2011 Fiscal Year Research-status Report
諸外国の早期英語教育コアメソッドを収斂した四技能連携型小中英語リエゾン教材の開発
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23520746
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
淺間 正通 静岡大学, 情報学部, 教授 (60262797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 敏広 静岡大学, 情報学部, 講師 (90547001)
山下 巌 順天堂大学, 保健看護学部, 准教授 (70442233)
荒尾 浩子 三重大学, 教育学部, 准教授 (90378282)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / アイスランド / フィンランド / リエゾン教材 |
Research Abstract |
2011年度は「小学校外国語活動」が5・6年生を対象に必修化された初年度であったことから、さらにまた『英語ノート』配布をめぐる議論も紆余曲折したりしていたことから、現場教師の戸惑いの声を探るべく全国の小学校を広域的に授業参観し、さらにまた担当教師からのヒアリングをも行うなどして実態把握に努めることとした。この国内調査にあっては、同時に離島などの小学校の活動の実際が都市部とのそれと格差を生じているか否かの問題意識もあり、その試みとして長崎県対馬市にある小学校を訪問し、授業参観および担当教員からのヒアリングを行った。その結果、ネットワークの発達がもたらした利便性により際立った格差は生じていない点が確認できたのは貴重であった。 また、国内調査と並行して研究分担者および研究協力者の協力を得ながら国外調査も文献研究と併せて積極的に行った。対象とした国は、フィンランド、アイスランド、スウェーデン、オーストリア、シンガポール、タイ、フィリピン、台湾、韓国、中国の10カ国に及び豊富な基礎資料を得ることができた。 さらに初年度研究の終盤は、前述の国内・国外調査研究の内容を比較対照分析し、日本の小学校における外国語活動を進展させて行く上での問題点を浮き彫りにすることとした。日本の小学校の場合は外国語活動としての位置づけにあり、いわゆる英語教育として行っている諸外国とは一概に単純比較できないものの、アイスランドの小学校のように英語の授業であってもしっかりと母語教育にも力を入れている姿(自文化理解)は、ある種『英語ノート』の理念にも通底していた部分があり大いに参考になった。ただし、教材部分では、読み、書き、話し、聴く四技能が彼の国ではしっかりと保たれており、日本の実情とは大きく異なる部分があった。本研究のコア部となる「四技能連携型小中英語リエゾン教材の開発」への大いなる示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最大の目標は、小学校の外国語活動(いわゆる英語活動)と中学校の英語教育が有機的にリンクし合う、「小中英語リエゾン教材の開発」にある。国内調査と国外調査によって得られた知見をデータベース化しながら対質させて得た課題の要諦は、研究代表者が主宰する研究会「異文化情報ネクサス研究会」会誌『I'NEXUS』No.4にも特別寄稿として公表し、一連の問題意識の整理が可能となった。また、これらの研究内容に関しては、東京の出版社より出版企画化がなされ、2011年12月に『小学校英語マルチTIPS』の名のもとで刊行化が図れたのも大いなる収穫であった。 日本の小学校における英語活動においては、「読むこと」「書くこと」、そしてまたテスト形式による「評価」などは期待されていないが、諸外国の調査結果においては、これらの要素が自然な形で導入されている事実を初年度において掌握した実際がある。日本の小学校の英語活動において、単なる「ごっこ遊び」に終始することなく、「役立つ英語」としての視点付与も今後は大いに検討されてしかるべきである。そしてそのためには、中学校英語教育にゆるやかに繋がってゆくスパイラル式のリエゾン教材の開発が急務である。初年度において浮き彫り化した国内の小学校英語活動に求められる足りない要素を教材に反映させる視点は、初年度の研究においてしっかりと把握でき、またそれをもとに現在応用研究として、教材開発の実験を行えるところまで達成できている。よって、3年間設定で策定した計画は順調に推移し、2年目の研究課題となる、「外国語活動(必修化)初年度を終えた評価」を反映させての2012年度研究にスムースに移行できる状態にあるものと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は3カ年研究計画の2年目となる。小学校外国語活動が5・6年生を対象に必修化された2年目でもあり、初年度の実際の全国的状況把握が不可欠となる。国の事業仕訳によって不安定な位置づけとなっていた『英語ノート』に関しては、現場教師の依存度が高いことから、とりあえず存続の向きとなった意義は大きかった。また新たに、電子黒板を併用しての活動展開を詳細にモデル化した、『英語ノート-指導ハンドブック』の現場配布は、現在の状況を見る限りにおいて、前年度までの現場教師が抱えていた一定の不安感払拭にも大いに貢献しているようである。ただし、この指導ハンドブックにおいては小中英語連携の視点が反映されているとはいいにくい側面があり、これに完全依存する現場教師が増産されると、日本の小学校外国語活動の進展に歯止めをかけかねないのも否めない。そこで、2012年度の研究計画としては、2011年度の「現場評価」を踏まえた上で、指導ハンドブックの内容をさらに担当教師自身でフレキシブルに展開できる指導法および教材開発の基本設計策定に従事することとなる。なお、この基本設計策定にあっては四技能発達の問題もしっかりと意識先鋭化しておきたい。さらには、前述した指導ハンドブックがあくまでも電子黒板との一体化を念頭に編まれているところがあるので、予算化が十分に図られていない国内小学校の現場なども訪れて、必修化2年目ならではの問題もしっかりとクローズアップしてゆく考えである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度は、国内旅費としては前年度に訪問した対馬の久田小学校を訪れて、まずは初年度評価を得る際のサンプルとしたい。その他、広域的に国内の小学校の現場をも訪れて担当教師からの生の声を拝聴する考えである。国外調査にあっては、フランスのリセ(中学校)訪問および研究協力校として助言してくれているアイスランドのブレクスコリを訪問し、初年度に得た知見のレビューを得たいと考えている。以上の点より、国内・国外旅費を手厚くしておきたい。 物品費に関しては、初年度に英語による音楽教材を各種シュミレータおよびエフェクタを利用して音声加工してきた経緯があるので、これらを最終的にウェブ教材化してゆく目的から、逐次内容検証可能なように画像・動画・音声再生一体型のデジタル機材を購入しておきたい。また、それらを随時編集し直すことも必要となってくるので、ソフトウェア関係の物品購入が必要となる。 謝金に関しては、当初計画では2年目も学生の研究協力を得るなどして研究を遂行する考えであったが、初年度において、予想以上の成果を前倒しで得ることができたたことから、この謝金部分に関しては、本年度の研究において不足しがちな旅費に充当していきたいと考えている。
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Research Products
(8 results)