う発問が認められ、CBIへの新しい視点が見出された。2) 米国:CALLAのカリキュラムを実施しているESLの教室研究コネチカット州の高等学校でCBIによる米史、文学の授業を中心に参与観察、教員・日本人生徒に面談をした。バランスのとれた教室活動と教員の発問は生徒の思考力に働きかけるものであった。また、CALPを育む読解指導の在り方を探るため、過去5年間の米国の第二言語教育の学術雑誌の論文の研究方法を総括的に分析し、米国では心理学や社会学など他分野に繋がる質的研究が主流であることを明らかにした。3)豪州の言語教育 シドニーにおけるスキャフォルディングの取り組みの調査をした(2013年2月)。教員の自主性の重要性と、現場での定着の難しさを再確認した。4) 欧州学校の分析 スペイン・マドリードでのCLIL実践(2012年9月)の取り組みを調査した。またフィンランドの大学入学試験を通して、英語学習者を対象に、発問との関係において議論した。 国内調査と分析 5)CALPを伸長する英語教育分析(国内) 「第二言語で考える」をテーマにバイリンガル幼児の言語発達における認知の発達との関連を実証的に調査した。6)小学校高学年から大学までの授業の分析 「考える力」を育成する教育環境構築のため、教員の視点の移動について分析を行い、教師が学習者の視点に立つことの難しさについて考察した。中学校の教科書分析を行い、アンダーソンのフレームワークに基づく枠組みを策定し、6社の教科書を調査し、CALPを育てる発問と活動について分析した。 外国語教育メディア学会では日本の中学校英語教科書分析の中間報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、内容重視の教授法(Content-Based Instruction:以下CBI)や CLIL(Content & Language Integrated Learning)及びイマージョン教育の実践例を分析し、日本の英語教育が効果的に応用・展開するには、言語・知識・思考の関係性についてどのような発想の転換が必要かを明らかにし、具体的な授業・教材設計の基盤となるモデルを提案することである。本年度はとくに、CBI、CLILという観点から、教室・教材・カリキュラム研究を行うことであった。 本年度は、2年目であることから分析フレームワークの確定と海外視察研究を重視した。まずフレームワークについては、PISAやCLILの概念的枠組みの研究を行い、ブルームのタキソノミーを用いて1社の教科書についてパイロットスタディーを行った。その結果を基にブルームの改訂版であるアンダーソンのタキソノミーを本格的な調査に使用することを決定した。すなわち、それを用いて新学習指導要領に則った中学英語教科書6種の教科書分析を行った。一方、それぞれが海外に赴き、アジア諸国(台湾)での教科書、カリキュラム研究、アメリカのESLにおけるCBIの実践例と文献研究、オーストラリア、ヨーロッパ諸国(フィンランド・スペイン)においての、カリキュラム・大学入試問題研究、CLILの実践例とそれに関わる教員養成の実態を観察分析することができた。さらに、国内でのCBIの実践例から日本での現状を把握し、それに関わる教師や教材の研究がなされた。以上により、本年度の計画予定をおおむね遂行することができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、まず、海外視察研究としては、1)アジア、北米、豪州、ヨーロッパの英語教育、言語教育の実態調査 を以下の観点で行うことを予定している。①第一、第二回の現地調査の結果とその後の分析を踏まえ、問題点を明らかにし、補足調査課題・フィールドワークでするべき課題を検討する。それに基づき、補足調査を行う。②平成23年、24年度の調査結果、さらに25年度に予定している調査から得た結果を、CALP、メタ認知、言語環境や要因の観点から分析する。これらの分析結果を踏まえ、CBIを日本の英語教育の中で生かすため、特に生徒の言語力と、学習カリキュラム、サポート・システムについて教育モデル(シラバス、授業設計、教材モデル)を提案する。 国内の教室研究としては、 2)小学校高学年から大学2年までの授業分析について以下の観点で行うことを予定している。①過去2年間に研究をすすめるプロセスにおいて、新学習指導要領に則った平成24年度から使用の中学校英語教科書の調査分析は、現在の日本の英語教育の現状をつかみ、教材を考察する上で必須のものと判断し、新たに、研究項目に加えた。平成23年、24年度の海外視察の分析結果および、国内のCBI成功例の分析結果、そして、教科書分析結果を基に、英語の高いコミュニケーション能力を育成するために必要なカリキュラム、教材、言語活動、教員の役割、サポート・システムを明らかにしていく。高等学校1年生で平成25年度から使用される英語教科書における、CALPの伸長についての調査を計画している。 実証研究としては、3)海外の視察調査分析、国内の教室研究の調査分析結果を踏まえ、具体的な授業・教材設計の基盤となる教育モデルを提案し、試行授業の実践およびその教室分析を行い、実証的に検証する。 さらに、研究成果の発表を、国内外の学会で口頭発表し、学会誌に論文を投稿する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は研究計画最終年になるので、一昨年、昨年時に行った文献研究と海外視察研究を基に現在までの海外調査の問題点を明らかにし、補足調査課題・フィールドワークで行うべき課題を検討する。それに従い、補足調査を行う。したがって、海外渡航費として使われる額が増えることが見込まれる。また、国内の視察調査のための費用、さらには、国内外での研究発表のための費用などもその内訳としては計画されている。また、日本語CEFRやCLIL、CBIに関して最新の研究や実践を行っている研究者・教育者を招へいしてシンポジウムやワークショップを行う計画をしており、その費用支出が見込まれる。さらに本研究をまとめ、出版するための費用も予定している。 そのほかは、昨年度に引き続き、文献購入費が予定されている。これは、国内の教科書研究を引き続きおこなうために、中学校と高等学校の英語教科書を購入するので、そのための費用が中心なることが見込まれる。
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Research Products
(9 results)