2011 Fiscal Year Research-status Report
早期英語から中学校英語への架け橋:文字教育を取り入れた指導法と教材モデル開発研究
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23520758
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
小野 尚美 成蹊大学, 文学部, 教授 (10259111)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 ニュージーランド / 国際情報交流 オーストラリア / 国際情報交流 アメリカ / 国際情報交流 カナダ |
Research Abstract |
本研究テーマは、リーディング・リカバリー・プログラム(以下RRとする)の理論とその理論に基づいた指導法について調査し、日本の小学校英語の指導方法へ重要な示唆を得ることにある。平成23年は、まだ日本ではよく知られていないRRプログラムについて学ぶために、8月の17日間オーストラリア(シドニー)、ニュージーランド(ダニーデン、オークランド)へ行き、実際にRR指導を行っているクラスの参観及びRR教員研修に参加した。それぞれ参観した小学校及び研修機関は下記の通りである。Australia (Sydney) Turramurra Reading Recovery Centre(Turramurra Public School)New Zealand(Dunedin) North East Valley Normal School, George Street Normal School, Tainui SchoolNew Zealand(Auckland) New windsor School, Freemans Bay Primary School, The University of Auckland, Faculty of Education (Reading Recovery New Zealand) 指導方法に関しては、このRRプログラムを作ったMarie Clayの主な著書と関係資料を事前に熟読して研修に参加したので、RRプログラムの歴史、基本的な指導の手順、RR教員研修の概要は理解していた。しかし、実際に現地の関係者から説明を受け、教員研修に参加し、より一層RRプログラムについての知識が深まった。さらに、研修を通してそれぞれの国のリテラシー教育についても調査することができ、読み書き能力回復のためのRRプログラムについての理解が一層深まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
RRプログラムについて研修に参加する前に、イギリスのロンドン大学やアメリカのオハイヨー大学のRRプログラムセンターから出ている資料をネットで入念に読み、Marie Clayの著書についても熟読して行ったため、実際オーストラリアとニュージーランドで調査と研修参加をしたときに、かなり理解を深めることができた。そして、実際の訓練の様子を見たり、RR教員研修にも参加させていただくことができ、日本の小学校英語の指導法への応用方法についてより具体的に考えられるようになった。 日本では英語教育方法として音素教育と文字教育はあまり注目されていないが、ニュージーランドでもオーストラリアでも言葉の習得、特に英語という言語の性質を考慮すると、音素教育、音と文字の関係について初期段階から教え込むことが重要であるとしていることが分かった。日本の小学校での英語指導でもこの音素教育、音と文字の関係を教えることが肝要であるという示唆を得ることができた。 また、RR訓練で実際に使われている読みのための教材が大変豊富であることも研修に参加して分かった。これらのテキストは、日本の英語教育ではあまり使われていないテキストである。SRAというスピード・リーディングの教材に似たものがあるが、それよりもそれぞれのテキストには必ずContext(文脈)があり、それらが生徒の生活と密着している点も重要である。さらに、RRの読みの指導で、「話すように読みなさい」という指示がよく聞かれ、Oral language訓練とWritten language訓練が密接に結びつけられていることが分かった。 平成23年8月に17日間に及んだオーストラリア及びニュージーランド研修は、このように様々な発見があり、大変有意義であったため、当初の計画以上に研究が進んだと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究では、RRプログラムについてさらに知識を深めるために、RRプログラムの指導関係の学会に参加し、RRプログラムについての勉強を行うことにする。RRプログラムは、ニュージーランドで始まった読み書き矯正プルグラムであるが、Marie Clayの指導を忠実に受け継ぎながら、オーストラリア、英国、アメリカ、カナダなど主な英語圏で盛んに行われているため、オーストラリアやニュージーランド以外の国も訪問し、RR訓練及びRR教員研修に参観し、RRの理解を深める。 また、日本の小学校英語指導への応用方法を研究するために、モデル教材と指導方法を開発し、実際日本の小学生の英語の授業に使い、その効果を観察する。まず初めに、都内の小学校に通う児童が通う英語教室で音素教育、文字教育、テキストを使った読み書き教育を実践することになっている。まずは、もともとRRプログラムが一対一の個人教授方法であることから、日本の英語教育への応用の際にも、クラス単位ではなく、少人数教室でその新しい指導方法とモデル教材を使って効果を見ることにする。 平成24年の研究は、上記のRRプログラム研修を引き続き行うことと、RRプログラムを応用した新しい小学生のための英語指導方法を小規模なクラスで開発し、平成25年には、公立小学校の教室で使えるようなモデル教材及び指導方法を作り上げていく予定ある。さらにこの研究成果について学会で発表し、ワークショップなどで現役の小学校英語教員の理解を深めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には、主にRRプログラムの理解をさらに深めるために、RR訓練を実際に行っている他の英語圏の国を訪問し、その訓練の様子とRR教員研修に参加する予定である。また、日本の小学生のための英語教材開発も目指しているため、実際に使われている教材を収集し、効果的な教材作成について研究を行っていく予定である。 また、平成24年度には、昨年行った研修から学んだことを基に、RRプログラムで行われている読み書き訓練を、日本の小学校での英語教育にいかに応用するかについて研究を始めることにする。最初の段階では、公立小学校の生徒が通う英語教室で、音素訓練、文字と音の一致を教える指導を行いながら、その効果を観察する。また、日本の小学生に適したテキストを開発し、実際の小学生の読みの訓練に使ってみる。さらに、この成果を学会で発表し、ワークショップを行うなどして、現役の小学校英語教員からも意見や助言を得ながら、実際の小学校で使える指導方法及び教材の開発をおこなうことにする。
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