2012 Fiscal Year Research-status Report
現役教員研修プログラムへの示唆:高校英語教師の学び
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23520705
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
栗原 ゆか 東海大学, 清水教養教育センター, 講師 (50514981)
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Keywords | 教師研究 / 英語教員研修 / 社会文化理論 / ヴィゴツキー / appropriation |
Research Abstract |
現在日本の中等教育において、英語教育カリキュラムの改革が行われている。その動きの中で、文部科学省を中心に現役英語教員の研修が国内外で実施されている。しかし、研修後、参加教員は学んだ理論や技能を各学校現場の環境や目標に合わせながら、実際にどのように活用しているか、また参加教員の授業が実際の生徒の学びにどのような効果をもたらしているか、という包括的また長期的な研究は少ない。従って、本研究では英語教員の国外・国内で行われた研修後の授業を学校現場にて調査し、教師と学習者双方の学びの過程を、質・量的研究方法にて明らかにする。これまでに申請者は、北米で行われてきた海外英語研修(MEXTプログラム)を例に、66名の参加教員のアンケート調査と5名の教員の授業参観やインタビューを実施してきた。平成23年度は、この中から研修で学んだ知識やスキルを円滑に応用している教員1名(計2クラス)と校長に参加してもらい、上記の目的に沿って研究を進めた。平成24年度も引き続きその教員の授業参観とインタビューを行った。また上記66名の教員の中から、さらに1名の先生に研究への参加をお願いし、合計2名の教員の学校現場を観察するに至った。以下平成24年度に行った具体的な研究内容と成果を示す。1.参加教員の学校現場での授業と英語教員の信念について授業参観よりさらに明らかにした。2.質的研究の信頼性を高めるため、教員の活動場所に関わる関係者(校長、教育委員会指導主事[一校])の見解を検証した。3.英語教員研修プログラムで学んだ理論・スキルを参加教員が学校現場でどのように自分のものとして活用しているかをさらに調査した。4.アメリカの学会(TESOL)において2005年度から現在まで継続して行っている本研究の成果を発表し、国外(国内も含む)の教師教育研究者と意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の検証項目(以下を参照)のうち、平成23年度&24年度に達成された項目は①,②、③であり、②、③、④~⑦に関しては引き続き本年度に調査をする。①学校現場での英語教員の授業と英語教育の信念について明らかにする。②英語教員が参加した国内の教員研修内容を調査する。③英語教員研修プログラムで学んだ理論・実践スキルを参加教員が学校現場でどのように自分のものとして活用しているか(appropriation)を調査する。④英語教員の授業が実際の学生の学びにどのような効果をもたらしているかを授業内資料と意識調査にて検証する。⑤上記1~4に基づいて、教員・学習者双方の学びの過程とその結果に影響をもたらしている要因を検証する。⑥今後の教員研修プログラム開発のための英語教員のニーズを明らかにする。⑦英語教員研修プログラムに携わる大学教員のFD教育への提案を明示する。自己点検評として、「やや遅れている」と判断した理由は、平成24年度は新たな参加教員(1名)を含め調査を行ったため、上記①~③に集中するに至った。また長期にわたる研究のため、学校や参加教員の事情(学校での役割)を考慮する必要性があった。参加教員また代表研究者との話し合いにより、平成24年度は上記検証項目の①、②、③を主に実施した。この結果を踏まえ、平成25年度は④と⑤の学生の学びの調査と、⑥と⑦の教員研修とFD教育の示唆について考察する予定であり、計画に従って行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
以下平成25年度の研究計画と推進方策を述べる。平成24年度と同じく、本年度も参加教員は2名である。本研究は教師教育を包括的に研究していくため、参加教員の学校関係者(同僚[1校からすでに了解を得ている])や生徒(計2~3クラス)も対象にし、教員の学びの過程をさらに明らかにする。本年度は具体的に、以下に焦点を置く。1)英語教員が参加した国内の教員研修内容をインタビューにてさらに調査する。2)英語教員研修で学んだ理論・実践スキルを参加教員が学校現場でどのように自分のものとして活用しているか(appropriation)を授業参観とインタビューにてさらに調査する。3)英語教員の授業が実際の学生の学びにどのような効果をもたらしているかを授業内資料と意識調査(アンケート)にて検証する。4)教員・学習者双方の学びの過程とその結果に影響をもたらしている要因を授業参観、インタビュー、アンケートにて検証する。5)今後の教員研修プログラム開発のための英語教員のニーズをインタビューにて明らかにする。6)上記の結果に基づき、英語教員研修に携わる大学教員のFD教育への提案を明示する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記「今後の研究」計画に沿って、以下の内容で研究費を使用する。1)国内旅費として、本研究の主たる参加者(高等学校英語教員)の学校訪問を行う。平成24年度から継続している、鳥取県鳥取市と青森県八戸市の高等学校を訪問する予定である。鳥取に関しては、さらに2~3回の訪問、また青森に関してはさらに2回の訪問を予定している。2)外国旅費として、本研究の成果を、平成24年度と同様に米国の英語教育学会(TESOL)で口頭発表を計画している。この学会は、学校現場に携わる教員と教師教育の研究者が主であるため、実践、理論両面からアプローチできる機会となる。そのため、本研究の発表先として望ましいと考える。また社会文化理論を枠組みとした研究書籍、そして授業参観に使用するビデオも購入する予定である。
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