2012 Fiscal Year Research-status Report
ジャンルに基づくライティング指導が英語学習者の文章力と言語力の発達に及ぼす効果
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23520707
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
保田 幸子 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (60386703)
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Keywords | Genre / Genre-based Pedagogy / Rhetorical Awareness / EFL writing / Writing-to-Learn / Learning-to Write / Lexical Knowledge / Academic Literacy |
Research Abstract |
平成24年度の研究目的は,「平成23年度に実施した英語ライティング授業における『ジャンル・アプローチ』の効果をさらに検証すること」であった.具体的には,平成23年度,関東圏私立大学で実施したライティング授業を,平成24年度は九州圏国立大学で実施することにより,英語習熟度の違いによって「ジャンル・アプローチ」の効果に違いが見られるかを検証することを目的とした.さらに,英語で文章を産出する過程において学習者が直面する問題は,英語習熟度に影響を受けるのか,それとも,その問題は英語習熟度以外の要因に起因するのかについても検証することを目指した. 調査結果について述べる.まず,ジャンルアプローチを受ける前に学習者が産出した文章は,平成23年度に明らかにされた調査結果と同様のものであった.つまり,Eメールにおける依頼文では,英語習熟度に関係なく,学習者は"want-based strategies"を選択する傾向が見られた.また,要約文においては,オリジナルの文章のコピーが顕著に見られるなど,他者の考えを自身の言葉で言い換えることに対して学習者が感じる難易度の高さが反映されていた.しかし,15週間のジャンルアプローチに基づく指導の結果,学習者は,依頼文においては,より文脈に適した表現("I wondered," "Would it be possible"等)を選択するようになった.また,要約文においては,コピーの件数が顕著に減少し,情報を凝縮するために名詞句を効果的に使用する傾向が見られた. 本調査結果が英語教育に与える知見は次の二点であると言える.(1)「英語で書く力」は,TOEFLなどの試験で測定される「英語習熟度」だけでは説明できない構成要素を含む可能性がある.(2) 読み手や目的,使用領域を明確にし,「特定の社会的文脈」の中で書く活動が「英語で書く力」を伸ばす鍵となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書研究計画で述べた通り,平成24年度は,データ収集と分析を実施し,学習者のジャンルに対する認識の変化,外国語で書くことに対する意識の変化を調査するとともに,学習者の認識の変化が実際に書かれた文章に反映されているか,認識の変化が文章力と言語力の変化につながっているかを質的量的両面から分析した. 調査結果は,平成24年8月に,米国・ハワイ大学大学院第二言語研究科に博士論文として提出され,学位を授与された,また,平成25年3月に米国・シカゴで開催されたAmerican Association of Applied Linguistics (AAAL)にて,口頭発表を行った.さらに,平成25年4月,学習者の「要約文」の言語的特徴の変化についてまとめた論文をJournal of Second Language Writingに投稿した(現在査読中).
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,平成23-24年度の調査によって明らかにされた学習者の英語による「文章力」と「言語力」の関係について,その実態を計量的に把握することを目指す.具体的には,平成23-24年度は,学習者の文章力を測定する変数として特定のdiscourse markers(Eメール=依頼;要約文=凝縮)に注目しただけであったが,平成25年度は,さらに詳細な語彙的要因の実態を解明するため,文章力に影響を与え得る以下の8つの変数に注目する.(1)総語数(Token) ; (2)異語数(Type) ; (3) 語彙多様性(lexical diversity) ; (4)語彙洗練性(lexical sophistication) ; (5)語彙密度(lexical density) ; (6)文の複雑さ(syntactic complexity) ; (7)論理性(logical connectives) : (8)結束性(cohesion). これら8つの変数の数値は,Coh-Metrix(文章の「読みやすさ(=readability)を計量的に把握する目的で開発されたソフトウェア)に基づいて算出する.そして,重回帰分析により,学習者の文章力に寄与した語彙的要因は何かについて検討する(=文章力と語彙力の関係).さらに,TOEFLで測定される「英語習熟度」は「文章力」とどの程度相関関係が見られるのかについても検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は主に,以下の三つの目的で使用する.(1)図書購入(物品費);(2)英文校正(物品費);(3)学会出張(旅費);(4)ライティング評価(謝金)
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Research Products
(2 results)