2011 Fiscal Year Research-status Report
ジャンルに基づくライティング指導が英語学習者の文章力と言語力の発達に及ぼす効果
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23520707
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
保田 幸子 東京農業大学, 農学部, 助教 (60386703)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Genre / Genre-based pedagogy / Rhetorical awareness / EFL writing / Grammatical metaphor / Academic literacy / Email writing / Summary writing |
Research Abstract |
日本人大学生の英語ライティング授業で「ジャンル・アプローチ」を導入した結果,学習者の「文章力」及び「言語力」がどのように変化したか縦断的に調査した. 得られた結果についてまとめる.まず,授業開始時に,学習者は習熟度に関係なく,授業で扱うジャンルについて過去にほとんど書いた経験がなく,タスク完成までの過程で多くの問題に直面していた.特に,特定の場面で特定の意味を表す為の語彙や文法を選択する際に,ごく限られたリソースしか選択できないことが明らかになった.例えば,フォーマルな状況で「依頼メール」を書く場面では,学習者は"I want you to..."といった所謂"want-based strategies"を選択する傾向が見られた.また,「要約文」においては,オリジナルの文章をそのままコピーするか,単に短くするだけという傾向が観察された. しかし,一年間のジャンル・アプローチに基づくライティング指導を受けた結果,学習者の書き言葉に対する認識に変化が現れた.内省コメントを分析した結果,学習者は,読み手のニーズや状況,書く目的に注意を払うようになった.この変化は,学習者が実際に産出する文章にも反映していた.流暢さ(fluency),語彙密度(lexical diversity),語彙多義性(lexical diversity)において,習熟度に関係なく授業開始時と終了時で有意な伸びが観察された. しかしながら,文法的洗練性(grammatical sophistication)に限っては,上級者が有意な伸びを示した一方で,初級者には有意な変化が見られなかった. 以上の結果から(1)ジャンル・アプローチは,日本人大学生の書き言葉に対する意識,及び文章力と言語力の変化に効果を及びす可能性がある.(2)文法的洗練性は,外国語ライティング能力を測る指標として有効である可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書で述べた通り,本年度は,ジャンル・アプローチに基づく授業の実施,及びデータ収集を行った.授業は週に1回(90分),前期後期それぞれ15回(計30回)実施した.コースの到達目標は次の三つである.(1)前期終了後に「メール文」,後期終了後に「要約文」が英語で書けるようになる(=genre production);(2)後期終了後にnon-academic genresとacademic genresを含む「ジャンル一般(genres in general)」について認識を深める (=genre awareness);(3)社会的コンテクストに応じた適切な語彙や文法が使えるようになる(=language competence).これらの到達目標に向けて行われる1年間の授業を通し学習者が産出した文章量的データ),及び内省コメント(質的データ)として収集した. 質的データ(アンケート,インタビュー,リフレクション)分析により,学習者のジャンルに対する認識の変化,あるいは外国語で書くことに対する意識の変化を調査した.そして,学習者の認識の変化が実際に書かれた文章に反映されているか,認識の変化が文章力と言語力の変化につながっているかを分析するため,授業を受ける前と受けた後に学習者が書いた文章をコーパス化し,量的に評価した. 以上の状況から,本研究は平成23年度末の段階で,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
上記研究結果の信頼性を高めるため,平成23年度に続き平成24年度にも同じ授業を実施する.平成24年度,研究代表者である保田は,所属機関が変わったため(東京農業大学から九州大学へ異動),平成23年度の授業で得られた結果が,別の大学に所属する日本人大学生においても複製可能かどうか,あるいは別の結果が得られるか検証する. 得られた結果は,中間報告として学会及び学術誌上で発表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は主に,以下の三つのために使用する.(1)図書購入(物品費);(2)学会出張(旅費);ライティング評価(ratersへの謝金)である.
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