2013 Fiscal Year Annual Research Report
ジャンルに基づくライティング指導が英語学習者の文章力と言語力の発達に及ぼす効果
Project/Area Number |
23520707
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
保田 幸子 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (60386703)
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Keywords | 英語教育 / ライティング / 外国語 / 第二言語習得 / ジャンル / 言語意識 |
Research Abstract |
本研究は,日本人大学生の英語ライティング授業で「ジャンル・アプローチ」を導入した結果,学習者の英語での「文章力」及び「言語力」がどのように変化したかについて縦断的に調査することを目的とした. 一年間の縦断的調査を実施し,以下の3つのデータを収集した.①アンケートの回答,②インタビューでのコメント,③学習者が授業前と授業後に産出した英文である.① と②のデータ分析の結果,学習者は,授業開始時には,書くという行為を「正しい文法で英文を産出すること」と捉え,「正確さ」に注意を向ける傾向があった.そこには,相手意識や目的意識といった配慮が欠けており,コミュニケーションとしての作文教育が軽視されていた過去の学習経験が浮き彫りになった.しかし,15週間のジャンルに基づくライティング指導の前と後で産出した英文(③のデータ)を質的量的な観点から比較分析したところ,学習者の相手意識や言語意識には変化が見られ,それは,英文を産出する際に実際に学習者が選択する語彙表現にも反映されていた. 日本人学習者は,初等教育の頃から「思ったことを思った通りに書く」という思索的な作文教育を受けており,「相手が分かるように書く」というコミュニケーション型の作文指導を十分に受けていないと言われる.本研究は,コミュニケーションとしての作文が過去の国語教育において軽視されていた可能性を示唆し,今後の作文指導において,相手意識,目的意識,言語意識を持つことの三つが必要であることを示したといってよいだろう.言語は,書き手と読み手という人と人の相互的な行為として成立する.どのような人にどのような目的で,どんな場面や状況で書いたり読んだりするのか,綿密な配慮がなければ,その言語は不十分な機能しか発揮できない.文章を書くことは,そのための訓練であり,その訓練の効果を最大化するのに「ジャンル・アプローチ」は一つの鍵となるはずである.
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Research Products
(4 results)