2013 Fiscal Year Annual Research Report
古代・中世の朝鮮半島における貨幣流通の様相と東アジア世界
Project/Area Number |
23520786
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
三上 喜孝 山形大学, 人文学部, 准教授 (10331290)
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Keywords | 銅銭 / 現物貨幣 / 東アジア世界 |
Research Abstract |
本研究では、東アジア、とりわけ日本と朝鮮半島の古代から中世にかけての貨幣流通の問題を取り上げた。中国で発明された鋳造貨幣の銅銭は、朝鮮半島を経て日本列島に伝わり、古代から中世にかけて広く流通した。その伝播の実態を探ることを本研究の目的とした。特に朝鮮半島における貨幣流通の実態に注目し、その背景となる物資の流通にも着目した。韓国内において、資料調査や資料収集を進めたが、具体的には、高麗時代の沈没船から引き揚げられた木簡の解読・検討により、高麗時代における半島内の物資の流通の実態などが明らかになりつつあり、これに関しては、さらに検討を深めていくつもりである。 本研究の検討により、古代・中世までの朝鮮半島における貨幣は、実用的な意味合いよりもむしろ呪術的な役割を果たしていた場合が多かったことが明らかになった。古くは、6世紀の百済・武寧王陵に納められた五銖銭が、陵墓の土地を買うための交換手段として用いられている。時代が下って、高麗時代の買地券(墓を買うために神と契約するための文書)にも、神との間で土地を契約する際に銅銭が登場する。こうして朝鮮半島では、中国から影響を受けた銅銭は呪術的な用途で用いられる場合が多く、実際には、現物貨幣が広く流通していたと考えられる。7世紀前半に百済の都が置かれていた扶余の双北里遺跡から、「鉄代綿十両」と記された木簡が出土したが、これは鉄の代わりに綿を納めたことを示す内容の記述と思われる。古代の百済においては、鉄と綿の交換が比較的容易の行われていた事実のみならず、綿が貨幣の役割を果たしていたことが、この木簡から明らかになったのである。これは、日本の古代社会において、綿が現物貨幣の一つであったことと対応しており、東アジア世界における貨幣流通の特質と位置づけることができる。
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Research Products
(1 results)