2013 Fiscal Year Research-status Report
早期外国語教育のインプット量が音声習得に与える長期的・短期的影響
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23520712
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
原田 哲男 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60208676)
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Keywords | 早期外国語教育 / 学習開始年齢 / 学習期間 / インプット / 第二言語習得 / 音声習得 / 音素識別 / ノイズ |
Research Abstract |
公立小学校での外国語(英語)活動の基礎研究として、週1、2時間程度の限られた英語のインプットが長期的音声習得にどのような影響を及ぼすかを調査した(e.g., Larson-Hall 2008; Lin et al. 2004)。複数の話者が発音したノイズを伴った英語音声の識別能力に関して、3歳から8歳の間に週数時間程度の英語学習を開始した大学生と、中学校から学習を開始した大学生とを比較した。日本人英語学習者にとって困難とされる/l/ と/r/を選び、6人の異なった話者が発話した[ara], [ala]の無意味語と、話し声からなるノイズを合成し(SNRs = 8 dB and 0 dB)、識別能力を測定するために聴取実験を行った。さらに、過去の英語学習経験がどのように影響するかを調べるために、学習開始時期から現在までの英語歴について詳細なアンケート調査を行った。 次のような結果が得られた。1)ノイズや話者に関わらず、早期学習者よりも、中学校から英語学習を開始した者の方が、/l, r/との識別能力に優れていた。2)早期学習者のみで見ると、学習開始年齢よりも、学習期間の方が、識別能力を予測するには大切な要因であった。とくに、早期学習期間が4年以上になると、成人になってからの音声識別能力に効果があると思われる。3)音声識別能力が高かった中学から英語学習を開始した者は、中学校や高校での英語学習経験よりも、大学での経験の方が、音声識別能力とより密接な関係があった。具体的には、a) 英語の授業中の教師やクラスメートとの英語でのコミュニケーション量とb)クラス以外での音声英語の使用量が大切な要因として挙げられた。英語を外国語として早期から教育している他国での調査でも同じような結果が報告されているのも注目に値する(Garcia Lecumberri & Gallardo 2003; Munoz2011)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
聴取実験だけでなく、主に小学校から英語学習を開始した大学生と中学校から開始した大学生の過去の英語学習歴を詳細に調べ、音声識別能力がどんな要因と関わっているかを導き出せたのは、今年度の大きな成果だと思われる。また、数回の国際学会に参加して、英語を外国語として教育している国の研究者と議論した末、日本のように限れたインプットしか得られない状況での早期英語教育と音声習得の関係が、この研究とほぼ同じような結果が出ていることを受け、最近の様々な研究を支持できるデーターを示すことができたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であるため、研究成果の総まとめとして、国際応用言語学会で発表する予定である。さらに、今回のデーターは、聴取実験を中心に行ったもので、今後生成能力との関係を深く調べ、さらには単音レベルだけでなく、プロソディーの分析も行う予定である。また、早期外国語教育を多角的に捉えるために、伝統的なイマージョン教育だけでなく、双方向イマージョン教育(dual language/two-way immersion programs)に於ける音声習得も考察の対象とする。このタイプのイマージョン教育は、学習言語の母語話者がクラスに半数程度存在するために、従来のイマージョン教育に比べるとインプットの量や質が大きく異なり、音声習得にいかに影響するかを検討することは非常に興味深い。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度に特別研究期間を取得し、研究に多くの時間を割け、ほぼ予定通りにデータの分析・結果・考察が進んでいるが、現在滞在中のアメリカ国内でのデータ収集が、実験・調査申請の時間が予想以上に掛かり、予定より遅れてしまった。また、補助事業期間中に国際応用言語学会で研究成果を発表する予定だったが、その開催が26年になったために未使用額が生じた。 このため、アメリカ国内でのデータ収集とオーストラリアで開催される国際応用言語学会での発表を次年度行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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Research Products
(7 results)