2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520799
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
永田 英明 東北大学, 学術資源研究公開センター, 准教授 (20292188)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 地域間交通 / 駅伝馬制 / 河川交通 / 道制 |
Research Abstract |
初年度である平成23年度には、主として陸奥・出羽南部地域に関する基礎的な資料やデータの収集・整理に力点を置きつつ研究を進めた。作業としては、(1)各県の『歴史の道調査報告書』をはじめとする、前近代における交通路復原にかかる研究成果の収集と精査をおこなうとともに、(2)旧版地形図や小字名等の収集調査など前近代の交通路復原に関する基礎データの収集整理を進め、従来から進めてきた(3)刊本史料や写真版等による古代文献史料や出土文字史料の分析とあわせて研究を進めた。具体的な分析・研究成果としては、以下の二つの課題について知見を得た。第一には、陸奥国における「山道」「海道」に関する分析である。陸奥国府以北に存在した「山道」「海道」については従来、『延喜式』民部省式の郡名配列を根拠にそのルートが復原されてきた。しかし民部省式の郡名配列は陸奥国府以北の諸郡を時計回りに一括して網羅する論理を基本としており山道・海道ルートおよびその地域区分はこれとは別に考える必要がある。この問題は陸奥国北部の地域編成や蝦夷支配方式の理解にもかかわる課題であり、この点でも新しい知見を提示できる。第二に、出羽国南部の最上川流域の交通体系についての分析である。この地域では、船を併置した駅がいわゆる「水駅」として従来から注目されているが、各駅における船には「駅馬」として配置されているものと「伝馬」としてのそれがあり、両者には配置の論理に明確な相違がある。この点に注目しつつ、個別の駅の立地状況や環境、さらには近世以前における舟運・陸運の関係などを検討することによって、古代における日常的な最上川舟運利用の実態に迫ることができると考える。以上のうち後者についてはその一部を、駒籠楯跡発掘調査報告会(平成24年3月18日)の講演において報告した。両者とも、今後関連する知見を加え、論文等として報告する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)古代東北における地域間交通路の調査復原に関しては、文献史料の収集・精査について言えば、おおむね順調に進展している状況である。また古代の文献のみでは十分に明らかにすることが出来ない多様な交通路復原の素材として中世・近世交通路に関する情報収集等も比較的順調におこなうことができている。(2)古代東北における交通制度・施設の実態に関する調査研究に関しては、最上川流域における水駅制度について検討を進めることが出来あるなど順調に進展している。(3)城柵官衙遺跡と地域間交通の関係の分析については、報告書の精査など基礎的な情報の収集はおこなっているものの、現時点ではまだ十分に着手することができていない部分も多く、今後の課題となっている。(4)古代東北における地域間交通と地域社会編成に関する分析については、特に東北南部地域における交通路と地域編成に関しては、陸奥側・出羽側ともに一定程度の見通しを得つつあるが、考古学的調査成果の精査などをもふまえながら更に見通しを深めていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降は、23年度の成果をふまえつつ補足的な資料調査・分析を進め東北南部における地域間交通と政治社会の関係について総括的な見通しを得ると共に、東北北部の状況についても資料収集・検討に着手していく予定である。交通路復原に関する資料収集と具体的分析としては、前年度から継続して宮城県域・山形県域を中心とした資料収集・分析を進めると共に、秋田県域に関する調査にも順次着手する。文献史料のデータ整理・写本等の調査に関しても、23年度の成果をふまえつつ調査を進める。23年度においては関連情報の収集に時間を費やしたため資料保存機関での写本等の調査を十分に実施することができなかったが、24年度においてその分を含めた調査を実施する。関連遺跡や出土資料等の調査については、23年度においては東日本大震災の影響等により実地調査を進めることができなかったが、24年度以降においては、実地調査可能な地域をあらためて検討しつつ調査を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の使用額の一部は、当初予定していた実地調査・現地調査等が、東日本大震災の影響等により実施できず、その実施を24年度に延期することによって生じたものであり、延期した実地調査等に必要な経費として平成24年度請求額と合わせて使用する予定である。
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