2012 Fiscal Year Research-status Report
初級者に効果的なマルチメディア英語教材:脳科学的考察を加えて
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23520732
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Research Institution | Kyushu Women's University |
Principal Investigator |
中野 秀子 九州女子大学, 共通教育機構, 教授 (20309735)
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Keywords | 文字表示 / 音素認識 / 外国語活動 / θ波 |
Research Abstract |
I.前頭頂部の3点(F3,F4,Fz)での測定が可能なドライ電極を開発した。II.このキャップを使用し小学生2名に以下の実験を行った。実験A: KenとMaiの会話の「絵+日本語+英語表記無し」を聞く。「絵+日本語+英語表記無し」を口頭で言う。「絵+日本語+英語表記有」を聞く。「絵+日本語+英語表記有」を口頭で言う。実験B: RIM「絵+日本語+英語表記無し」を聞く。「絵+日本語+英語表記無し」を口頭で言う。「絵+日本語+英語表記有」を聞く。「絵+日本語+英語表記有」を口頭で言う。結果は以下の通り。1.ドライ電極のデータの信頼性については岡本・夏目(2012)の研究のよに,従来型とドライ電極で概ね同等な精度であったことが報告されている。本実験でもノイズもなく,測定ができることが分った。2.得られたデータの脳波のθ,α,β波の領域の相対比率(%)を比較した。Friedmanの検定により学習中に記録された3領域の脳波には有意差がみられ(p < .0001), 3つの領域の脳波が異なって出現していることを示唆した。3.文字表示無の教材を学習中に出現したθ波の方が文字表示有の教材より有意に比率が高かった(t = 3.195, **p < .01)。この結果は,先行研究の結果と同様に学習や集中時と前頭部のθ波の関連性を示した。4.θ波の比率についてbeat表示有とbeat表示無のRIM学習中の平均を計測したところ,60.74% (SD 18.73), 67.03% (SD 13.68)で,実験Aの結果と同様にリズム表示無の方がθ波の出現比率が高くなった。リズム表示無の場合は,視覚的なリズムの手掛かりがないので音により集中する必要があるが,リズム表示有の場合は視覚的手がかりがリズムの判定を手助けして,ワーキングメモリーを余分に使う必要がのではないと言えるかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度はドライ電極のF3,F4,Fz型の試作品を使って行った実験結果が、参加者の数は2名と少ないが、有意な結果が出た。脳波の実験では常に解析に時間がかかり個人差があるので、多くの参加者に実験をして解析するのは非常に難しい。今回は2名であるが有意な結果が出たので、まずその報告をまとめて学会でパイロットスタディとして発表し、他の研究者の有効な助言を得ることを試みた。さらに、科研最終年を控えて脳波の実験結果を踏まえた効果的な教材を作成する必要があるので、教材研究のため3月に韓国の英語教育の視察と教材収集を実施した。これらの資料を分析して最終年の前半に提案する教材のモデルを作成し、モデル教材を学習中の参加者の脳波測定を夏に計画している。このように平成25年度末には科研の目標の結果が得られると思われるので、本来の計画通りに進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究計画は以下のとおりである。 (1)文字表記、リズム標記のある基礎実験用マルチメディア資料を作成する。(2)購入したF3F4Fzドライ電極式脳波測定キャップを使用して小学生の実験を行い分析を行う。(3)結果をまとめ、有意な結果が得られた場合は国内外の学会で発表し、他の研究者からの助言を得る。(4)アメリカのTESOLに参加し、研究結果に応じて発表または資料集を行う。(5)結果を踏まえた最終的教材を作成し、web上で公開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費としてデータ保存用HD、インク、記録用メディアや機器接続用ケーブル、電池などが必要である。謝金としては夏休みや春休みに小学生に実験を行う予定なので謝金が必要である。さらに実験補助者、マルチメディア作成協力者にも謝金が必要である。 旅費としてインタークロス(株)(東京)での実験のための旅費をはじめ、国内学会発表(1回)・参加(3回)、及び外国での学会発表(フィリピン、イタリア、アメリカ)を予定している。その他としては教材を公開するために外部サーバー委託料が必要である。このような研究計画を実現させるために、昨年度からの繰越金を含む研究費が是非必要である。
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