2011 Fiscal Year Research-status Report
批判的思考力をピアとの相互交流で高めるための読解教材の開発と学習形態の構築
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23520715
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Research Institution | Niigata Institute of Technology |
Principal Investigator |
峯島 道夫 新潟工科大学, 工学部, 准教授 (10512981)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茅野 潤一郎 新潟県立大学, 国際地域学部, 講師 (50413753)
大湊 佳宏 長岡工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70413755)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | クリティカルシンキング / 批判的思考力 / クリティカルリーディング / 発問 / 読解 / 教科書 |
Research Abstract |
研究初年度であるH23年度の研究目的は、日本の英語教育におけるCT(Critical Thinking:批判的思考力)指導の実態を、国内外の英語教科書を分析することにより調査することであった。教科書分析の対象国としては、日本を筆頭に、PISAの読解力テストの上位国を想定した。また教科書は各国の高校レベルの外国語としての英語の教科書を対象とし、そこにあらわれる発問を質的・量的に分析した。本年度の研究成果として、日本の高校のリーディング用の教科書18冊、フィンランドの高校の英語の教科書8冊、韓国の高校の教科書4冊の分析をほぼ終了することができたことが挙げられる。 また日本では、文科省による新学習指導要領の改訂に伴い、来年度から高等学校において新しいカリキュラムが実施されることになるが、これまで長年「リーディング」として知られてきた科目が、大げさな言い方をすれば日本の英語教育においてその使命を終え姿を消すことになる。その消えゆく科目が、どのような発問をどのように用いて学習者を教えてきたのかを、教科書を通して調査し、その結果を具体的なデータとして後世に残すことができたことの意義は少なくないと思われる。 調査は、一般に公開されている資料を基に、東京都立高校および中等教育学校(後期)における採択率が8割以上を占める18冊のリーディングの教科書を選び、その発問を分析・類別した。分析対象の発問の総数は5634問に上った。その結果、CTに結び付くと思われる発問は、全体のおよそ13%にしかすぎないことが判明した。これによって、日本の教科書にはCT伸長につながると思われる発問が少ないのではないか、との本件研究者らの予想は具体的な数値で裏付けられることになった。 韓国とフィンランドの教科書との比較については、現在進行中の調査の最終結果をまって論じたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の高校リーディングの教科書18冊を分析できたのは大きな成果であった。これにより日本の教科書の発問の実態がかなりの妥当性を持って把握できたからである。これらの教科書は、日本で使用されているリーディングの教科書全23冊からの無作為抽出によるのではなく、東京都の公立高校の採択率を基準にしたその上位18冊であり、少なくとも東京都の公立高校の8割が学んでいる教科書の実態を記述統計として詳細に調査分析できたことになる。 その半面、日本の教科書の分析に予想以上の時間がかかってしまったことも否定できない。これは、「発問分析」とは言っても発問だけを見てその種類を分類できるわけではなく、教科書のテキストをすべて読んだ上でなければ分類できないという事情による。発問の分析には、その問いがどのレベルの思考を要求しているを判断するわけであるが、そのためには本文を読む必要があるのである。 さらに、日本の教科書分析に予想以上に時間がかかった以外に、外国の教科書の入手が思った以上に困難であったという事情も想定外であった。残念ながら結局教科書をなんとか入手できたのも、現時点ではフィンランドと韓国の2カ国にとどまっている。 しかし本研究は、日本と諸外国との教科書の比較が主目的ではなく、主眼はあくまで日本の英語の教科書の実態把握であったから、日本のリーディング教科書の実態がかなり正確に掴めたことで当初の目的は達せられたと考えられる。(日本の教科書分析の結果は第37回全国教科教育学会(沖縄大会)において発表した。) 日本、韓国、フィンランドの教科書の発問の比較・分析結果は、2回目の確認作業が終わり次第、H24年度の学会において発表する予定である。(韓国の教科書4冊については終了し、現在フィンランドの教科書8冊について再確認している段階である。)
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目の今年(H24)は、フィンランドの教科書8冊の2回目の確認作業が終わった段階でいったん打ち切り、当初の研究計画に沿って、CT伸長のための新たな読解教材の開発へと研究の重点を移したい。できればさらにもう1、2カ国の教科書を分析したい希望もあるが、初年度を振り返り、教科書分析は予想以上に長い時間と多くの労力が必要であることが判明したため、これ以上分析だけに時間を取られるのも避けたい。ただし、新学習指導要領の開始に伴い、H25年度から高等学校で教えられることになる新科目「英語表現I」の教科書が入手でき、さらに時間的な余裕があればこれらの教科書の分析には取り組みたい。この科目の目標として「論理的・批判的に物事をとらえ」ることがあげられており、本研究の中心である批判的思考の伸長と密接に関係しているからである。 研究2年目のもうひとつの目標であるCT伸長に向けた授業形態の考案については、その前段階の目標であるCTを教えるのにふさわしい教材の開発なしには取りかかれない。しかし、教材の開発を俟って取り掛かるというよりも、可能性のある教材の適否を判断するために、いわば教材の試作段階で、よさそうであれば実際に授業でその都度試してみるという形をとりたい。 2年目の最も重要な達成目標は、批判的思考力伸長のための教材開発である。そのための適当な題材を広く収集し、CT伸長に適した発問を考案し、実際に授業で試すべく今後の研究を進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
外国の教科書については、時間的な余裕があればさらに購入し分析をしたいが、現時点では必要ない。むしろ教材開発のための資料収集のために種種の読解教材を広範囲から入手すること、また3年目の研究目標である授業形態の構築のモデル開発のために、いろいろな教育現場を訪れて授業観察を行ったりする必要が生じると予想される。
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Research Products
(2 results)