2012 Fiscal Year Research-status Report
早期外国語教育のインプット量が音声習得に与える長期的・短期的影響
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23520712
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
原田 哲男 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60208676)
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Keywords | 第二言語習得 / 早期外国語教育 / 学習開始年齢 / インプット量 / 音素識別 / ノイズ / 音声習得 / 国際研究者交流(アメリカ、ロサンゼルス) |
Research Abstract |
日本国内での幼児期・児童期の週数時間の限られた英語のインプットが、音声知覚にどのような長期的な影響を及ぼすかを、日本人英語話者にとって困難とされる/l/と/r/の聴取実験により検証した。早期の限られて音声インプットでも、成人になってからの聞き取りに有益である(Larson-Hall 2008)という結果がある一方、普通の状況での聞き取りでは早期英語学習には何の影響もないが、ノイズ下での聞き取りでは早期学習者が有利になる(Lin et al. 2004)という先行研究があり、限られたインプットでの早期英語学習が後の音素知覚にどのような影響を及ぼすかは、未だ明らかではない。さらに、ノイズのみならず、英語学習者は、話者の違いにも大きな影響を受けやすいとされている(Bent, Kewley-Port, Ferguson, 2010)。そこで、本研究では/l/と/r/の音素識別テストをノイズがある悪条件下で行い、さらに様々な話者が発話した音声を聞かせ、音素識別能力を多角的に調査した。語中に/l/と/r/を含む無意味語(例:ala, ara)を使い、6人の話者の音声を、SNR比0 dBと8 dBのノイズと合成し、それぞれの無意味語をAAB, ABA等の順で聞かせ、その中から違った音素を含む語を一つ選択させた。英語母語話者10名、早期学習者25名、中学校からの学習者25名が聴取者として参加した。結果は、早期学習者が有利だという先行研究に反して、中学校から英語学習を開始した大学生のほうが、/l/と/r/の音素識別能力が統計的に高いことが判明した。さらに、早期学習者は、中学校から学習を開始した者と同様に、ノイズや話者の違いに大きな影響を受けていた。この結果は、限られた英語のインプットでは、早期英語学習を行っても、音素識別に利益をもたらさない可能性があることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度後期は主任の任務も終わり、昨年度よりもエフォート率を上げることができ、研究補助者の協力もあり、予定通りに研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年は最終年度であると同時に、夏から1年間在外研究になるので、エフォート率を上げ、次の三点に目標を絞って、研究を続行する。1)米国西海岸の一方向日本語イマージョン教育(インプットは主に教師からの一方向)と双方向日本語イマージョン教育(インプットは教師と日本語を母語とするクラスメートからの両方向)の児童を対象にし、音声生成と知覚の短期的影響を調べる。2)日本語イマージョン教育の小学校を卒業し、その後中学校・高等学校で日本語のインプット量が減少した大学生を対象にし、音声能力がどの程度維持されているかを検証し、長期的影響にも焦点を当てる。最後に、3)過年度のテーマであった早期外国語教育での限られたインプット量(週2、3時間程度)の音声習得への影響について論文をまとめて、応用言語学か第二言語習得の国際学術誌に投稿する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(6 results)